039 新しい装備
いつの間にか新人ナンバー1の戦闘力を手に入れていた私は涙目。同じ境遇の人とお喋りができたらいいぐらいの気持ちで始めた人が、脳筋組に入れられてたんだもん!
「いや、スキルを取って、スキル枠を増やしたら倍の強さになるんにゃ。目立ちたくないにゃら、スキルを取らなきゃいいんにゃ。だからスキルを取らせなかったんにゃよ?」
私がプンプンしていたら、猫さんの説明。それならそうと、先に言え。
「でも、お兄ちゃんには余裕で勝てるにゃ。たぶんお兄ちゃん、スキルレベルは平均すると15ぐらいだしにゃ」
「私は~……30!?」
「まぁ落ち着けにゃ」
第4フィールドで戦っていたのだから、当然の結果。そもそも私をこれほど鍛えていたのは、理由があるらしい。
「さっきも言ったにゃろ? パーティメンバーを探すための可能性を広げるためにゃ。女の子の場合は、変なヤツに絡まれたりもするからにゃ~。そういうヤツをコロ…逃げ切れるためににゃ」
いまこの猫、殺すって言いかけた!?
「親心みたいな?」
「うんにゃ~。悪い奴は返り討ちにしてやれにゃ~」
「もうそれでいいです……」
「お心遣い、感謝しますにゃ~」
「はぁ~~~」
最後の発言が余計。猫さんのせいで新人トップになってしまった私は、ため息しか出ないのであったとさ。
この日は猫さんも私に気を遣ってか、美味しい料理をたくさん作ってくれて、たくさん手伝わされたので、料理スキルのレベルが一気に上がった……
完全にハメられたと気付いたのは、寝る間際。一食目のハンバーグが美味しすぎて、自然とやる気が出てしまったの。ママは気付いてたらしいです。
翌日は猫さんに苦情を言ってやろうと思っていたら、木を斧で切りながら気持ち良さそうに歌っていたから、毒気が抜けた。
やればできるじゃん。コサク、完全マスターだね!
昨日まで一小節しか歌えなかったんだもん。私がスタンディングオベーションしたら、猫さんも照れ笑いだ。相変わらず、歌詞の意味は不明だけどね。
「今日も料理ですか?」
「いや、昨日できなかった服を作ってやろうと思ってるんにゃけど」
「服!? 完全に忘れてました~」
「知ってるにゃ。素材とデザイン持ってこいと言ったのに持ってこにゃいし、昨日は調子に乗って料理に夢中ににゃるし」
「うっ……猫さんの訓練で忙しくて……」
どうやら猫さんは私が思い出すのを待っていたみたい。そういえば昨日、エプロンを何個か見せられていたのは、思い出せってことだったのか……
「このフィールドで手に入る物で作るほうが目立たないと思うけど、どうするにゃ?」
「何をどうしていいかわかりません……」
「買うか狩るかだにゃ。面倒にゃら、ミイラとゾンビの素材でみすぼらしく作ってやるにゃ~」
「包帯とボロ布で!?」
それ以上どうやったらみすぼらしくなるの? 私はボロボロのゾウキンを着たくなくて、町に買い出しに出るのであったとさ。
「猫さ~ん。言われた物、買ってきました~」
バグエリアに戻ると、猫さんは足踏みミシンで布を縫っていた。コサクは合わない。いや、奧さんの気持ちで歌ってるのか?
「デザインはどんにゃの考えてるにゃ?」
「いちおう、こんな感じで……」
「下手だにゃ~……ちゃんと考えて描いたにゃ?」
猫さんから貰ったノートには、私の描いた下手な服の絵。正直、サラサラッと適当に描いて、それ以降開いてなかったので、中途半端どころではない作品です。
「こんにゃ感じに直してみたけど、これで合ってるにゃ?」
「は、はい。ありがとうございます……ちなみに猫さんって、リアルでも絵が上手いんですか?」
「いんにゃ。描いたこともなかったにゃ。芸術系のスキルで補正されてるから、下手でも上手く描けるんにゃ~。たぶんAIが描いてるんだろうにゃ」
よかった。本当によかった……猫さんに美的センスでも負けたかと思った。貧乏浪人服をカッコイイとか言ってた猫に!!
「んじゃ、妹ちゃんはレベリングでも料理でも好きにしてろにゃ~」
猫さんが製作活動に没頭するなか、私も料理に没頭するけど、猫さんの歌が移ったことに気付いて集中が続かないのであったとさ。
「ほい。できたにゃよ?」
「早い!? 嬉しい!!」
「よくわからない反応だにゃ~」
時刻はおやつの時間。小一時間でフル装備が作られたんだから、喜びよりも早さに驚いちゃった。
なんとなく猫さんには後ろを向いてもらったら、装備の変更。着替えをジーッと見られるの恥ずかしいもん。猫でも!
「どうどう? どうですか??」
「うんにゃ。似合ってるにゃ~」
私がくるっと回って見せると、猫さんは拍手。もっと褒めてほしいけど、猫さん1人しかいないのではこんなもんか。
ちなみに私が描いて猫さんが手直ししまくって私のデザインが見る影もなくなった装備は、動きやすさを重視したと思われる男装。申し訳なさそうにスカートっぽい物が付いていてかわいい。
革製だと見てわかるのは、ハーフブーツのみ。猫さん曰く、ベストが皮の胸当てらしいけど、布にしか見えないのはなんでだろ? あ、裏地に皮か。
「あんなに安い素材しか使ってないのに、防御力は高いのですね~」
NPCからしか買っていないのに、できあがった物は私が見た中で一番防御力が高い装備よりちょっと上。猫さんに借りたマントより遥かに下って……
「あれ? 神技裁縫師ネコってなってませんよ?」
「スキルを調整して手抜きで作っておいたんにゃ。本気で作ったら騒ぎににゃるもん」
「えぇ~。防御力、もっとほしかったです~」
「そう言われてもにゃ~。これから耐久値が下がったら、プレイヤーのお店に持ち込むんにゃよ? 絶対にあれこれ聞かれるにゃ~」
それはしんどいかも? 猫さんのことは秘密にしなくてはいけない契約になってるんだから、説明できない。
「あの~? もしかして、私、近々猫さんを卒業なんでしょうか……」
一番しんどいのは猫の卒業。言ってて意味不明だけど、寂しいモノは寂しい。
「うんにゃ。明日にゃ」
「明日!?」
いくらなんでも突然すぎるよ!!
「ま、しばらくはここを拠点にしてるから、遊びにきたらいいにゃ~」
「あ、そっか。いなくなるワケではないんですね。猫って、死ぬとき飼い主から姿を隠すとか聞いたことがあるから……」
「吾輩は猫にゃけど、妹ちゃんに一度も飼われたことはないにゃ。エサも貰ったことがないんだからにゃ……」
「あう……逆でした~~~」
私、混乱して変なことを口走って猫さんを怒らせる。主従関係は猫さんのほうが遙か高みにあると思い出して、誠心誠意謝罪する私であったとさ。
見た目が悪いのよ……




