027 ムチとアメ
猫さんの授業を受け始めて1週間。猫さんのお話が面白すぎて、我が田村家では猫さんの話題が出ない日がない。
……じゃなかった。私は病気のことは忘れて元気にゲームをやってます。と言いたいところだけど、効率優先の基礎訓練ばかりだから飽きてきた。
「そろそろ魔法剣士らしい戦い方を教えてやるにゃ~」
「……」
「にゃ? 吾輩、にゃんか悪いこと言ったかにゃ??」
なんで私の気持ちがわかるの! この猫、PHOにいすぎて心の声が聞こえるようになったんじゃないの?
「いや、顔に書いてるにゃよ?」
「絶対、心の声聞こえてますって! どうやってるんですか!?」
「顔に書いてるからにゃ~~~」
私がどんなに聞いても猫さんは顔に書いてるとしか言わない。ひょっとしたら本当に書いてるのかもしれないから、私は顔を両手で隠すしかなかった。
「そんにゃことしてたら剣も持てないにゃ~。ひとまずスキル構成を言うからセットしろにゃ~」
遊んでる場合じゃなかった。いや、猫さんに遊ばれているの間違い? とりあえず猫さんに言われたスキル、剣、駿足、魔法、火属性、錬金の5個セットしたけど、何故?
「錬金じゃなくて、知力かMPを入れたほうがいいんじゃないですか?」
「いま一番スキルレベルが高いの錬金にゃろ? ステータス補正を優先させた結果にゃ~」
「なるほど~」
と納得したけど、私、魔法剣士目指してるのに、剣と魔法より錬金が一番レベルが上がってるのは納得できませんでした。
そんなこと考えているとまた猫さんに心を読まれそうなので、顔を隠して移動する。
「あの木を練習台に使うからにゃ」
猫さんが指差したのは、人間と同じくらいの太さで、私の背丈より少し高い位置で切断された木。どうやって切ったんだろうね? あ、普通に剣で丸太を切ってたな。斧使えよ。
「まずは1対1を想定した戦い方にゃ。普通の剣士と魔法剣士の違いはわかるかにゃ?」
「魔法が使える……??」
「うんにゃ。じゃあ、魔法使いとの違いはにゃに?」
「えっと……接近戦が強いとかですか?」
「間違いではにゃいけど、正解は大きな魔法が使えないってことにゃ。発動に時間がかかったり、MPの消費が激しいからにゃ」
「ああ~」
私、納得。本当はあまりピンときてません。
「ここから導き出される答えはにゃに?」
「わかりません!」
「だろうにゃ。顔隠したら、余計わかっちゃうにゃよ?」
「どうしたらいいのですか~~~」
顔を隠さないと心を読まれるんだよ?
「魔法を小出しにして剣を当てやすくするか、剣で追い込み大きな魔法を当てるかにゃ」
「は、はあ……なんだか普通のことですね」
「その普通を相手に合わせてやらなくちゃいけないんにゃ。つまり駆け引きってヤツだにゃ」
「ああ~……なんとなく理解しました」
剣士なら剣だけで戦えばよくて、魔法使いなら魔法だけで戦えばいいって話だね。そして魔法剣士は考えることが増えるってこと……私、ゲーム初心者なのに、そんなに難しいことしようとしてたの!?
「まぁ心配するにゃ。わしがちゃんと教えてやるにゃ~」
「だから心を読まないでくださいよ~~~」
このままでは猫さんに丸裸にされてしまいそうと感じた私は、早く強くなろうと心に決めて、木剣を強く握るのであった。
「じゃ、まずはファイアーボールを連続で3発撃ってくれにゃ。その時の注意点は、次の発射までの硬直時間を感じ取るんにゃよ~?」
「はい……」
魔法剣士の訓練なのに、魔法からとはこれ如何に? たぶん顔に出てるだろうから、さっさとファイアーボールを目標の木にぶつける。
「どんにゃ感じだったにゃ?」
「1秒ぐらいですかね? 動けないのは」
「いんにゃ。0,3秒にゃ。次はファイアーボールを撃ったあとに0,3秒数えてから、あの木に剣を打ち込むんにゃ~」
「む、無理……」
「無理でもやるにゃ~。はいっ!」
「ファ、ファイアーボール!」
コンマの時間なんて計ったことないよ! 私はヤケクソで猫さんに言われた通りやって、木を斬り付けた。
「ダメダメだにゃ。今のだと0,9秒にゃ。それに剣の型も崩れてたにゃ~」
「厳しすぎますぅぅ」
「陸上の先生にも基本が大事だと言われたにゃろ? おやつに美味しいの出してやるから頑張ろうにゃ。にゃ?」
「うぅ……チョコ食べたい……」
「デパートとかで売ってるガディバ風を食べさせてやるにゃ~」
「やった! ファイアーボール!!」
猫さんの口パクを横目に見つつ、私は基礎訓練に力を入れるのであった……
「チョロイ子だにゃ……大丈夫かにゃ?」
何を言ってるか聞こえなくてよかった~。
基礎訓練はMPが切れたら休憩……
「MP回復するまで吾輩に打ち込むにゃ~」
「えぇ~~~」
はナシ。SPとスタミナゲージがなくなるまでダメ出しくらいました。
「ちなみにお兄ちゃん、猫さんに弟子入りするって言っていたのですが、どんな訓練するんですか?」
「そんにゃ約束したっけにゃ?」
「へ? お兄ちゃん、スキルを10個セットできるようになったら弟子入りするって、楽しみにしてましたよ?」
「あぁ~……その頃にはゲームが楽しくなって、忘れてると思ってにゃ。現に、同じこと言った人は八割ぐらい忘れてるにゃ」
「酷い!?」
言う人も酷いなら、忘れる人も忘れる人か。お兄ちゃんなら忘れてそうだから、妹としては頭が痛いよ。
「ほれ? MP回復したにゃろ~?」
「お兄ちゃん! 猫さんの訓練やめたほうがいいよ~~~!!」
「おっ! 今のはよかったにゃ~」
猫さんのスパルタ指導はログアウトするまで続くのであったとさ。
ちなみにガディバ風のチョコは死ぬほど美味しいから私が悶えていたら、猫さんは箱に詰めてくれました。明日からも頑張れそうです。




