022 勘違い
猫さんの作ったヒノキノツルギのおかげで、戦闘は楽勝。一振りで全てダウンだ。
でも、猫さんは褒めてくれずに型が乱れていたとかネチネチうるさい。これはお兄ちゃん、弟子入りしたらヤバイぞ~?
「もうMP満タンにゃろ? 吾輩が見てるから、錬金スキルに変えて回復薬作っとけにゃ」
「はい……でも、こんなに回復薬って必要なんですか??」
「一から装備を整えるとお金がかかるからにゃ。節約しておいたほうがいいにゃろ」
「あぁ~……防具は新しいの欲しかったんです」
「にゃろ? そこまで吾輩は面倒見る気はないからにゃ~」
うん。私もそこまでしてもらうのは気が引ける。この剣だけで充分だ。でも、猫さん、その辺に生えてる木で作ったんだよね? ポロ儲けじゃない!?
「ちにゃみにNPCの防具は安いけどやめておけにゃ」
「やっぱり弱いんですか?」
「それもあるけど、見た目がにゃ~。プレイヤーメイドは似合うの作ってくれるんにゃ」
「それってお高いんですよね~?」
「うんにゃ。ここでは体の一部分、十万から百万ってところだにゃ」
「たっか……ヒノキノツルギ売っても揃えられない……」
「売るにゃよ?」
猫さんが十本作ってくれたら売るよ。一本だけでは、これが生命線なんだもの。プレイヤーメイドが買えるまでお預けか~。
ちょっとテンション下げてレベリングしていたら、生産者ギルドや露店を回れば掘り出し物があると教えてくれたので、頑張ってモンスターを倒す私であった……私って、やっぱりチョロイな。
モンスターを倒しながらレベリングしていたら、疲れてきたのではないかと猫さんに当てられたので、ちょっと休憩。町で買ってきたお菓子を摘まんでいると、猫さんが美味しそうなチュロスを食べてる……
「……食べるにゃ?」
「はいっ!!」
今日一番のいい返事。私の物欲しそうな目に負けた猫さんが分けてくれたので、チュロスにかぶりつく。
「美味しいです~。これって猫さんが作ってるのですか?」
「うんにゃ。暇潰しににゃ~」
「作るには、料理スキルが必要なんですか?」
「作れなくはないけど、あったほうが何かと便利だにゃ。あと、キッチン用品は必須にゃ」
「あぁ~……スキルポイントとお金が必要なんですか……」
「う~ん……キッチン用品は貸してもいいけど、料理スキルはにゃ~……」
珍しく猫さんが悩んでる。私の育成プランが狂うのかな?
「料理スキルを取るのはマズイですか?」
「別に構わないにゃよ。遅れるのは妹ちゃんの都合にゃし。ただ、駿足スキルは先に取ったほうが効率的にゃ~」
「じゃあ、駿足取ってからにします」
「じゃあ、もう取れるから取っちゃいにゃ」
「……ん??」
悩んでたのは、今すぐのことか~い。
相変わらず私より私のスキルレベルやスキルポイントに詳しい猫さんであったとさ。
駿足のスキルをセットすることで、私の歩く速度は1,2倍にアップ。ウロウロするのにめっちゃ役立つし、スキルレベルが上がるとスピードも速くなる。
そのおかげで、今日中に料理スキルも取れました……どんだけ猫さんは先を見越しているの? ここまで私より私に詳しいとちょっと怖いよ。出会って4日だよ??
とりあえず明日は食材を持って行けば料理を教えてくれると言われて別れたけど、女子が料理を教わっていいのかとモヤモヤしながらログアウトした私であった。
「ママ~。初めて作る料理って、何を作ったらいいの~?」
「へ? ついにカノちゃんにも、作る相手ができたんだ。おめでと~う!!」
「違う違う! ゲームの話!!」
ママは何を勘違いしてるんだか。私、夏休みになってから一歩も出てないよ? 私……夏休みになってから家から一歩も出てなかったよ!? 驚きすぎて大事なことでもないのに同じこと2回言っちゃった。
「ゲーム? あ、PHOで料理スキル取ったんだ」
「うん。猫さんが食材持ち込みなら教えてくれるって言うから」
「猫さん料理までするの!? 猫なのに!?」
そこ食い付くんだ。そういえば猫が料理する絵はシュールだ。私も猫さんの行動に慣れてきたんだな。
「なに作ったらいいと思う?」
「そうね~……簡単なお菓子がいいんじゃない? いや……猫にあげるのよね? 魚を焼いたほうが……」
「猫さん、本当の猫じゃないから。ケーキも豚骨ラーメンも作って食べてるよ」
「難易度高い物ばかり……カノちゃん、見栄張るのはよそう」
「猫からも彼氏からも離れて~~~」
猫さんに見栄張るつもりはさらさらないのにママは何を言ってるんだか……今日、さらにだらしない顔を見られたから今更だ。いま考えたら、恥ずかしい!
この日の夕食は、遅れて帰ってきたパパにスパルタスのこと聞き忘れたと言ったら項垂れ、猫さんと料理を作ると言ったら「パパも食べたい」と泣き出す始末であった……
翌日、私は朝食を終えたらそのままダイニングに残っていた。
「あ、カノ。もう食べたのか」
「うん。おはよう。お兄ちゃん、朝は暇な時間ある?」
「朝か~……今日は昼から友達と狩りに行くから、できるだけレベリングしたいんだよな~」
私は勉強とかしろとか思ったけど、頼み事があるから我慢だ。
「ちょっと散歩しようと思ってるんだけど、ついてきてほしいんだけど……」
「散歩? あっ!! 先生にもできる範囲でいいから体を動かすように言われてたな!?」
そう。私は筋肉が萎縮する病気を抱えているから、進行を遅らせるために運動はしたほうがいいのだ。
「しまったな~。すっかり忘れてた」
「私も。ゴメンね。付き合わせて」
「謝るのはナシって家族で決めただろ。すぐ食べる! てか、俺も夏休みになってから一歩も出てなかった!?」
「お兄ちゃんもか~~~い」
健康なお兄ちゃんも引きこもっていたのだから、ついついツッコンでしまう私であったとさ。




