018 次の授業
猫さんは早口言葉の一言目で「にゃ」が付くから、セーフかアウトか悩んでらっしゃる。悩んだ結果、セーフにしたらしい。「ナ」が上手く言えないんだってさ。
猫さんは歌詞をひとつだけ抜き出して練習するとか言うので後ろからステータス画面を見ていたら、現実世界の検索エンジンが出てきた。
どうやら現実世界のPCかスマホをリンクしておけばゲームの中でも使えるみたいだ。いいこと聞いたな~。
この日は2人でブツブツと早口言葉を言い続けるのであっ……
「ゲームしにきたんだった!?」
「にゃっ!?」
そんな無駄な時間で一日を終えられるか。猫さんも気付いてくれてよかったよ。
私はすでにMPを消費していたから初級ポーションでも作ろうとしたら、猫さんに止められた。
「ステータス画面を開いて、剣のスキルを取るといいにゃ」
「まだスキルポイントが……あれ? ちょうどある……どうしてわかったのですか??」
「猫の勘にゃ~」
絶対にウソだ。昨日も錬金スキルがすぐに取れるとわかってたもん。経験? 猫さん、ソロとか言ってたけど、人を教えたこともあるのかも??
「まずは剣スキルだけセットして素振りにゃ~」
「あの……剣もなければ剣を使ったこともないのですけど」
「剣は作っておいたにゃ~」
「あ、昨日の……」
猫さんが削っていた木はこれだったのね。お楽しみが木剣って……まぁちょっとは楽しみかな?
「サイズとかは大丈夫かにゃ?」
「はい。持ちやすいです。これ、名前あるんですね。伝説のヒノキノツルギ?」
「ただの戯れにゃ~」
冗談にしては仰々しいな。しかも説明文「神技木工師ネコが一削り一削り心を込めて丹精に削りあげた一品」とかなってるけど、噓つけ~。コサク探しながら適当に削ってただろ!
てか、神技木工師ネコってどういうこと!? 猫さんスパルタスでしょ!? 生産職でもトップなの!?
「あの~……神技木工師ってなんですか?」
「木工系のスキルを全て99にしたら、にゃんか書かれるようになったんにゃ。そんにゃことより、剣の振り方、教えてあげるにゃ~」
「は、はあ……」
神技がそんなこと? 私は激しくツッコミたかったが、猫さんが握り方から教えてくれるので、肉球の感触に集中してしまうのであった。
「手はリアルではそれほど不自由はないのかにゃ?」
「いえ……お箸とか難しくなってます……」
「にゃるほど。剣には支障はないにゃ。てか、忘れてた感じもするにゃ……」
私の素振りを見ていた猫さんは体の心配をしてくれるけど、最後は余計な一言かも? 確かに忘れてましたよ……
「そろそろスタミナも切れるにゃ~。MPは回復してるから、錬金で消費してから休憩にしようにゃ~」
「あ、昨日教えてくれたのですね」
猫さん、ホント効率的。実は名トレーナーなのでは? スパルタスで生産職で名トレーナーって、どれだけ盛ってるんだ。猫も盛られてるし……
私が適当に初級ポーションを作り終えると、猫さんはラーメンを目の前に置いた。
「わ~。いい匂い~。豚骨ラーメンだ~」
「女子には不人気かと思ったけど、大丈夫みたいだにゃ」
「はい。大好物です。でも、最近はお店に行けてないんですよね~。それにしても3時のおやつにラーメンって、悪いことしてる気がします」
「にゃはは。ここでは太らないから大丈夫にゃ~」
「本当だ! それなら何杯でも食べられますね」
高カロリー料理を食べても太らないなんて、夢の世界だ。
「そうにゃけど、空腹ゲージを極端に超えて食べると、スリップダメージが入るにゃよ?」
「……へ?」
「お腹痛いってのを表現してるんにゃ」
「いらない仕様!?」
猫さんはどうしても食べたいなら飢餓状態が続く薬をくれると言ってくれたけど、食べなければ10秒後に死ぬなんて聞かされたら飲めません。お腹痛いほうがマシだ。
もしかしたら薬も精通してるのかと考えたが、考えると疲れるから今はラーメンだ。いただきますと言って食べ始める。
「んん! 濃厚こってり~。近所のラーメン屋より断然美味しいです~」
「にゃはは。お粗末様にゃ~……ところでにゃんだけど、空腹度とかって意識してやってるにゃ?」
「いえ。チュートリアルで見ましたけど、特に気にしてないです」
「やっぱりにゃ~。第1フィールドは空腹ゲージの減りが他の10分の1にゃから、初心者はすぐ忘れるんだよにゃ~」
空腹ゲージが減りすぎると動けなくなり、それでも何も食べないと死に戻りするらしい。
「あ、だから猫さん、いつもおやつ食べさせてくれてたんですか」
「うんにゃ。自分で気付くように少なくあげてたんにゃけど、たぶんさっきまで残り3割ぐらいしかなかったにゃよ?」
「ああ~。それはすみません。町で何か買っておきます」
だから今日はこってりラーメンだったのね。全部食べたら空腹ゲージはピッタリ満タンだ。だからどうしてわかるんだろうね~?
「ちにゃみにお兄ちゃんは食べてるのかにゃ?」
「さあ? 私よりPHO詳しいから食べてると思うけど……」
「フレンド登録してるにゃら連絡してあげたほうがいいにゃ。そろそろ死ぬ頃だからにゃ~」
「もっと焦りながら言ってください!!」
私がお兄ちゃんに連絡すると、ちょうど空腹で動けなくなってた。食べ物も持ってないとか言うので、猫さんのアドバイス通り薬草を生のまま食べて、命辛々町に帰ったそうだ。
「フレンド登録というと、私も猫さんとしたいんですが……」
「まぁ……そうだにゃ……不便もあるもんにゃ……」
すっごく嫌そうだけど、猫さんの連絡先ゲットだぜ!
「ス、スクショもいいですか?」
「絶対にダメにゃ」
やっぱりね。流れで聞いてみたら、強く拒否られた私であった。
「え? 猫さんの顔、映ってない……」
「隠密アイテム使ってるからハッキリとは映らないにゃよ?」
「きゃっ!?」
私がやりそうなことはバレてたみたい。スクショを確認してたら後ろから声をかけられてビックリしました。それにしても、いつ撮ったかも、どうしてわかるのよ~~~!




