107 謎の視線
マユの戦闘訓練が終わった翌日、ついに我がパーティは始動する。といっても、今日は始まりの町でやることあるから、オープンカフェでお喋りからだ。
「マユの元パーティのお金とかって、どうしよっか?」
「「あっ!?」」
みんな忘れてたっぽい。私だけじゃなくてホッとしました。
「私は助けてもらった立場だから……」
「ダメ。マユこそ慰謝料貰わないといけないんだからね」
「私はいいわ。ほとんどカノの力で勝ったし」
「それもダメ。ヒーラー倒してくれなかったら、勝てなかったんだから。アイはリハビリギルドの制服脱ぎたいって言ってたでしょ? ちなみに私はいらないよ」
「「それが一番ダメでしょ!!」」
どうやら私が一番活躍したから、一番多く貰う権利があるらしい。そりゃそうか。小金持ちじゃなかったら、絶対にゴネていた自信ある。
「じゃあどうしたらいいの~? 猫さ~ん」
「猫さんなんていないよ?」
「カノは猫さん頼りすぎじゃない?」
「い、今のナシで。ここ最近、ずっと一緒にいたから……恥ずかしい!」
ついついお母さん感覚で呼んじゃった私、マジ恥ずい。
「じゃあ、お金とかどうしたらいいと思う?」
「う~ん……パーティ資金とかは? 必要な人に装備品の補助とかに使うとか??」
「さずがアイ、リハビリギルドで経理やってただけある~」
「やってないわよ? 適当に言わないで」
とりあえずお金は決着。装備品や道具なんかは、欲しい人にいま取り分けてしまう。
「アイとマユは防具とか必要なんじゃない?」
「う~ん……防御力はあるけど、見た目がね~。男物はいらないや」
「全部プレイヤーメイドだからね。装飾品はいけるんじゃない?」
「男が付けていた、指輪を??」
「「確かにイヤだ……」」
ゲームの中だから汚くはないのだけれども、マユをいいように使っていた男の装備は全員ノーサンキュー。消耗品のアイテム以外、全部売り払うことになってしまった。
「売るのは決定だけど、プレイヤーメイドの物って売っていいのかしら?」
「本当だね。どこで買い取ってもらえるんだろう? プレイヤーがやってる露店に持ち込んでみる??」
アイとマユは販売先に悩んでいたから、ここは先輩の私の出番だ。
「一番足が付かないのは町中のNPC。お勧めは、生産者ギルドのNPCね。生産者ギルドのNPCは詮索もされないし適正価格で買い取ってくれるよ」
「足が付かないって……」
「カノ、盗品捌いたことあるの??」
「な……ないこともない……」
これは先輩じゃなくて泥棒の売り方だな。2人の目が「泥棒の仲間になったつもりはない」と言っているようで痛いです。
「いや、第4フィールドの素材を、ね? 猫さんがそんなところでレベリングするから、怪しまれないところで売りたかったの~」
「ああ~……」
「私達が行っちゃダメな場所だったね……」
「まぁ、結局怪しまれて、プレイヤーに取り調べされたんだけど……」
「「ダメじゃん」」
その時は怪しまれたが、二度目のことも考えて初心者っぽさを消せるように生産者ギルドはほとんど見たのだ。今なら大丈夫なはず。
と伝えたら、「下見するなんて、本当に犯罪者みたい」と言われてしまいました。私も途中から同じこと思ってましたよ……
それからも大量に捌くと足が付く可能性の話もしていたから、2人をその道に引き摺り込んだみたいに感じる私。
全てを猫さんのせいにしようと熱弁していると、マユがお茶を飲んだ後に辺りを見回して声を潜めた。
「ねえ? なんだか私達、見られてない??」
私もアイも見回してみると、事実。プレイヤー達は私達を見ながらヒソヒソ喋っているし、なんだかさっきよりお店の前に人が増えている。
「なんか気持ち悪いね」
「誰かなんかやらかした?」
「ここ2日は、みんな猫さんのところにいたからやらかすこともできないでしょ」
「だよね……」
喋っていても答えは出ない。それに多くの人に見られているのは気持ちが悪いので、私達はカフェを後にするしかなかった。
「まだついてきてるよ」
私達が移動すると、あの場にいたプレイヤーの2割ほどが跡をつけてきていたので、アイが報告してくれた。
「どうする? 猫さんのところに逃げ込む?」
マユの案は賛成したいところだが、こういう時の対処法は私は猫さんから聞いている。
「最古の薬屋の場所って、2人とも知ってる?」
「「うん」」
「じゃあ、一旦ログアウトしてから別々に向かおう。1人だったら目立たないかもしれないし」
「「オッケー」」
まずは尾行の排除。ログアウトしてすぐに戻るのは、私のアドリブです。ふふん。
でも、ログインしたらみんな揃ったので、気まずい雰囲気に。全員、散り散りに走って薬屋を目指す。
私は目立ちたくないから行列を避けた道を選ぶと、農道に入ったところで再び全員集結。考えることは一緒だ。もう、一緒に歩きました。
遠回りしまくったおかげで誰ともスレ違わず、行列も回避して、やってきました薬屋の裏口。
「裏口? 表に行かないの??」
「確かこうやってノックしたら……ほら? 開いた」
「カノがなんか怪しいことばかりする……」
「カノ、そんな子じゃなかったよね? 猫さんと付き合い出してから変わったんじゃない??」
「ちょっ……怪しい店じゃないって~」
と言って入ってみても……
「怪しさしかないんだけど~?」
「あそこで寝てる人、PVPの時に闇取引してた人じゃない? 私、あの時、ヤバイ組織に見られてるんじゃないかと心配だったの」
「だよね~? てか、あの人が最古の薬屋のロッコさん。初めて会った時にナイフで指詰められそうになったけど、いい人だよ?」
「どこが!?」
「完全にギャングじゃない!!」
そりゃそうだ。いい人が指を切り落とそうとするワケがない。私の言い方が悪かったせいでロッコさんは、マユとアイにギャング認定されてしまうのであったとさ。




