108 DJK
謎の視線を避けるために私達が逃げ込んだ場所は、最古の薬屋の裏店。
「チッ……うっせぇな。ここはガキ共のくるところじゃねぇ。けぇれけぇれ」
マユが大声出すモノだから、ロッコさんに怒られちゃった。
「カノ……ここって、ギャングのアジトとかじゃないよね?」
「あはは。怪しいもんね~。ここは最古の薬屋で間違いないよ。ロールプレイしてるだけ。本当は優しいお爺ちゃんなの」
「おい、嬢ちゃんよ~。若い女連れてくるなら、先にロールプレイの話を通しておけっつっただろ」
「あっ! すいません。すっかり忘れてました。てか、猫さん限定かと思ってました。たはは」
ロッコさんは不機嫌そうにソファーから体を起こすと、私達に対面に座るように促した。私以外はビクビク着席だ。
「今日は新顔もいるな~。この俺は、ハイになれるクスリ、人殺しの道具に毒薬、世間に出せない危ない情報、額によっては人間の胎児、全ての物を取り扱う道具屋……ロッコ様とはこの俺様のことだ」
「カノ、これ、本当にロールプレイ?」
「クスリとか胎児とか言ってるよ? 絶対ギャングだよ~」
「そうやって怖がらせるのが趣味みたい。安心して。私も前に聞いたから」
「チッ。だから若い女は苦手なんだよ」
私がロールプレイに乗ってこないから、ロッコさんはさらに不機嫌に。アイとマユの反応が好みみたいだね。
「んで、なんか用か? ヤクでも切れたか?」
「ヤク? ヤク……あ、チョコ? また入荷してるんですか??」
「残念ながら欲しがるジャンキーが多いから品切れだ。運び屋も命懸けだから、次はいつ入荷するかはわからねぇな」
「「本当にチョコの話?」」
「私も合わせるの大変だから、口挟まないでいてくれる?」
アイとマユが話に入ると、ロッコさんの世界観に合わせられないから仕方がない。
「今日はチョコじゃなくて情報を買いたいんです」
「ほう……PVPを経て、一端のプレイヤーになれたか。だが、俺の扱う情報は、命に関わることもあるから高いぞ?」
「う~んと……できたら猫さんの弟子価格とかありませんかね~??」
「ヤツには借りがあるから便宜を図ってやりてぇが、情報による。ひとまずどんな情報が買いたいか言え」
このロールプレイ、ムズイッ!? だんだん面倒になってきたよ~~~!!
「どんな情報を買っていいのかわからないんですけど……相談みたいな形になってもいいですか?」
「ま、ケツの青いガキにはまだ難しいか。詳しく言ってみろ」
「ありがとうございます。今日ですね。オープンカフェで、このメンバーで喋っていたら、他のプレイヤーが私達を見てヒソヒソ言ってたんです。何か理由があるのかな~? と思って。つけられたりもしたんですよ」
「なるほどな~……」
ロッコさんは背伸びしてから、また前屈みになった。なんの時間だったんだ?
「5万……いや、こないだ稼がせてもらったから、3万でいいぞ」
値付けの時間か……たっか!?
「高すぎる気が……」
「あのな~。有意義な情報ってのは、最低万単位から始まるんだ。トッププレイヤーなんか、百万なんてザラだ。一千万を超えるネタだってあるんだからな」
ヤバイ……桁が違いすぎて安く感じる。これは本当に妥当な価格なのだろうか……
「あの、私が稼がせたってのは、こないだ私達がやったPVPで、闇ギルドのギルマスとの賭けのことですよね? いくら儲かったのですか??」
「2千万だ」
「ちょっと! それならタダでいいでしょ!? この業突く張り!!」
「わははは。それは褒め言葉だ。さあ、買うか買わないか、さっさと決めろ」
2千万だよ? たった2万しかまけてくれないんだよ? そりゃ私だってキレるよ。
ちなみに賭けのやり方は、ロッコさん達は私達が勝つことに賭けたから成立せず。だから胴元の猫さんが時間制にしたんだって。
勝負が付いた後の猫さんのセリフは「予想通りだったにゃ~」とのこと。終了時間までわかるって、神か!?
「3万ゲアです……」
「まいど」
ここには情報を買いにきたのだから、私は泣く泣く支払い。こんな時のパーティ資金だから、私の懐は痛くないけど、納得はいかないのよ~。
「お前、ネットには繫がってるか?」
「あ、はい。猫さんに教えてもらいましたから」
「じゃあ、どこでもいいから検索サイトに、PHO、今年の新人ランキングと打ち込め」
「PHO、今年の新人ランキング……にゃ~~~!!」
「にゃ~?」
「カノ、猫さんになってるよ?」
「これ見たらわかる……」
「「……にゃ~~~!!」」
新人ランキング堂々の1位は、私! 2位にアイとなっていたから、そりゃ全員猫さんになるよ!!
「わはははは。お前達が倒したヤツら、新人ランキングのトップ10に全員入っていたんだ。そりゃ2人で倒したら、繰り上がるってもんだ。皆が見ていたのは、そういうことだ。命を狙われるかもしれねぇな~……どうだ? この情報、高かったか??」
「「「安かったですにゃ~~~」」」
たぶん私達なら新人ランキングなんて一生見なかったから、対策も何もナシにPKに襲われていたはず。なんだったら「最近、なんで襲われるんだろ~?」とか、暢気なことを言っていたはずだ。
「あと、お前達、DJKとか呼ばれてるぞ?」
「「「DJK??」」」
「デビル女子高生とか、デス女子高生の略だ。まだどっちか定まってない」
「私達は」
「「「NJK(ノーマル女子高生)にゃ~~~!!」」」
一回PVPしただけで、そんな恐ろしい呼ばれ方ある?
私達は「にゃ~にゃ~」荒れに荒れるのであったとさ。




