100 大発見
新メンバーのマユの戦闘方法は、弓と補助魔法に決定。でも、私達では戦い方がこれっぽっちも浮かばないから、猫さん頼みだ!
「猫さ~ん。ちょっといいですか? ……なんか上の空??」
猫さんは小川の付近にあるテーブル席にいたけど、私の声にも気付かずにボーッとしてる。なのでもっと近付いて後ろから「ワッ!」と言ってみた。
「にゃんか用??」
「驚かない……」
「声は聞こえてたんにゃもん」
「それなら返事してくださいよ~」
「考え事してたんにゃもん」
でも、驚きもしないでテンションも低め。どうした? 病気か??
「何かあったのですか?」
「紙作りがにゃ~……原点に戻ってパピルスまで戻ってみたんにゃ」
「パピルスって……なんだっけ??」
「エジプト文明の紙よ」
私が仲間に振ると、マユが植物の茎の繊維で編んだ紙があったと教えてくれた。歴史の授業でもやってたって付け加えられて……
ここはマユ先生に猫さんとの会話を代わってもらおっと。
「それにしても、PHOではこんなこともできるんですね~。パピルス、完成したのですか?」
「したっちゃしたんだけどにゃ~……ズルしないと作れないんにゃ~」
「ズル? ですか??」
「生産系のスキルにゃ。にゃにもセットせずにやったら、チマチマチマチマ編み込むことになって、3時間かかってこんだけにゃよ? さすがに心が折れたにゃ~~~」
猫さんがポイッとした物は、薄い四角の板っぽい物の端から、何十本もの堅そうな繊維が飛び出した物。大きさは5センチ四方……よくこんなことに3時間も使ったな……
「3時間もですか……私だったらすぐ投げ出してますよ」
「吾輩だって10分で投げ出したかったにゃ。でも、こういうことをすることは、遠い昔の人達の努力や考えに思いを馳せられるんにゃ~」
「なるほど……それはとても素敵なことですね。ちょっと気持ちはわかります。それで猫さんはどう感じたんですか?」
「パピルス作ったヤツは、暇人のバカじゃにゃいの? と……にゃん十日もこんにゃつまらない作業やるにゃんて、暇人通り越してアホのすることにゃ~」
「……」
マユ、口をパクパク。私達に何か訴えてる。わかる、わかるよ? 歴史に残るような異人の集大成を、猫さんはバカにしてるもんね。でも、私も猫さん派なの。ゴメンね?
「えっと……スキルを使って作ったんですよね? さっき言ってたような……」
このままではマユが猫さんのことを嫌いになりそうなので、私のカットインだ。
「うんにゃ。作ったにゃよ? 吾輩のスキルを全て費やしてできたパピルスがこれにゃ。10分で作ってやったにゃ」
そりゃ猫さんが上の空になるワケだ。3時間かかって5センチ四方が、10分でB5のプリントサイズになってるもん。気持ち光り輝いてるし。
「完成しても、これ、紙にゃの? って感じにゃろ??」
「はい……ザル? なんだか田舎で売ってそうな装飾品みたいですね~」
パピルスを手に持った私は錬金スキルをセットして、ステータスを見てみる。
「『神技木工師ネコが心血注いで作り上げたパピルス』。10分で作ったのに……で、『文字を書き記す物。古代エジプト人もビックリ。その当時の人々に見せたら、神様みたいに崇め奉られるだろう』……って、何この説明文??」
最初の部分は猫さんが作ったらよく見る文章だから、ツッコミは少なめ。後半は意味不明。こんな文章は、今まで手に入れたアイテムには書かれていないからだ。
「にゃんかたまにくっついてるんにゃ。こにゃいだ弟子とポンタンアメを作ってる時に気付いたんにゃけど、初めて作った第一号の作品に付く説明文みたいだにゃ。こんにゃことにゃら、捨てずに取っておくかスクショに撮っておくべきだったにゃ~」
つまりPHO中にあるプレイヤーメイドの製作物のロットナンバー1には、スタッフの褒め言葉が付け加えられていたのではないかと、猫さんは弟子に言われたんだって。
「えっと~……これって大発見なのでは?」
「うんにゃ。弟子にもにゃんで黙ってたんだと怒られたんにゃ。知らない物は仕方ないよにゃ~?」
「何故、知らない……??」
「第一号にゃんて、デキが悪いじゃにゃい? すぐ改善するから、すぐ捨ててたんにゃ。だから誰にも見せる機会がなかったんにゃ~」
「歴史の冒涜!?」
この大発見が今まで誰も知らないってことは、猫さんが先に作っていたからでは? いったい何個、新発見を製造していたんだ!?
「ちなみにこのこと、発表する予定は……」
「弟子が勝手にやるんじゃにゃい? あ、証拠品のオブラートもポンタンアメも食べたんだったにゃ……にゃはは」
「ダメじゃないですか!? 吐き出して!!」
「もうとっくに0と1になって消えてるにゃ~」
「なんの話よ!?」
デジタルの話です。てか、私の吐き出しても使えない手だった。ゲームの中だもん。
私が猫さんの顔を持って喧嘩……モフモフしていたら、マユがテーブルの物を指差した。
「証拠ならパピルスがあるじゃない?」
「あっ!?」
そうだ。揺るぎない証拠がここにあったんだった~~~!!
「これはダメにゃ。外に出せないにゃ」
「なんでですか? 大発見はみんなに教えてあげないと」
「だって吾輩の名前が書かれてるんにゃも~ん。そもそもにゃんで、教えてやる必要があるんにゃ」
「そういう猫だった……」
猫さんは、徹底した秘密主義者。バグ技は運営に知られると修正されてしまうから隠しているのは私でも理解できる。
でも、これはない! こんなことばっかりしてるから、古参の中でまったくの無名なのだ!!
「発表しましょうよ~。このパピルス、貰っていいですよね~?」
「嫌にゃ。ダメにゃ。てか、にゃんか用があったんじゃにゃいの??」
「世紀の大発見より大切なことなんか……あっ! マユ!?」
「「あっ!?」」
マユの相談しようとしてたんだった!!
「猫さんが変なことばっかりするから、忘れてたじゃないですか~」
「吾輩はパピルスを作っただけにゃ~」
どちらが悪いかは……多数決で私達の勝ち!!
100話、到達で~す
いつも100の倍数ぐらいはあとがき書こうと思ってるんですけどね~
次回、200話も忘れずあとがきを書けるのかどうか、乞うご期待!笑




