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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第632話 『クイーン』討伐作戦?

 皆が食事を終え、一通り落ち着く時間帯。

 各々の建物では暖が取られ、家族や身内がその温もりに安心を感じ始めていた。


 辛いことがあっても、大切な者と過ごすその時間だけは変わることがない。

 ソレと並行して封鎖された『地下居住区』のエアクリーン作業は進められ、空調設備を調整して両方の入口からガスの放出を開始。

 明日の昼には『地下居住区』へ戻れる予定となっている。


『諸君、私は『解放軍』『技術生産部隊』隊長のスティリナだ』


 そんな中、『オベリスク』に昔から存在している古い回線からスティリナの声が漏れ出してきた。

 ソレは『解放軍』本部から首都全域に繋がる総合通信回線を使っての放送だった。


『今回の件に関して、何が起こったのか。未だに不可解な者も多いだろう。ソレに関して私から説明させて欲しい』


 家族と談話していた者達はその放送に声を止める。


『『地下居住区』に起こった事態。『飛行部隊』の不在。総司令官ガイエンの失踪。これらの三つは――『解放軍』隊長達の間だけで決めた“作戦”である』


 そのスティリナの発言にどよめきが湧いた。ソレは、放送をするスティリナの側にいる部下も驚いて顔を見合わせる程に知らされていない事だった。


「若、今の話。本当ですか?」

「…………ああ。本当だ」

「……ふーん」

「シャアッ!!」


『かつて、『クイーン』によってガディル前総司令が殺された事は『解放軍』では忘れられない悲劇だろう。故に『クイーン』はその“悲しみ”をなぞるように同じ手を使って来る事は容易に想像する事が出来た』


 警邏をしていたクロエは滑車装置の近くにある通信端末から流れてくるその放送に足を止める。


『我々はソレを逆手に取り、『クイーン』を罠に嵌める準備を進めていた。だが、この件はより慎重に取り扱わなければ、逆に『解放軍』を崩壊させる事態になり得る諸刃の剣でもあったのだ』


 『クイーン』に従わされた内通者により、あらゆる所から情報が漏れる可能性があった。故にスティリナは寸前まで情報は隊長達だけに留めたと告げた。


『『地下居住区』への攻撃。本来ならば、あのガス攻撃は地下の者達全員が全滅する程の代物だった。しかし、その手を使う敵がいる事を『クイーン』の間者として動いていた『飛行部隊』が調べ上げてくれたおかげで、空調と解法薬にて事前に備える事が出来た』


 『飛行部隊』。この場には一人として残っていない隊員達の事をスティリナは示唆する。


『勿論、この件を知っているのも『飛行部隊』の中では隊長のフリードだけだ。故に『飛行部隊』は敵に帰順した様に見せかけ、潜入任務を行っている最中である』


「だと思ったぜ!」

「敵を騙すにはまず味方からかー」

「お姉ちゃんは知ってたの?」

「…………私も知らされたのは首都に潜入してからでしたよ」


 その放送を聞いていた、ティーガ、フーリー、ウルス、カナリアはレイヴンの事を思い浮かべる。


『そして、総司令ガイエンの失踪。これは現場に居合わせた者も多かっただろう。だが、安心して欲しい。これも当然ながら作戦の一環だ。総司令は自らが捕まる事によって『クイーン』に『解放軍』はもう機能する事はないと思わせる為に捕まったのである』


 今の『解放軍』は各隊長達によって各々の役割が機能し、ガイエンが指揮する『首都防衛部隊』もサリアの『狙撃部隊』が指揮に関わっている。

 故に総司令の不在で『解放軍』が大きく崩れる事はない。


『『地下居住区』への襲撃。『飛行部隊』の裏切り。総司令ガイエンの確保。これらのダメージを受けた『解放軍』など容易く攻め滅ぼせると『クイーン』は考えるだろう。だが、そう思わせた時点で我々の勝利は揺るぎない』


 スティリナによる迷いの無い放送は『オベリスク』に漂い始めた不信感をいつの間にか取り除いていた。


『我々は幾度と“寒い夜”を大切な者達と共に越えてきた。君達のその強さを、今こそ『クイーン』に……『ゴースト』に思い知らせてやる時だ!』


 『解放軍』には『ゴースト』が家族の仇である者も少なくない。スティリナの言葉はそんな彼らの心に火をつける。


『これより『クイーン』を討伐する作戦の全容を皆に伝える! 各部隊において適した役割に配置しているが、不満がある者は遠慮なく願い出てくれ』






 クロエはその放送から離れる様に首都の警邏を再開する。


 スティリナの言葉は理にかなっている。しかし、その全てが綺麗に噛み合っているとは考えづらい。


「――さて、どこまでが本当なのかしらね」


 『クイーン』によって『解放軍』は不安に包まれただろう。しかし、スティリナは逆にソレを利用して士気を向上させた――と客観的に見れば捉える事も出来る。


“クロエ、お前は群れに準ずるよりもヒトが寄ってくるタイプだからな。サリアのトコであんまり空気を読めない事を言うなよ? オレたちが着いた時に『星の探索者』がイロモノで見られるのはゴメンだぜ”


 三手に分かれる際にローハンから釘を差すように言われた台詞を思い出して、ふふ、と笑う。


「もう手遅れね」


 イロモノはイロモノらしく、この刃を『クイーン』に届けるとしよう。

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