第630話 【魔弾】の子供たち
カナリアの処遇はスティリナの開発した『首枷君4号』(スティリナの意思で電流を流せる)を着け、拘束する形で収容する事に。その際、
「この首枷を着けたままで構いません。私も『ゴースト』との決戦に連れて行ってください。この翼では飛べませんが……“眼”にはなれるハズです」
その様に願い出たが彼女の処遇はサリアが一任を買って出た。他の面々はガスで不安になっている市民達の対応へと移る。
『首都防衛部隊』と『技術生産部隊』のフォローにより市民達は落ち着き、動ける者達による炊き出しが振る舞われていた。
日が落ち、夜の『オベリスク』はマイナスを簡単に下回る極寒となる。市民達は周囲の建物内部へ移動し、未だ重い症状の出る者達は本部やヒュノスティエラの屋敷に保護され、医療チームによる治療が続けられる事になった。
「…………」
「ティーガ、いた?」
「いや」
「ティーガ君、フーリーちゃん。レイヴン君……やっぱり居ないみたい」
ティーガは症状の軽微だったフーリーとウルスと共に建物を回ってレイヴンを捜していた。
上空偵察などで場を離れていると思ったが……その姿は夜になっても見つけられない。
「アイツ……どこ行ったんだよ」
「よく見るとさー。『飛行部隊』のヒト達、居なくない?」
「ガイエン様の姿も見えません……な、何かの任務ですかね……?」
「…………」
三人は状況のおかしさを薄々感じる。
過去の事から内部へ入るための検問はより厳しくなっていると言うのに、侵入を許し、あまつさえ兵器も持ち込まれた。
内通者を疑うのは必然であり、『飛行部隊』の面子が誰も誰も居ないと言う事は――
「クソ……『飛行部隊』の奴らめ……」
「だから、金で雇う傭兵は信用ならないんだ」
咳き込む身内を介抱する『防衛部隊』の隊員がそのような事を口にしていた為、ティーガは話しかける。
「『飛行部隊』がどうかしたんすか?」
「ん? ティーガか。そうか……お前は『地下居住区』からの助け出された面子だったな」
その隊員はガイエンが連れ拐われる現場で身代わりを名乗り出た『狼』だった。
「今、『飛行部隊』がどうのって……」
「…………奴らだよ。『ゴースト』に内通して裏切ったのはな」
「裏切っ……た?」
「え? は?」
「な、なんで……そんなこと……」
隊員は当時の状況を詳細に話した。
『ゴースト』側に着いた者達による『地下居住区』へのガス攻撃。
ガイエンが連れ拐われ、『飛行部隊』はソレに加担していたと言うこと――
「……身内の介抱で『解放軍』はソレどころじゃ無いが……事態が落ち着つけば状況は全体に伝わる。スティリナ隊長から連絡があるハズだ」
「そうなんすね……」
その話を聞いてティーガは踵を返す。フーリーとウルスは慌てて彼に続いた。
「ティーガ、レイヴンは――」
「きっと、何かの間違いですよ!」
ティーガ達四人は幼い頃にサリアに助けられた事からも兄弟のように育った中だった。故に――
「当たり前だ。アイツは――」
しかし、ティーガはそれ以上の事を何も言えず、足を止めて改めて思い返す。
過去を詮索しない。ソレが『解放軍』では暗黙の了解だった。だから――
俺は……アイツの事は何も知らねぇ……
何に苦しんで、何を抱えていたのか。共に居たと言うのに腹を割って話した事など一度も無かった。
「『地下居住区』はまだ封鎖よ。自室に何か道具を取りに行きたい時は『技術生産部隊』のヒトに装備を借りて入りなさい」
そこへサリアが歩いて来た。カナリアとの傷は手当てしているものの、服に着いた血から負傷したことが三人にもわかった。
「サリアさん……怪我したんすか?!」
「マジ? サリア婆ちゃん、誰にやられたの?」
「お婆ちゃん……大丈夫? 大丈夫なの?」
心配そうに寄ってくるウルスを安心させる様にサリアは抱きしめる。
「ただのかすり傷よ。それよりもアンタら。レイヴンの事を知りたい?」
三人とレイヴンの関係を親代わりとして間近で見てきたサリアはいつもの真剣な瞳で子供たちを見る。
「やっぱり……レイヴンの身に何かあったんすか?」
「着いてきなさい」
そう行って、サリアは踵を返すとクロエを誘って火酒パーティをした“秘密基地”へ三人を連れてきた。そこには――
「久しぶりですね、三人とも」
「姉貴!」
「カナ姉じゃん!」
「カナリアお姉ちゃん!」
姉の様な存在であるカナリアの姿に三人は駆け寄る。
「カナリア、レイヴンの件はアンタからこの子達に説明しなさい」
「……はい」
そう行ってサリアは場を去った。
その短い会話で三人はカナリアが知りたい答えを持っていることを察する。
「姉貴……レイヴンは……」
「絶対事情があるハズだって! そうでしょ?」
「お姉ちゃん……そうだよね?」
「ええ。でも、私の話をしっかり聞いた上でアナタ達は自分で判断してください。私達が裏切り者かどうかを」
カナリアは『鳥翼族』に起こっていた事や自分が何の目的で『解放軍』へ来たのかを三人に語り始めた。
「チビ共の事はアンタに任せるわよ、カナリア」
カナリアは戦線には出さない。ソレがサリアの判断だった。そして、
「【魔弾】の恐怖を久しく忘れているみたいね、『クイーン』」
【魔弾】の身内に手を出すとどうなるのか。ソレを『ゴースト』全体に改めて知らしめねばならない――




