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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第621話 【刃王】の弟子

「【水面剣士】クロエ・ヴォンガルフ! お前の噂は聞いてるぜぇ! スゲー強いってなぁ!」

「あらそう? それは嬉しいわね」


 そう微笑むクロエであるがナムタイの前傾姿勢の構えは油断できなかった。


 ナムタイ君は素手ね。加えて……彼から感じ取れる気配には覚えがある。


 外から測れる情報はあまり明るいモノではない。特に武器を使わない無手の相手は肢体が武器となり、変幻自在であるからだ。

 下手な武器頼りな実力者よりも厄介であるが……無手(それ)の最高峰が師である事もあり、クロエ自身も素手による応酬は十分に学んでいる。


 唯一懸念は――ナムタイが敵ではない事だ。“殺害”と言う選択が取れないのは大きな枷の一つとなっている。それに……


「貴方、『太陽の民』?」

「おう! だが里は関係ねぇ! 俺は祖父さんの血が濃いだけだぜ!!」


 知っている『太陽の民』とは少し違うと思っていたけれど純粋では無いと言う事ね。それでも、ナムタイ君の宿す『陽気』は『太陽の戦士』クラスと大差ない。


 クロエからすれば、正直なところナムタイとは相性が悪い(・・・・・)。故に――


「腕の一つが飛んでも、繋げられる医師は『解放軍』に居るかしら?」

「シャァァァ! 良いぜ! その殺気! 正面からぶち破る!!」


 ナムタイは怯む様子なく不敵に笑う。

 クロエはその挙動を僅かにも逃さない様に意識を集中した。

 『太陽の戦士』の強さは理解している。油断はこちらの敗北に繋がるだろう。

 ナムタイが弾丸のようにクロエへ突進しようとした、その時――


「ナムタイ君、止まってください」


 ヴォン……と電磁音が聞こえた瞬間、ナムタイの目の前に『雷の魔人(ボルト)』の女が現れた。






「クラリッサ」


 フォルネラは現れた『雷の魔人(ボルト)』の女に声をかける。


「若もナムタイ君を止めてください」

「……まぁ、ワタシも彼女にかかって行った手前、ナムタイを止める権利は無いからな」

「そう言う事だぜ、クラリッサァ! 俺の燃える魂が、ここで止まる事を良しとしねぇぜ!!」

「作戦が二日後に控えています。後で詳しく説明しますが、次の作戦は『クイーン』との決戦になるそうです。ケガをしてしまったら後方に回されるかもしれませんよ?」


 と、後ろ目でクロエにも視線を送ってくる。クロエも何処となくその意図を察し、


「そうね。勝負は後でも出来るし、今は“お預け”にしておくってのはどうかしら?」


 クロエからも出される提案にナムタイの燃える魂は――


「それなら、そうするか」


 スン、とあっさり溜飲を下げた。


 意外と物分かりは良いのね。

 クロウがそう思っていると、ナムタイがビシッ! と指先を向けてくる。


「クロエ! 『クイーン』をぶっ飛ばしたら魂の勝負だぜ!」

「ええ。構わないわよ」

「シャッア! フォルネラ! 飯に行こうぜ!」

「いや、ワタシはシャワー浴びて寝るよ。それに――」


 と、次にフォルネラの視線が向けられ、フイッと外された。


「考え直さなきゃいけない事もある」

「お、そうか。なら俺は一人で飯に行くぜ!!」


 若い二人が歩いていく中、『雷の魔人(ボルト)』の女がクロエへ歩み寄るとペコリと頭を下げてきた。


「早朝からお騒がせしてしまって、申し訳ありませんでした」

「気にしてないわ。クロエ・ヴォンガルフよ」

「クラリッサと申します。若――フォルネラ・ハインケルの従者を務めています」


 胸に手を当てて丁寧に自己紹介するクラリッサ。品格を感じさせる所作は相当な格式の家柄に仕えていると感じた。


「私は最近、この辺りに来たのだけれど、フォルネラ君は有権者の家柄なのかしら?」

「ハインケル家は北西にある群島――『ガルバン列島』を統一した名家。若はその本家の四子です」


 『ガルバン列島』の事は『コロッセオ』で腕利きを集める時にそれなりの戦士が出身地域と言う事もあり、少し調べた。

 海の魔物を倒し、各諸島の島主たちを説得して一つの列島として成したと言う歴史は『フロンティア』共通の世界史。

 ソレを統一したのがハインケル家なのね。


「その名家の子が何故『解放軍』に?」

「『解放軍』へは成り行きです。ここでの事案が終われば再び別の地へ流れる事になるでしょう」

「そう。彼はかなり若いのに相当な腕前ね。粗削りだけど土台の基礎がしっかりしてるわ」


 それとなくフォルネラの強さに関して探りを入れる。

 クロエはフォルネラとは相性が良かった事もあり一方的だったが、感じた才覚はカイルやディーヤと遜色が無いモノだった。

 しかし、剣筋はかなり我流の色が強い。自分のスタイルを模索している最中の様な“(あら)”が感じられる。


「けれど、指導が無ければ長く迷走してしまうわ。彼の師と連絡を取った方が良いわね」

「フォルネラ様に剣術を教えたのは流れてきた客人だったのです。今から10年前彼女は当時、『古海四王』の一角、『古海王蛇(レヴィアタン)』を退け、『ガルバン列島』を救った方でして。その戦いで姿を消し、その後は消息不明なのです」


 『古海四王』と言うと、動くだけで海の生態系が変わると言われるほどの“古代種”ね。ソレを単身で退けるなんて何者かしら?


「その女性の名前は分かるかしら?」

「【刃王】フォンファン様です」


 あぁ、フォンファン様かぁ。それなら、『古海王蛇(レヴィアタン)』には随分と手加減して(・・・・・)あげたのね。あの方なら『古海王蛇(レヴィアタン)』を縦に斬れただろうし。


「フォルネラ様はいつの日か、フォンファン様と再会した時に己の剣を見せる為に研鑽しているのです」

「悪くない目標ね」


 【武神王】の五番弟子であるフォンファン様はファング様の妹弟子。

 『剣王会』全ての“一席”を一度は経験したことある程の実力者なのだから。

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