第613話 『風剣ストーム』の所持者
『風剣ストーム』。
私の知るモノと彼らの知るモノに齟齬が無ければ、恐らく『七界剣』の一つである可能性が高い。
『水剣メリキュリウス』はカイルが所持しているけれど、この世界にはもう一本流れ着いているのね。
「『風剣ストーム』。どんな武器なのかしら?」
「見た目はちょっと反りのある片刃の剣っすね」
「私たちも詳しくは知らないんだけどさ。フォルネラって武者修行してるらしくて、その道中で拾ったらしいんだよね」
「つまり、昔から所持してたワケではないのかしら?」
「付き人の方からわたしも聞きましたけど……野地していたらいつの間にか枕元にあったそうです」
「俺は流石に嘘だと思うけどな。あんなヤバい剣が偶然拾ったみたいに現れるかよ」
「マジでそうなら、ホントにウケるよねー」
『風剣ストーム』の所持条件については知られていないようね。となれば……
「フォルネラって子は相当、柔軟な考え方をしているのかしら?」
「柔軟……っすか?」
「え? フォルネラって実はそうなの?」
「わ、わたしは……よく分からないです」
「違うの?」
「アイツは修行ヲタクっすよ! 本部にいる時もずっと瞑想したり剣を振ったりして、柔軟な考えなんて一つもないです!」
渋られる方は迷惑だぜ、とティーガ君は焼いた肉を食べる。
「そーそー。『風剣ストーム』に関しても、“混乱戦”の時以外は抜いた事ないし。マジでナメプ止めろって言いたくてさー」
「混乱戦?」
「一年前ほど前に『クイーン』の軍勢が商人さんに擬態して『氷壁』内部に潜入した事があったんです」
「アレはヤバかったよねー。積荷からも『ゴースト』がドバって出てきてさー。総司令は留守でサリア婆ちゃんも外回り。フリードさんは偵察に出てたし、内部は大混乱。マジで検閲しっかりやれってかんじ」
「その後は……『ゴースト』は人質を取ったり、『地下居住区』へ逃げ込んだりして、ホントに凄かったんです……」
ウルスは当時の事を思い出したのか、紛らわす様にジュースを一気に飲んだ。
「極めつけは『シングルタスク』の野郎まで潜入してたんです」
「『シングルタスク』?」
「『クイーン』勢力に居る腕利きの『ゴースト』っす」
「ソレをフォルネラ君が?」
「いや、その『シングルタスク』はスティリナさんがバラバラにしたんだよねー。ガチギレしててさ。でも、その混乱の最中に『クイーン』の“戦城”が『氷壁』に近づいててさー」
「アレはマジで終わったと思ったよな」
その件に関して少し話を掘り下げた所、当時『クイーン』は内部に混乱を引き起こして外から戦力を一気に投入して首都を制圧しようとしたみたいね。
「それを……フォルネラ君が『風剣ストーム』で巻き上げたんです」
「巻き上げた?」
「文字通りの意味っすよ。アイツ、いつの間にか『氷壁』の上部に登ってて、取り付いた“戦城”から雪崩込もうとする『ゴースト』を“戦城”ごと、空に巻き上げたんです」
並ならぬ『七界剣』の力を知る者としてはそのくらいの事は出来ると解る。
「き、気がついたら……なんか“戦城”が空を舞ってて……」
「私も幻覚かと思ったよー。マジでギャグみたいな光景だったよねー」
「俺は、それが出来るなら『ゴースト』全部潰して来い、って言ったんすけど……アイツは“それは風が望んでない”って言って鞘に収めて残党の処理を始めたんですよ。意味わかんないでしょ?」
「変わった子なのね」
『七界剣』は常人には持てない事で有名だ。フォルネラと言う青年も他の所持者に負けず劣らずに、尖った性格をしているみたいね。
「『風剣ストーム』は本物っすけどフォルネラのヤツはアホっすね」
「まー、ボスもフォルネラの事は『解放軍』の切り札として抱えてるトコあるし、居るだけで『クイーン』の牽制になるから戦い方に関しては自由にさせてるっぽいしねー」
フォルネラって子はカイルが興味を示そうね。
「ちなみに、一番部隊員数が多いのはサリアさんの部隊っすよ」
「そうなの?」
「正確には、サリア婆ちゃんって市民の人たちにも銃の扱いを指導してるから実質的に民間兵? になるんかな? 実質、市民の14歳以上はみんな兵士ってかんじー」
「あなた達も銃の扱いを?」
「そうっすよ。サリアさんは、来るべきではない決戦のために教えてるって言ってますけどね……」
「次に『ゴースト』がガチ攻めしてくる時はさぁ、『氷壁』を護りながら戦う事になるだろうからねー。銃を撃つ手数があったほうが良いって判断らしーよ」
「だから……サリアお婆ちゃんやガイエン様はこちらから攻める方向で考えてるみたいなんです……」
「『首都防衛部隊』も基本的には民間兵が殆どだからなぁ。銃の持ち出しもガチの緊急時以外は許可出ねぇし」
「銃を習ったヒトの中で、特に才能があって進んで戦線に出たいってヒトがサリアお婆ちゃんが指示する『狙撃部隊』に入るんです」
サリアも可能な限りの防衛対策を取っている様だ。しかし、それは本当に最後の手段であり、決して切ってはならない手札の一つなのだろう。
“銃は慣れが早いのよ。指先で生まれる“死”に対してもね”
サリアはソレをよく知っている。だから、非戦闘員が銃を持つ事になる事態は極力避けたいのだろう。
「それで……クロエさん」
「なにかしら?」
少しサリアの意図を考えていると、ティーガ君が改めて聞いてきた。
「俺たちの話ばかりじゃなくて、クロエさんの事も聞きたいっすよ!」
「特にバストサイズとか〜?」
「ティーガ君……」
「違う! まぁ……って言わせんな! ここまで来る人だぞ! お前らは経緯とか気にならねぇのか?!」
「まぁ、本人が話したいかっしょ。個人の事情を聞くのはボスもあんまりするなって言ってるじゃん」
「ぐ……た、確かにそうだが……」
「ふふ。確かにあなた達ばかりに話を聞くのはフェアじゃないわよね」
私がそう言うと、ティーガ君から嬉しそうな雰囲気が伝わってくる。
「そう言う事なら、私から聞いて良い?」
「どうぞ、フーリーさん」
「クロエさんのスリーサイズ教えてよー。約一名が死ぬほど気にしてるみたいだしさー」
「なっ! フーリー! テメェ! 誰の事だ!」
「自白してるーウケるー」
「ティーガ君……」
「ふふ」




