↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
686/725

第601話 死の淵

 『魔騎兵』450騎の突撃。

 ダメージを負ったゼダンは一度後方に下がったものの、最初の突撃で『解放軍』の防衛能力をある程度把握していた。


「全騎兵に通達。奴らには近づくな。一定の距離を保ち“投槍”にて削れ。我らの強みは“群”である事。効かずとも消耗させれば良い」

「はっ!」


 ゼダンは後方へ下がる傍ら、寄ってきた伝令兵へ命令を伝え、伝令兵は独自の信号旗と角笛にて旗兵へと伝える。


 『氷壁』に開けられた道。ソレは音の罠が待ち受けているが……そもそも発動しなければ意味は無い。

 道が閉じられる懸念も同じだ。操作する者を始末すれば考える必要はない。


「奴らはまだ我々の射程にいる」


 今現在、開いた『氷壁』の前に立つ“二匹の家畜(クロエとガイエン)”を始末すれば『魔騎兵』は一気に『オベリスク』の首都へと雪崩込めるのだ。

 家畜共は何を狙っているのかは分からないが……この『魔騎兵』500騎は【魔弾】一人でどうにかなるレベルではない。


 指示を出す旗の色が変わり、ソレを確認した伝令兵が角笛を吹く。命令は――


“『魔騎兵』450騎による投槍の連続投擲にて正面の家畜二匹の始末”


 『魔騎兵』同士の間隔を開き、速度も普段より落としつつ、先頭列は投槍を構える。

 十分な間隔さえあれば不意に『氷柱』による進路妨害が生まれたとしても“魔馬”の機動性で十分に回避することが可能だ。

 

 そして、家畜二匹に浴びせるのは一投擲で馬車をも貫く投槍の雨である。






「速度を落とします」


 『魔騎兵』の動きからガイエンは手堅い面制圧が行われると察し、『氷柱』を出現させ進路を妨害。速度を落とすことで投槍による威力の低下を狙う。しかし――


「ガイエンさん。それは悪手ね」


 『氷柱』の発生が速かった。十分な間があった為に、『魔騎兵』による投槍で破壊され、貫通した幾つかがクロエとガイエンに襲いかかる。


「むぅ……」


 ガイエンは義足で蹴り弾き、クロエは半身になって身体を揺らす様に交わす。その際に僅かに頬を掠めた。


「囲まれた時よりも速度と威力があるわね」


 肌に触れた事で、より正確に“投槍”の攻撃力を測る。


 サリアと合流する前に受けた投槍よりも直線運動である事もあり、その一撃は人体など容易く貫くだろう。それが“面”で襲いかかってくる。

 『魔騎兵』が迫る。最前列は既に二射目を手に取って構えていた。


 間もなく――圧倒的な数と威力を持つ……450騎による“投槍”が来る……


「――――」


 いつぶりだろうか? 背筋を冷やすような悪寒を感じたのは……

 環境による“寒さ”ではない。これは今この場から逃げ出さなくては間違いなく“死ぬ”と言う……生存本能から来る警告だ。


「久しい感覚……」


 ふー……とクロエは一度息を吐く。白い息が世界に溶ける。

 己の心音が早鳴る。死が秒読みで近づいてくるのを感じる。


“強者にとって最も失ってはならないのは“己の命”ではなく『死の淵』だ。己の歩みを止めたその瞬間、強者はただ追い抜かれるだけの“弱者”となる。小生たちにとって“弱卒”とは死と同義。クロエ、己の歩みを鈍らせるな。己を脅かす死から逃げるのではなく、身を委ねよ”


 強くなれば“死の悪寒”に対する上限は上がっていく。世界に対する理解が進めば進むほど、その感覚は簡単には感じられなくなる。だから――


「これは……とても貴重ね」


 己の道の前に立ち塞がる壁。今まではソレを越えて来た。

 しかし、それではダメだと【極光波】との戦いで理解した。越えるばかりでは【武神王】には届かない。それに――


“クロエさん! 今日は勝つからね!”


「ふふ。追いつかれるワケには行かないものね、ローハン」


 死の淵。その感覚がこれまでの経験の中から覆す事が出来る情報を探す。

 ソレは一般的には走馬灯と呼ばれる現象。だが……クロエは目が見えない。故に彼女が感じるのは――


「――なるほど……随分と複雑ね」


 世界の(ことわり)からの“答え”だった。






「この位置がベストか……」


 サリアは城壁の上を馬で駆け、“天元”の発動出来るギリギリのポイントに着くことが出来た。


 もっと良いポイントがあるけど……これ以上、時間をかけると下の負担が大き過ぎるわね。


 俯瞰する様に眼下を見ると、『魔騎兵』が最初の投槍でガイエンの妨害目的の『氷柱』を破壊していた。

 平面からしか『魔騎兵』を捉えられないのなら、距離感が測れないのは仕方ない。


「サリアさん。落とします」


 飛行して追いついたレイヴンが『長弓』と適した矢筒を上空から落としてくる。サリアはお礼を言いつつ、ソレを受け取った。


「レイヴン、そのまま上空から魔法陣の位置を確認して頂戴。風向きも教えて」

「風向きは追い風ですわ。矢は思ったよりも飛ぶと思います」


 自分達の立っている所と上空では風速が違う。


「レイヴン、もう少し上空の風速と風向きが知りたいわ」

「下は大丈夫ですか? 間もなく『魔騎兵』の一斉射撃が始まります。ボスと客分は死ぬとちゃいます?」

「二人は問題ないわ。あたし達はあたし達の仕事を完遂するわよ。正確な情報を観測して」

「……了解」


 レイヴンは更に上昇。その間にサリアは下の状況を俯瞰する。


「びっくりするくらい不安は無いのよね」


 迫る『魔騎兵』450を前に佇む盲目の剣士。

 本来なら絶対に助からないと思わせる光景である。

 しかし、サリアはクロエの圧が不自然な程に感じられなくなった様子が【宵宮の刀(ヤマト)】と重なった気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。