第600話記念外伝30『宇宙の彼方へ』この世界の手記
この手記は“彼女”にプレゼントする予定で書いている。
彼女が私と話してくれるか分からない。だからこの旅の中で手記にまとめて、ソレを読んでもらってから仲良くなれれば良いと思ってる。
父さんが私達の所にいた時に、私達に何をしたのか、何をしてくれたのか……
特にあの戦い……『第8補給路戦線』での事は今でも良く覚えてるから。
私と父さんは【マッドジャック】へアクセスする為に接近したけれど、敵の抵抗も激しかった。
しかし、『星の探索者』の人たちがエネルギータンクからの補給を阻止しつつ、敵の妨害を斬り開いてくれたおかげで一度も振り向かずに【マッドジャック】の内部へ接触する事が出来た。
その時父さんは終始、背後は問題ない、って言ってたっけ。きっと『星の探索者』の人たちを一心に信用していたんだと思う。
そして、内部プログラムにアクセスし、その奥にいる“子供たち”と“三人目の父さん”に会った。
「ここは……」
私は父さんに頼まれて【ダークブルー】を通じて“子供たち”の感応に直接語りかけた。
しかし、気がついたら何もない玩具箱の中のような空間に立っていたのだ。姿もパイロットスーツから艦内で活動する時のジャケット姿である。
『“子供たち”の安定空間だろう』
白髪に仮面を着けた男が横に現れる。私はすぐに父さんだと気付いた。
『お前の“感応”をプログラム化してアクセスの足掛かりにしたのだが……どうやらお前までこの場所に引っ張ってしまったみたいだ。すまない』
「…………」
『トリィ、私だが……』
「あ、いや。父さんって人型だとそんな姿なんだなって」
『ボルックの姿の方がわかりやすいか?』
「ううん。そっちの方がカッコいいよ」
『ありがとう。何が起こるか分からない。ここは私に任せてお前は――』
「また一人でやろうとするの? 言っておくけど、私は全部許してないからね。だから、帰るまでずっも一緒にいるから」
『…………頑固に育てたつもりは無いんだがな』
「説明足らずで一方的に消えたから、今反抗期が来てるの」
『…………』
「だから、うんと反抗するから覚悟しててね」
『……お前も親になれば私の気持ちがわかるぞ』
私は舌を出して笑って返した。
その時、ヌイグルミの壁が私達の目の前を塞ぐ。そして、間髪入れずに閉じ込めるように私達の周りに降って来た。
「っ!」
最後に天井が私達を潰すように落ちて来る。私が脱出の綻びが無いか視線を巡らせていると、
『心配するな』
父さんが手を翳すと天井の落下が止まった。そして、目の前の壁が分解される様に消失し、そのまま全てが取り除かれる様に消え去って行く。
『この空間を創っているのは“三人目”だろう。それならば、私は主導権に割り込める』
余分な物が崩れるように消え去り、世界に残ったのは――
『…………』
「あの女性は……」
仮面を着けた女性が背後の“ヌイグルミの家”だけは護るように手を翳している。
父さんの行使に抵抗している様だった。
『アレが“三人目”だ』
そう言うと、父さんは“三人目”に歩み寄っていく。私も少し遅れて後に続いた。
『話が出来るか?』
父さんが手を翳す“三人目”に語りかける。しかし次の瞬間、『ピース』と『テンタクル』が現れて、私達に射口を向けた。
『意味は無い』
しかし、父さんが手を翳すと『ピース』と『テンタクル』は霧散するように消え、“三人目”の姿は映像がブレるように不明瞭になる。
『私の目的はお前の排除ではない。しかし、このまま【マッドジャック】を保護し、タンワの意思に従い続ければお前は消える事になる』
外では『星の探索者』が【マッドジャック】にダメージを与えている。“三人目”は『ケミカルフィーバー』で巨体がバラバラにならない様に必死に留めている様だった。
『…………この子たちを……護る……』
“三人目”が言葉を発する。記号の様な音声だったが、必死な様を感じられた。
『……そうか。お前もあの子達の為に生まれたのだな』
『……泣いて……いた……』
『知っている。だが、お前が消えたら誰が子供たちを護る?』
『…………』
『タンワはお前も“子供たち”の事も考慮していない。ただ、己の渇望する“理想”を無理やりすり合わせようとしているだけに過ぎない。そこに、“子供たち”の未来はあると分析しているか?』
『……この子……達は……ここから……出れない……生きて……行けない……だから……』
「私がその子たちを護るよ」
私はそう言いながら前に出る。
「私も昔はそうだった。怖くて、耳を塞ぎたくて、でもトレインが居たから顔を上げなくちゃいけなかった。そんな時、父さんが助けてくれたから私は今、こうやって一緒に歩いてる」
『……』
「父さんは私達の命を――可能性を繋いでくれた。だから、今度は私が“子供たち”の可能性を繋いでいく番なんだと思う」
『……わたしは……』
「仮面のお姉ちゃん……」
すると、玩具の家の扉が少し開いて子供の一人がこちらを見ていた。しかし、すぐに“三人目”が庇うように立ちはだかる。
『出て……来ては……ダメ……』
私は近づかずに、その場で視線を合わせるようにしゃがむと微笑む。
「私はトリエル。あなたは?」
「ぼくは……アンルイ」
「アンルイ。いい名前だね」
「……お姉ちゃんは……仮面のお姉ちゃんを……助けてくれるの?」
「うん。そのつもりで来たんだ」
「でも……ぼくたちの家は……ここしかないんだ……」
「そんな事は無いよ。不安ならお姉ちゃんが手を繋いで一緒に歩いてあげる」
「……でも……」
少年――アンルイは“三人目”を見る。だから私は告げた。
「それなら皆で一緒に家を出よう。ここよりも、ずっと広くて大きくて、自由な世界と可能性を仮面のお姉ちゃんと一緒に見せてあげる」
『アン……それ以外は……聞いては……ダメ……奥に……』
「…………仮面のお姉ちゃん。ぼく、ずっとここに居るのはいやだよ……」
『アン……』
“三人目”はしゃがんで、アンルイに向き直ると、開いた扉の向こうには四人の子供たちが泣きそうな目をしていた。
「姉さまが居なくなるの……嫌ぁ……」
「ドゥリム……」
「お姉ちゃんの事……ぼくがまもるから……」
「トワト……」
「こわい……こんなところに……ずっといたくない……」
「キャトリク……」
「ぼくも……ここから出たい……」
「サクウェル……」
そう不安を口にする“子供たち”を安心させる様に“三人目”は抱きしめてあげた。
『……すまない……わたしは……君たちの……自由を……“可能性”を……奪うつもりは……なかった……』
静かに泣き出す“子供たち”を少し宥めると“三人目”は立ちがってこちらに向き直った。
『“三人目”よ』
すると、父さんはゼウスさんとの間で出した結論を“三人目”へと共有した。
『――これは……』
『その子たちの“可能性”だ。後は、お前が手を貸してくれれば、この“可能性”をつないでいける』
『……断る理由は……無い……行こ――』
“そこに居たか! 『ケミカルフィーバー』よ!”
その時、巨大な両手が現れ、“三人目”と玩具の家を掴み上げた。
“何をしている……子供たちよ! 『ピース』と『テンタクル』を動かし! 【マッドジャック】を護れ!!!”
『っ……』
『タンワ……!』
「くっ!」
恐怖から泣き出す“子供たち”の声など聞こえていない様子でタンワは高笑いをすると、次に巨大な眼が現れて、ギロリ、と私達を見た。
“入り込んだ蛆虫共め! この【マッドジャック】を内側から崩そうなどと……片腹痛いわ!”
『タンワ、無駄な事は止めろ。もはやお前に従う者など存在しない。お前は自身の“可能性”を自ら潰したのだ』
““可能性”だとぉ? 私こそが“可能性”そのものだ! そんな事も分からぬか! 蛆虫共ぉ!”
父さんは“子供たち”と“三人目”が捕まっている為に強く出れないみたいだった。
その時――
『……わたしの……たった一つの……望み……』
そう呟く“三人目”が巨大な目に自らを差し出す様に形を崩していく。
“ふはは! ようやくわかったか! お前は私に従えば良いのだ! はははは! はぁ――”
ピタリとタンワの高笑いが止まった。
“ぐぅぅぅ??! な……なんだ?! 頭が……割れるぅ?! なんだ……貴様……何をしている?!”
『メモリーオーバーだ』
「メモリーオーバー?」
『記憶媒体には容量がある事は知っているな?』
「うん」
『容量を超えるメモリーは記録する事が出来ずに弾かれる。しかし、人間の脳はそうじゃない。“忘れる”事で許容量を守っている』
「じゃあ、今……“三人目”がやっているのは……」
『『ケミカルフィーバー』に必要な分析情報を感応世界を通じてタンワの脳へ直接送り込んでいる。ヤツは今、膨大な情報を全て強制的にダウンロードされている状態だ』
「父さん……それって――」
“ぐわぁぁぁ??! き……貴様……やめ……止めろぉぉぉ!!”
“三人目”の姿は更に消えていく。足から胴体、腕と――
『“三人目”よ。それ以上は、お前が消えてしまうぞ!』
『……これが……わたしの……たった一つの……望み……』
すると、玩具の家からその様子を見る“子供たち”を“三人目”は見る。仮面が外れ、そこから優しい顔を覗かせると微笑みを浮かべていた。
『……みんな……強く……前に……進んで……』
“止めろぉぉぉぉ!!!”
“三人目”は完全に消え去ると感応世界はブツっと消えるようにブラックアウトする――
正直なところ、今でもあの時の事は夢なんじゃないかと思うんですよね〜
本来ならアタシが関わった戦いは記録に残しちゃいけないんですけど、まぁ、日誌という形なら問題ないでしょう〜
それに、『第8補給路戦線』は、それだけ理解の外にあった戦いでしたからね〜
もしコレを他人が読んでも、なんだこれ? と当事者以外は、首を捻る出来事ですしー。
まぁ、他で記録している事に関しては省略してアタシの見た事でも書き残す事にしますかー。
『エンス』からの援助を受けて『飛翔』の起動を護衛する間、『星の探索者』と【マッドジャック】の戦いはまさに戦争と言っても過言ではありませんでした。
彼らに何が作用したのかは不明ですがー、僅か5機……ああ【ダークブルー】も含めれば6機ですね。小隊程度の機数であの、変貌していく【マッドジャック】を完全に押してたんですから〜
ホントに彼らは規格外だったんだと、アタシ達は追々わかった感じですねー
【コールマン】の振り抜いた剣が【マッドジャック】を横に斬り裂いて、そこへ【ダークブルー】が突入した時は戦いが終わると確信しました。
アタシは【ダークブルー】を神の様に見ていませんが、この終わらない戦いが終わると感じた時は少しだけ信仰心が芽生えたのは気のせいだと言うことにします。
【ダークブルー】が飛び込んで数分もしない内に【マッドジャック】から『ケミカルフィーバー』が消えて内側から崩壊を始めました。
あの時の【マッドジャック】の異様な変貌は紙細工を糊で無理やりくっつけてたみたいな感じでしたからねー。『ケミカルフィーバー』が解けた瞬間、形を維持できなかったんでしょう。
その時、『飛翔』が起動し、【カムヤタテ】も補佐を受けてより正確な索敵が行えるようになった……その時でした。
崩壊する【マッドジャック】から思念(恐らくタンワですね)が飛び出すと周囲のエネルギータンクへと作用し、それらが全てを炸裂させたんです。
私と父さんは【マッドジャック】の感応世界から戻ると、即座に“子供たち”を助けに内部を駆ける。
【マッドジャック】は崩壊を始め、“子供たち”の生存装置が停止する前に『ケミカルバリア』で保護しなければならない。そして――
“お姉ちゃん――”
「父さん」
『そこか』
感応で“子供たち”が呼んでくれた事で近づいて保護した。脳の入った五つの培養缶を『ケミカルバリア』で生命維持を行い、崩れる【マッドジャック】から脱出。その時――
“『エンダー』よ……”
タンワの思念が【マッドジャック】から飛び出し、周囲に浮かぶエネルギータンクへと触れた。
『トリィ、恨み節は今度聞く』
「……父さん?」
『ケミカルフィーバー』で【マッドジャック】を分解し、無理やり道を作ると上部から飛び出し、“子供たち”と共に『星の探索者』の面々と合流した瞬間――
“アナタを脅かすモノを! 全て廃しまするぅぅぅ!!”
エネルギータンクが全て炸裂し、私達は光に包まれた。
モニターが閃光に包まれて何が起こっているのか分からない。少なくとも私達はエネルギータンクの爆発に巻き込まれたのだと言うことだけはわかった。
そして、彼らの通信が聞こえてくる。
「なんだ?! 何が起こった?!」
『タンワの思念がエネルギータンクをオーバーロードさせ、全て炸裂させた。我々はその中心に居る』
「今、【コールマン】と【ダークブルー】で抑えてセーフゾーンを維持しているわ! 絶対に側から離れないで!」
「現状は……ギリギリ耐えてるって形ね……」
「ゼウス先生! 何か出来ることはありませんか?!」
「機体も分解が始まっています」
「ぬぅ! 某がエネルギーさえも燃え散らす事が出来ればっ!」
私はモニターから溢れる閃光に対して、肘を前に出して目線を覆うだけで精一杯だった。
「何がおこってるの……」
「ううぅ……」
「こわいよ……」
「うぁーん……」
「いやだ……いやだ……」
「大丈夫。大丈夫だよ」
私は“子供たち”を安心させる為に優しく抱きしめる様に感応で答える。
『ゼウス殿、『ケミカルフィーバー』では変換が間に合いません。エネルギーを別の空間へ逃さなくては皆、消滅します』
「! すぐにやって! 周囲の安定は私がやるわ!」
『了解』
【ダークブルー】が呼応する。機体の一部が変貌する様に装甲が開くと、そこから赤色の粒子が漂い出て、それは次第に翠色へと変わっていく。
しかし、それに伴いモニターが乱れるようにノイズが走り始め、機体から電流が流れ始めた。
「……父さん。何をやってるの?」
『……』
「父さん!」
「ボルックお前……その選択するな! 死ぬぞ!!」
「!」
【ダークブルー】が分解されていく。手部……脚部……腕部……消えて行く――
『トリィ』
「父さん! 話そうって約束したよね?! また……私とトレインを置いていくの?!」
『約束を破る気はない。だから、私の代わりに“あの子”に伝えてくれ』
「何を……」
「ボルック! お前、こんな事をして……オレ達が納得すると思ってんのか?!」
『ワタシも、後味の悪い別れは御免でな』
「お前――」
【ダークブルー】が全て消えた瞬間……父さんが抱きしめてくれて――
「父さん!」
そして離れる様に光の向こう――“宇宙の彼方へ”と消えて行く。私もそれに着いて行こうと手を伸ばした。けど……
「――」
“子供たち”へ引き返して彼らを護るように抱きしめた。
光が……収束するように消える――
どうやったのかは知らないが、タンワのヤツは……最後の最後で全てを道連れにエネルギータンクを全て炸裂させた。
俺はスターリアと一緒にそれを見ている事しか出来ず、発生する閃光から目を覆うだけで精一杯だった。
「スターリア! 何がどうなった?!」
『こっちもわかりませんわ! 【マッドジャック】によってエネルギータンクが爆発した事くらいしか……』
「トリィは?! 親父は?!」
『索敵なんて不可能ですわよ! 『エンス』も同様ですわ!』
次に拡散する破壊で宙域全てが消滅してもおかしくなかった。しかし炸裂は眩い光だけを発するだけで破壊は一向に訪れない。
「……親父」
父が止めている事だけはわかった。しかし、耐えられるのか? みんな無事に帰って来るのか?
その時――
“トレイン”
「! 親父?!」
“トリィを頼む。また暫く家を空ける”
「勝手過ぎんぜ! 肩叩きくらいさせろよ!」
“次に帰った時で頼む”
それは俺のパイロットスーツの通信器だけに飛んできたモノでメッセージログにも残らなかった。
すると、炸裂の光は周りに一切の破壊を行うことなく、次の瞬間……空間に吸い込まれるように消え去った。
『飛翔』が起動した瞬間やったわ。
エネルギータンクの炸裂を検知し、ウチもただ破壊に身を委ねるしかないと覚悟を決めたんやけどな。
それはいつまでも経ってもやって来んねん。そんで、それが数分ほど続いた次の瞬間になぁ――
光もエネルギー数値も全て消え去って静寂が辺りを包んだんや。
先ほどまで激しい戦闘など行われていなかった様に、宙域には【マッドジャック】の残骸が浮かび、次々に救難信号が再度表示され始めた。
全員、状況を理解するんに少し時間がかかったと思うで。まるで夢から覚めた様な感じやったからな。
でも、【マッドジャック】とエネルギータンクの残骸が夢じゃあらへん事を証明しとった。そんで、
「リーフォン様、【ソルジャー】が持ち場を離れます」
『エンス』から護衛と作業の為に来てくれてたスターリア中尉の【ソルジャー】が整備員の一人を手の平に乗せて【マッドジャック】の残骸へ向かって行った。
その様子に『エンス』も【マッドジャック】へと前進して行く。
「シャオ、あっちには何があるんや?」
『少々お待ちを〜。えっとですね……救難信号と生体反応が、6つですねー』
「6つ?」
『内、5つは子供――幼児です〜』
シャオから拡大映像も送られてくる。
そこには、パイロットスーツを着たトリエル中尉と、幼児用の宇宙服を着た5人の子供たちが彼女に寄り添っておったわ。
「タンワは?」
『多分、死にましたねー。遺体はあるかもですがー』
「リーフォン様、『ケミカルウェーブ』を起動出来るそうです」
「すぐやってええよ」
ウチは席に深く座り直す。その瞬間、『ケミカルウェーブ』が広がり、宙域に集合していた艦隊に光が戻る。すると状況確認の通信が一気に飛び交い始めた。
ブリッジは大忙し。ウチは優秀なオペレーター達に任せつつ、背もたれに身体を預けて息を吐く。
「後始末は色々と大変やなぁ」
私は近くに残っていた【コールマン】の残骸のコックピットに入り、救難信号を打った。
これで、助けに来てもらえると安堵。そして、子供たちは――
「うわっ!」
「ちょっと! つかまらないでよ!」
「はなれるっ! はなれるっ!」
「うわわっ!」
「ぼく……ぜったい動かない……」
自分達の身体に驚きつつも、宇宙遊泳に困惑していた。私はみんながバラバラにならない様に一人一人の手をとって【コールマン】に引き寄せる。
父さんが『ケミカルフィーバー』で彼らの身体を再構築してくれたんだろう。
「お姉ちゃん……仮面のお姉ちゃんは……?」
「仮面のお姉ちゃんは、貴方たちの為にタンワを倒してくれたんだよ。だから、貴方たちは彼女の分まで歩いて行かなきゃダメ」
「…………」
子供たちは“三人目”が死んだ事を理解した。でも、全員が涙を瞳に溜めるだけで声を出して泣くことはしない。
強い子供たちだ。ちゃんと手を取ってあげれば沢山の可能性を紡いでくれるだろう。
「……お姉ちゃんのお父さんは?」
この場に居ないのは“三人目”だけじゃない。
父さんと『星の探索者』も完全に居なくなり、周囲に漂う【ソルジャー】達と【コールマン】はスクラップ同然の残骸になっている。
「私のお父さんは大丈夫」
それは強がりでも何でもない。父が手に残してくれた一つのUSBメモリー。それが……次の道を示してくれる。それに――
「守れない約束はしない人だからね」
私が笑顔でそう答えると、スターリアからの通信が【コールマン】のコックピットに届く。
私は光を点滅させながら、近づいてくる【ソルジャー】を導いた。
「みんな、家に帰ろう」
「おおおお!!?」
オレがエネルギータンクの光と共に空間を抜けると次に見えてきたのは石畳の薄暗い地面だった。
空間を通過する際にエネルギーは削られる様に消費され最終的には一つの石ころになって先に落ちる。
オレもそのまま、うつ伏せに地面に叩きつけられる様に落ちると、疼痛に後頭部を摩った。
「痛てて……ここは……んがぁ?!」
「あら、ごめんなさい」
背中にクロエの尻が遅れて振ってきて、再び地面に押しつけられる。
「よっと」
「わったった」
サリアは丁寧に着地し、クロウは少しバランスを崩しながらもオレから退いたクロエに支えられた。
「皆、無事?」
「主様、全員の姿は有りまする」
マスターを抱えたスメラギも着地。着地に失敗したのはオレだけか……痛てて……腰を抑えつつ立ち上がる。
「ここは……」
「『遺跡』ね。どうやら帰ってきたみたい」
スメラギから降ろして貰いながらマスターがハッカの実に点火して浮かばせてつつ、灯り代わりに照らす。
「見たことない場所っすね」
「地面には魔法陣が書いてあるわ。大方、集団の転移広間ってとこじゃない?」
サリアは近くに落ちているウェポンケースを見つけ、中を確認していた。ホッとする様子から中は無事だったらしい。
見ると、オレたちが【ソルジャー】のコックピットに持ち寄った道具が至る所に散乱していた。オレは『霊剣ガラット』を手に持ち上げ、後ろ腰に回す。
パイロットスーツもいつの間にか消失して、元の服装に戻っている。
「みんな、こっちに」
すると、クロエが何かを見つけてしゃがんでいた。それは壁に寄りかかるように座っている――
「ボルック――」
その姿は『遺跡内部』に入る時とは異なり、【ダークブルー】に近い色合いと姿をしている。
しかし、その目に光は無く、駆動音は何も聞こえない。
「この……クソっ! ふざけんな! テメェ!」
オレは動かないボルックに詰め寄り様子を見る。
完全に機能が停止していた。この場じゃ――
「スメラギ! 道を作って!」
「承知!」
マスターの指示にスメラギは『白炎』で横の壁をぶち抜いて穴を開けると、外の光が差し込んだ。
「ローはボルックを! 皆、急いでキャンプに戻るわよ! 彼を救うの!」
オレはボルックを背負うと皆の後を追うように走る。
後味の悪い別れは御免だと? そう言うのはな……生き残った奴が口にするセリフなんだよ!
次話、外伝最終話!




