第600話記念外伝29『宇宙の彼方へ』最終形態
「ボルック、いや……【ダークブルー】と呼んだ方が良いかしら?」
『ボルックで構いません、ゼウス殿』
マスターは停止した【マッドジャック】を前に次の行動を慎重に考えている様だった。
【ダークブルー】の一挙動で【マッドジャック】を沈黙させた所を見るに状況は完全に勝勢だが……問題はここからどうするかと言う事だ。
「【マッドジャック】の中には五人の“子供たち”が居るわ。あの子達を何とか救えないかしら?」
マスターの口にする“全てを救う”とは、あのタンワとか言う野郎も含まれてるんだろうな。
基本的に殺しは肯定しないのがマスターの心意気であり……キャパシティを超える敵であった場合でも可能な限り自己犠牲を選ぶ人だ。
その時はマスターの反対を押し切ってもオレが始末をつける必要がある。
『“子供たち”と【マッドジャック】は同一に近い存在となっています。【マッドジャック】の駆動系を破壊すれば、彼らの生命維持装置も停止するでしょう』
ボルックは【マッドジャック】のコックピットと巨体全体の接続系を透過情報としてこっちのコックピットに転送し、説明してくる。
「ふむ……じゃあ、【マッドジャック】からあの子達を切り離せない?」
『【マッドジャック】に対する深いアプローチが必要です。それに加えて“子供たち”はタンワを慕っている可能性が高い。説得も必要になります』
「ちょっと、ちょっと。待ってくれ」
オレは二人がガチの話をしている様子に割り込む。
「二人とも、ちょっといい?」
「どうしたの?」
『ローハン殿? 良い案が?』
「いやいや、助ける方向で考えてるけどさ……どう考えても無理でしょ。脳だけで生きてる状況でもイレギュラーなのに、助け出してもまた兵器として利用されるのがオチだって」
“子供たち”は人と言うよりも、兵器のパーツに近い状態だ。現状を見るに元の身体はもう無くなっていると考えるべきである。
「マスター、今後も分からん内に誰かに利用されるくらいならここで終わらせるのが最良じゃないですか?」
200機の『ピース』と150機の『テンタクル』に加えて【マッドジャック】を護る『ピース・フレーム』をたった五人で操作するほどのエスパー達だ。
訓練もしておらず、感受性だけで動かしているのなら相当な能力者だろう。
「ロー」
「言っておきますけどね、オレはこの場の面子が生き残るのが大事なんですよ。汚れ役が必要なら全部オレがやります」
「ちょっと、そこで何をモタモタしてるのよ」
「マスター、ローハン、終わったの?」
「ゼウス先生ー!」
「ぬぅ? これはどう言う状況ですかな? 主様」
【コールマン】と【ダークブルー】が【マッドジャック】の目の前で止まっている様に、後方の面子が通信を入れながら寄ってきた。
『ピース』が全て止まった事で後ろの処理が必要無くなったか。丁度いいぜ。ブレインチルドレンの様子を四人にも見て貰って、現実的な多数決を取ろう。
少なくともクロエは賛同してくれるだろう。すると、マスターが告げる。
「ロー、貴方の考えは正しいわ。きっと将来的には多くを救う結果となる選択ね。でもね」
あ、このパターンは……
「それはソレしか選択肢が無かった場合の話よ(キラン★)」
「……マジでヤバいことを考えません?」
「不可能では無いと思うの。私の『叡智』とボルックの『ケミカルフィーバー』があれば――」
“愚かな……ゴミ共が……”
その時、空間に声が響いた。総員、沈黙する【マッドジャック】に注視する。これは……タンワの野郎だな。
『パースロイド』に対する通信として飛んできたモノではなく、魔法で空間に響かせて伝えるモノを近い。
しかし、これは魔法じゃない。
「わ……なんか声が聞こえる……」
「今のって、【マッドジャック】に乗ってる、タンワってヤツの声?」
「面妖な物の怪よ」(ドン!)
「おい悪あがきは止めろよ、テメー。今その鉄屑を丁度いい棺桶にする相談をしてるんだ」
「皆、ちょっと良いかしら?」
「どうしたの? クロエ」
「父さん」
『トリィ、何か感じたか?』
なんか、クロエとトリエル中尉(エスパーの面子)がざわついてるな。
“貴様らに……この『エンダー』に選ばれた私を止める事など出来はしない!!”
と、ヤツが叫ぶと同時に【マッドジャック】の側面が分離。自分から崩壊した? そんなギミックは無かったと思うが……
するようにゆっくり動くように持ち上がり始めて――
「おおい!? おいおいおい?!」
分離した一部が“巨大な腕”に変化すると、オレたちを叩き潰すように振り下ろしてきた。
「皆! 避けて!」
マスターの指示に驚愕による停止から全員が一斉に動く。
まるで戦艦が振ってきたかのような質量による振り下ろしであったが、幸いにも振りが遅かった事もあり全員無事に回避。
だが、振り下ろされた“巨腕”からバラける破片が遅れてオレらを襲う。
「マスター、なにこれ?! 何が起こってんのさ?!」
他は各々で破片を防御しながら大きなモノは回避してやり過ごす。
【コールマン】は損傷から機動性能がかなり落ちているが、かわしきれない破片はマスターが防護魔法陣を展開して弾いてくれた。
【マッドジャック】が変形するなんて聞いてねぇぞ?! マスターも不可解と見たのか『極性魔法陣』にて再び【マッドジャック】をスキャンするも――
No data……
「これは……」
マスターでも理解出来ないモノに【マッドジャック】が変貌したのか?
『『ケミカルバリア』です』
全機が破片まで完全にかわし切った所で【ダークブルー】が通信を入れてくる。
「バリア?」
『『ケミカルフィーバー』の応用です。【マッドジャック】は表層に『ケミカルウェーブ』を纏っている状態であります。故にあらゆる索敵及び、エネルギー兵器は無効となっているでしょう』
「おいおい、お前を解放したらヤツは『ケミカルフィーバー』を使えないんじゃなかったのか?!」
「……ボルック、まさか」
『その“まさか”です。ゼウス殿』
「頼むから二人だけで話を完結させないでくれ……」
この不可解な状況の答えを見つけているのなら、リアタイで共有してくれ……
『恐らく【ダークブルー】が【マッドジャック】に拘束されている時にもう一つの“わたし”が構築された』
「それは……つまり……ボルックさんと父さんに分かれたみたいに、第三の【ダークブルー】が【マッドジャック】の中に居るってこと?」
『その解釈で間違いない、トリィ』
冗談だろ……
「恐らく、極限状態の中で残されたプログラムを最適化した結果、分かれたのね。でも【ダークブルー】から分かれたのなら、何故【マッドジャック】を止めないのかしら?」
味方ならこっちを攻撃してくる理由はないよなぁ。
『仮説ですが、“第三の自分”は意思の疎通さえも不明瞭な【ダークブルー】から分かれました。故に状況を把握するマトリクスは組み上げられ無かった可能性が高いでしょう』
「それじゃ、タンワに従う都合の良い『ケミカルフィーバー』ってことか?」
『いや、恐らくはそうではない』
すると、【マッドジャック】が更に形態を変え始めた。
無骨な動きでもう片腕が形成される、その巨腕は近くのエネルギータンクを掴むと……巨腕を通してエネルギーを本体に供給直する様に光が流れていく。
すると、次の瞬間、警告音。
『メガカノン』チャージ率……100%――って表記がモニターに出てやがる!
「皆! 【コールマン】と【ダークブルー】の後ろに! ロー、機体を前に! ボルック! 合わせて!」
『トリィ、ワタシは『ケミカルフィーバー』の制御に集中する。姿勢制御を頼む』
「わかった」
【コールマン】が魔力に覆われ始め、【ダークブルー】もフェイスの一部を解放し赤い粒子が装甲の間から漂い出す。
『メガカノン』の砲口の前へ。後ろには【ソルジャー】の面子と生存者多数。止めなきゃ、誰も生き残れん。
「既にエネルギーの分析は終えているわ」
次の瞬間、カッ! と画面を直視できない程の光とエネルギー――『メガカノン』が至近距離で放たれた。
その瞬間、マスターの防御が展開される。
「『天空三門陣』!」
【コールマン】と【ダークブルー】は共に手の平を前に突き出す。
可能な限りの魔力を注いで形成されるマスターの『天空三門陣』はガリアの爺さんに迫る防御力として展開。
一門目でさえ、『七界剣』並みの攻撃力が無ければ突破することは不可能な程の強度を誇るのだが――
「っ!」
『メガカノン』の威力に数秒耐えるも破られた。二門目にぶつかり何とか抑えているが、【マッドジャック】は常にエネルギーを供給している事もあり、勢いが衰える気配が無い。
しかし、向こうが減らなくてもこっちから減らせる。
『フィーバー』
同時にボルックが『メガカノン』のエネルギーを水へと変える。その変換速度は照射量と拮抗しているが、二門目で耐えられそうだ。その時、再度警告が鳴った。
『メガカノン』チャージ率200%――
「ちょっ――」
「くぅ……」
照射の太さが倍になりやがった! 処理できる量を軽々と越え、二門目を貫くと三門目で何とか受け止める。しかし、受け止めて即座にヒビが入った。
見ると、【マッドジャック】もエネルギーを通している箇所が一部溶解を始めている様子が見て取れる。
本来は備わっていないモノを無理やり吐き出してやがるか! 明らかなオーバーパワーに処理が過多になってるじゃねぇか!
「サリア! 奴とエネルギータンクを繋いでる腕を狙え!」
「無理よ! 散るエネルギーが多すぎて、弾は通らない上に光で何も見えない! それに弾丸でどうにか出来るサイズじゃないわ!」
【マッドジャック】の腕部はこちらの機体をハエの様に叩き潰す程に巨大だ。しかし、本来は無いモノを無理やり造ってエネルギーを過剰に通しているのなら、僅かな綻びで一気に崩れるハズだ。
「スメラギの『白炎』を弾丸に付与して撃ち込め! スメラギ、弾丸を保護しつつ、『白炎』で【マッドジャック】の腕を燃やせるか?! 亀裂を入れれば勝手に崩壊する!」
「応!」
「クロエ! お前がサリアの眼になれ! お前は“見えてる”だろ?!」
「ええ。サリア、口頭になるけれど当てられる?」
「ある程度は勘で補正するわ! クロウ、機体を寄せて! 射角を固定するから肩を貸しなさい!」
「合点承知です!」
その時『メガカノン』の勢いに【コールマン】と【ダークブルー】が押される。マズイ……これ以上後退するとサリアの射角が取れない。
こっちはマスターとボルックが全力で『メガカノン』を止めている以上、オレが何とかしないと……
“無駄ァ! コレが選ばれし者に与えられし力! もはや……私に必要なモノは全て揃ったぁ! 貴様ら羽虫如きにぃ! この私の【マッドジャック】は止められん!!”
他人の褌で相撲を取ってるクセに偉そうな野郎だ。
「ロー、手が空いてるならお話してみたら?」
と、『メガカノン』の防御に集中しながらでもマスターが提案してくる。
「上から目線の人ほど、自分がマヌケって気づいていないわ」
「マヌケって……」
暴言とは無縁なマスターがそんな言葉を引用するって事は……先輩眷属の方々の知恵か?
いや……待てよ……【マッドジャック】はタンワの感情と同調してるなら――
「おい、タンワさんよ。お前の負けだ」
“なぁにぃ?!”
オレがそう告げるとヤツは反応した。こちらからの声は聞こえてる。どう言う原理かは知らないが……こっちの悲鳴でも聞きたいのだろう。
それを逆に利用してみるか――
「ここまで盤石に事を進めておいて、結局は全部ひっくり返されかけてる。まるで道化だぜ」
“ふん! その道化に貴様らは羽虫の様に叩き潰されている最中だろう! 黙って消えろ!”
「オレたちを羽虫と言うお前は滑稽の極みだぞ?」
“なぁにぃ?!”
「普通なら羽虫の処理なんざ片手間で行うモンだ。それを、あれあれ? わざわざ最大火力をぶつけてるのにまだ潰れてないなぁ?」
“黙れ! 所詮は――”
「おっと、“羽虫”から“愚者”にグレードアップしてくれるのか? 人間認定に戻れてありがてぇよ、涙が出る」
“貴さ――”
「黙って聞きなさい! この愚か者! オレが喋ってるでしょうが! 相手の言葉を遮ったらいけないって、先生に教わらなかったの?!」
“なっ……き、き……誰を……愚か者……だ……”
「遊びで始めたんじゃないだろ!? だったら最後まで人の話を聞きなさい!」
“ふ……ふふ……ふざけるな! ふざけるなよぉぉぉ!!”
「大きな声を……上げなさんな!! メェメェうるせぇんだよ!!」
“き、きさ……て、テメェ……こ、コロっ……コロ――”
その時、受け止めてる『メガカノン』の出力が弱まった。
こんな安くて短絡的な挑発で優位な状況を崩してくれるとはなぁ。タンワは精神的にもマトモじゃない。元からだろうけど。
しかし、次の瞬間、【マッドジャック】の表層に無数の砲撃口が造り出され、光が灯り始めた。
“この野郎ォォ! ぶっ殺してやるぅぅぅ!!!”
砲門を増やしやがったか。だが、結局の所、エネルギーの供給は――
「当てたわ! スメラギ!」
「承知!」
エネルギータンクを掴んでる巨腕が『白炎』によって燃え上がる。ボッと、簡単に点火された程度だが、流れていたエネルギーが漏れ出すと綻びは大きくなって行き巨腕を大きく分断していく。
すると、【マッドジャック】に流れるエネルギーが途切れる様に消えた。当然、『メガカノン』の照射も停止する。
「はい、残念〜」
“ぬがぁぁぁ!! おのれぇぇ!!”
メキメキと【マッドジャック】が更に形態を変換。巨体から直接的、管のようにパーツを周囲のエネルギータンクに伸び始めた。
「主様、申し訳ありませぬ。本体を『白炎』で覆うには魔力足りず……」
「いいえ十分よ。みんな、助かったわ」
奴のエネルギーチャージを阻止するには……と考えているとエネルギータンクを掴む巨腕が再度結合する様に破片が集まり再構築が始まる。
クソ、マジで何でもアリだな。それに比べてこっちは消耗する一方なのによ!
機体の状況を見るに、【コールマン】はまともに戦えない。他のメンバーも手持ちの武装じゃ【マッドジャック】へのダメージは期待できない。
「マスター、そろそろ【コールマン】も限界ですよ。マジで搦め手の一つでも打たないと、こっちが先にガス欠します」
オレは【コールマン】のエネルギーと機体能力が戦闘機動を行うには限界である事を表示する。
「分かってるわ。ロー、気づかない?」
「何に?」
「『ピース』と『テンタクル』が全く動いてないわ」
そう言えば……『メガカノン』を耐えている時も【マッドジャック】本来の武装は全く動かなかった。それどころか、動く気配も感じない。
「……“子供たち”がタンワに怯えている」
トリエル中尉がエスパーの感応で何か感じ取ったらしい。
「って事は……【マッドジャック】内で意見の相違が起こってるのか?」
『元々、タンワは優しい顔を見せて“子供たち”を唆したのだろう。子は親を求め、親はそれに答えて愛を教える。しかし、ソレが“嘘”だった場合、愛は恐怖に変わる』
「……父さん。“子供たち”は助けられる?」
『ああ。私が【マッドジャック】を説得しよう』
「出来るの?」
『『ケミカルバリア』を展開している以上、内部に干渉出来るのは私だけです』
「拗れたらどうするんだ?」
『“わたし”を理解し、こちらの理解を求める。そうする事で争う必要はないと判断してくれるハズだ』
「ちょっと! プランは決まったの?! 早く何とかしないとマズイわよ!」
サリア達が寄ってくる。現状は話す時間も貴重な状況だ。ボルック無しの戦線、尚且つボロボロの【コールマン】と【ソルジャー】達でどこまで行けるか……
「周りを護りつつ、自分たちも生き残って、ボルックが説得するまで【マッドジャック】の火力に耐える。それがプランよ」
マスターがまとめてくれたが……普通に無理難題である。ていうか出来るのか? せめて、オレたちは自分の身は自分で護れるくらい――
『ケミカルクリエイション』
と、【ダークブルー】がこちらに手を翳しつつ、ボルックが何か発動した。
【ダークブルー】が【コールマン】と【ソルジャー】達をモニターに捉えると分析を行い『ケミカルクリエイション』を発動した。
すると、周囲に漂う破片が材料となり【コールマン】は失っていた左脚部と右腕が再生。
【ソルジャー】達も各々の技量が最大限に発揮出来るように機体の適正化が行われた。
【ソルジャー】(サリア機)には装甲の増設と無数の姿勢制御スラスターが追加され、他機に頼らずとも静止性能が上がり、『ロングライフル』が『高出力ライフル』へと形を変える。
【ソルジャー】(クロウ、クロエ機)には、三次元移動をより的確に行う為に『機動翼』が増設され、周囲に浮かぶ『ピース』は一つの形態に統一。出力と外部のエレメントも認識できるように感応性能が引き上げられた。
【ソルジャー】(スメラギ機)は、『白炎』を直接纏える『マント』がマフラーの様に口元から機体の半身を隠すように現れ、機動力を向上させる。
「わっ?! なんですか?!」
「コレは……」
「なんか……画面が滅茶苦茶見えやすくなったんだけど……」
「摩訶不思議な術よ!」
『各々機体を君たちに合わせて最適化した。ローハン殿――』
と、ボルックは近くの破片を投げると【コールマン】は再生した右腕部でキャッチ。すると、次の瞬間、変化すると機体と同じ長さの片刃の直剣に変化する。
「うお?! なんだこりゃ?」
『君を認めてる剣――『霊剣ガラット』の特性を直接付与できる『魔法機剣』だ。ボルックとして君たちと共に合った事で創り出す事が可能になった』
「……今のお前さ、『七界剣』創れる?」
『不可能ではない』
その時、【マッドジャック】が動く。
最初に振り下ろした巨腕が分解する様にバラけ、いつの間にか『星の探索者』を手の平で握り潰す様に閉じられた。
“死ね! 羽虫共!”
タンワの声が響き、戦艦さえも握り潰すサイズで『星の探索者』は押し潰される……
「なるほど」
事はなく、数多の“水”が握り込みに抵抗するように膜を張り『星の探索者』を覆っていた。
「ボルック、コレは良いわね。周囲の水分をよく感じられるわ」
『クロエ殿、君は『水魔法』の扱いにも長けていると聞いていたのでな』
クロエによる“水操”。
『メガカノン』のエネルギーを変換した水分が周囲に大量に残っており、ソレをクロエは『ピース』を通して知覚。魔法として行使しているのだ。
『命名するのならば、『ピース・ウォーター』と言ったところか』
すると、握り込む手の平に無数の砲口が出現する。潰せないのならばそのまま、撃ち殺すと言った意志が伝わってくる。
「まぁ、それを許すほど――」
「我らは愚鈍ではない!」
『高出力ライフル』の火砲により、手の平を貫くとその直線上にあった手首部分を撃ち抜いた。
本体からのエネルギー供給が止まり、手の平が崩れる中、『白炎』による火柱にて各機は外へ脱出する。
“バカが!”
飛び出した瞬間、80%チャージの『メガカノン』の光が『星の探索者』を包み――
「アホが!」
【コールマン】が振り抜いた『魔法機剣』による、遠近法を無視した斬撃により、【マッドジャック】の『メガカノン』は照射もろとも両断された。
「お? 『ケミカルバリア』を貫通したな」
『『バリア』事態は斬られていない。『霊剣ガラット』の攻撃定義が規格外なのだろう』
“ぬがぁぁ??! おのれぇぇ……”
両断された『メガカノン』はパキパキと修復されていくも、タンワの声は直接ダメージを受けた様に感じられる。
「なんか、タンワの野郎、痛がってね?」
『より反応的に【マッドジャック】を機能させる為に同調を深めているのだろう』
「って事は、刻めば刻むだけ、ヤツは転げ回るのかー」
“羽虫共が!”
【マッドジャック】は表面に数百の火砲を造り出すと一斉に砲撃を行う。
「クロエ、サリア、クロウ、スメラギはエネルギータンクと【マッドジャック】の接続を阻止して! 私とロー、ボルック、トリエル中尉は【マッドジャック】のコックピットを本体から切離すわ!」
「わかりました」
「とにかく、撃たせないってことね」
「合点承知です!」
「主様よりの命……しかとこの心に刻み申した!」(クワッ!)
『ピース・ウォーター』による防御で僚機をカバーしながら【ソルジャー】三機は【マッドジャック】の上部へ移動を開始。
「ロー」
「わかってますよ。オレはヤツを刻めば良いんですよね?」
「コックピットは避けるのよ? それ以外は……思いっきりお仕置きしてあげて」
「うぃーす」
【マッドジャック】の正面を残る【コールマン】は肩に『魔法機剣』を担ぎつつ『雷法師』にて火砲を躱し、【ダークブルー】は自身を『ケミカルバリア』にて自機を覆うと攻撃を無力化させる。
『トリィ、【マッドジャック】への接続後は――』
「絶対に生きて一緒に帰るよ。父さんと話したい事が沢山あるから」
各々が持つ“たった一つの望み”を巡る戦いが……間もなく終わる。




