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禁弾銃機のバレットショット  作者: 咲本 星
一章
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4話「平和な日常」

 「はぁ〜...」


 翌日。学校に着いてすぐ、自分の机で夏楽はだらけきっていた。

 あの後、両親には既に連絡が入っていたのか心配はされたが特に怒られる事はなく、疲れからすぐに自室で寝てしまった。朝起きると、昨日のことが嘘の様な感覚がしたが牧人が家に居ないのを思い出し、現実なのを改めて実感した。


 「なつなつー!どったの?」

 「なっちゃん、悩み事?」

 「優香、ずみちゃん...」

 

 二人の声で顔を上げた夏楽。

 小さい背丈に元気一杯な少女、斉藤優香(さいとうゆうか)

 落ち着いた雰囲気を纏い少し大きめな眼鏡を掛けている水口静海(みずぐちしずみ)

 そんな二人を見て、昨日の事を話したいのに話せないジレンマにモヤモヤしてしまう。


 「まぁ、元気出せよ!なつなつが元気ないと、私まで元気がなくなるぞ!」

 「優香....」

 「そうだよなっちゃん。どんなに辛いことがあったって、私たちは側に居るよ!」

 「ずみちゃん...」


 二人が友達でよかった、そう心から思った夏楽は二人を抱き寄せた。


 「ありがとう二人とも」

 「良いってことよ!」

 「よしよし」


 静海に頭を撫でられながら暫くそのままでいると、不思議と元気が出てきた。

 

 「よし!元気出てきた!」

 「にしし、やっといつも通りになったな」

 「ふふっ」


 良いところでチャイムが鳴り、授業が始まった。今日はなんだかいつもより元気があるせいか、午前中は一度も寝落ちする事なくお昼休みになった。

 お昼休みに入るといつも通りに三人で机をくっ付けご飯を食べる。


 「そういえば」

 「ん?」

 「どうしたの、優ちゃん?」


 ナイスな棒を食べながら、何かを思い出したかの様に携帯を出すと、2人に見えるように机の真ん中に置いた。そこには都市伝説に関する掲示板があった。


 「ちょっと、面白い話があってさ。ここなんだけど」


 そう言うと、機導銃に関する都市伝説が語られているスレを開き、スクロールをする。すると、ココ、と一つのコメントを指差していた。


 「えっと、なになに『何で機導銃にアラビア数字が使われないか知ってるか?』って、何これ?」

 「まぁ、良いから良いから。続き読んでみ」

 「『それはな、100年前にあった日本の大事件。それに関与してる機導銃に彫刻されていたかららしい』」


 夏楽は思い出していた、昨日の事を。


 「『それを呪われた数字とした各国のお偉いさん方が、機導銃にアラビア数字を使うのをダメにしたらしい』」


 あの機導銃が、良くないものである事を。


 「確かに、機導銃って漢数字かローマ数字しか使われて無いね」

 「だろ?そんでさ、その大事件に関わってる機導銃って、インディットナンバーズって言うらしいんだ」

 「...⁉︎」


 優香の口から出た言葉に反応する夏楽。柳瀬からはネットの一部では知られているとの事だったが、親しい友人からその言葉を耳にするとは思ってもみなかった。


 「なつなつ、どったの?」

 「あ、ううん!何でも無いよ!」

 「そっか?」


 そのままこの話題は終わり、今度は駅前にあるクレープ屋がセールをするので一緒に行こうと言う話になった。だが夏楽は、どこか話に集中できなくなっていた。


 学校も終わり、牧人のお見舞いに行こうと病院へ向かう。

 優香と静海の二人は、それぞれバイトと部活で今日は暇になってしまったからだ。バスに揺られる事30分。牧人が入院している防衛省管轄の大学病院に着いた。

 

 「えっと、ここかな?」


 受付で病室を聞き、特に迷う事なく着くと中から話し声が聞こえた。聞き覚えのある声に、誰が来ているかすぐに分かり中に入る。


 「あら、夏楽ちゃん。こんにちは」

 「沙耶さんこんにちは」


 そこに居たのは牧人の彼女であり、幼馴染の結城沙耶(ゆうきさや)であった。牧人も、ひとつ年上である彼女には逆らえないようで、よく尻に敷かれているのを見ている。


 「牧兄、ケガの具合はどうなの?」

 「明日退院。これも、1週間もあれば治るってさ。いやー、最近の医療はすごいな。うん」

 「もう、何バカ言ってんの。そもそも、何でそんな怪我したのよ」

 「あはは....いやー、理由は言えなくて...ゴメン」

 「全く、今朝美玲さんから連絡貰って、どれだけ心配だったか...」

 「ゴメンゴメン。でも、大丈夫だから。心配してくれてありがとな。治ったらデートでも行こう。な?」

 「牧人....」

 「あのー、二人でイチャイチャするのは私が居ない時にお願いします」

 「あ、いやー...」

 「ご、ごめんね夏楽ちゃん!」

 「いえ、別に慣れてるんでいいですけど」


 相変わらずの二人の仲良しっぷりに当てられながらもう帰ろうと席を立つ。


 「じゃあ、私は帰ります」

 「お見舞い、ありがとな夏楽」

 「あ、じゃあ私も一緒に帰るよ」

 「いえ、沙耶さんは牧兄と一緒に居てください」

 「えぇ...」

 「さっきの続きでもして下さい。それでは私はこれで」

 

 邪魔者はさっさと去ろう。粋な計らいをしたと自画自賛をし、帰ってテレビでも見ようと思っていた。そう、あの時までは。


ーーーーーーーー


 「申し訳ございません!」


 リビングに響く謝罪の声。

 床に正座をし、頭は地面に。礼の動作は滑らかに。

 こんな綺麗な土下座、初めて見た。


 事の発端は夏楽が家に帰って十分もしないぐらいの時間。家のチャイムが鳴った。


 「はーい」


 リビングでお茶を飲んでいた母美玲(みれい)は、チャイムに反応して玄関へと向かう。テレビの前のソファで夕刊を読んでいた父一樹(かずき)はコーヒーを一口飲む。


 「どちら様でしょうか?」


 玄関を開けた美玲は、そこに昨日娘を送ってくれた相手と、眼鏡をかけた男性が立っていた。


 「あなたは...」

 「昨日は碌にご挨拶もせず申し訳ございません。私、防衛省機導銃専門対策本部副本部長、志原紫(しはらゆかり)と申します」

 「ご丁寧にどうも。あの、そちらの方は...」

 「いきなりの訪問、大変失礼。私、防衛省機導銃専門対策本部本部長、木ノ下透と申します」

 「まあまあ、そんなに偉い方が。良ければ中へどうぞ」

 「ありがとうございます。志原例の物を」

 「はい。こちら、つまらない物ですが」

 「これは、松洋製菓店の1日10個限定の焼き菓子詰め合わせ!」

 「良ければご家族で召し上がって下さい」

 「ありがとうございます。夏楽ー、降りてらっしゃーい!」

 「なにー、ママー?」

 「昨日の人が来てるわよー」

 「えっ?」


 制服から私服に着替え、少しのんびりしていた夏楽は母親の言葉にリビングへと向かう。そこにはいつも食卓を囲んでいるテーブルに座る志原と木ノ下がいた。


 「夏楽夏楽、あの人達良い人ね!これ貰っちゃった!」

 「こ、これ開店1時間前に並んでようやく買えると言われる松洋製菓店の1日10個限定の焼き菓子詰め合わせ!しかもこれ、土日限定のスコーン入りだ!木ノ下さん、志原さん、ありがとうございます!」

 「気にしないでくれ。突然の訪問、手土産ぐらいは持っていかねば」

 「そうよ。それに、持って行くなら喜んでもらえる物の方が良いでしょ」

 「やった!」


 上機嫌で何を食べるか物色する夏楽。

 美玲が五人分のお茶を出すと、先に座っていた一樹が口を開いた。


 「えっと、あなた方はどちら様で?」

 「失礼。私、防衛省機導銃専門対策本部本部長、木ノ下透と申します」

 「私は、防衛省機導銃専門対策本部副本部長、志原紫と申します」

 「防衛省と言うと昨日連絡のあった...」

 「はい。その度は私共の落ち度でこちらのお子さんたちを巻き込んでしまった事への謝罪へと参りました」

 「い、いえいえ、子供たちも無事に帰って来たとこですし」

 「でも牧兄入院してるよ?」

 「お前は黙ってなさい!....と、兎に角、謝罪は必要ありませんので!」

 「そう言うわけにはございません!私共がキチンとしていれば....!」

 「いえいえ!」


 圧倒的立場が上の人からの言葉に緊張を隠せない父を見て、他人事の様にフィナンシェを食べる夏楽。

 こんな一樹を見て、母美玲が口を挟んだ。


 「木ノ下さん」

 「はい」

 「確かに、子供達が巻き込まれた事に腹は立てています。それも、そちらのミスが原因で息子の牧人が入院する始末」

 「み、美玲?」

 「夏楽まで巻き込まれて、この子がどれだけ怖い思いをしたか...」

 「ママ....」

 「でも、私はホっとしたんです。二人とも生きて帰ってきてくれて。二人を助けていただき、ありがとうございます」

 「美玲...」

 「ママ...」

 「ですが、それとコレとは話が別です。謝罪?ならそれ相応の態度があるでしょう」

 「美玲⁉︎」

 「ママ⁉︎」

 「成る程。確かにそうですね」


 木ノ下はそう言うと席を立ち、早里家の三人に見える様に床に座った。


 「この度のミス、お子さんを巻き込み怪我を負わせてしまった事、本当に申し訳ございませんでした!」


 そして冒頭の土下座に戻って来る。

 暫く土下座を続けていたが、美玲の一言で顔を上げた。


 「もう大丈夫です。頭を上げて下さい」

 「ですが!」

 「良いんです。さ、お茶が冷めちゃいましたね。新しいの淹れなくちゃ」

 「良いお母さんね」

 「えへへ、ありがとうございます」


 改めて母の強さを感じた夏楽は、美玲を手伝いに台所へ向かった。

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