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禁弾銃機のバレットショット  作者: 咲本 星
二章
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16話「脱獄と招待」

 特別収容場C区画。

 凶悪な犯罪者や密売人、テロリストなどが収容されている一際最悪なこの場所を、一人の女性が歩いていた。


 「はぁ、何で私がこんな....」


 夜が更けるこの時間。深夜手当がキチンと出るのかと、お門違いな心配をしながらインカムでもう一人の仲間に通信を入れる。


 『はいはい、どうしました?』

 「道はこっちであってる?」

 『大丈夫ですよ。あ、その階段上がってください』

 「了解」


 早く終わらせて家に帰ろう。そんな事を思いながら教えられた道を進んでいくと、752と書かれた扉の前で止まった。

 機導銃で扉を破壊し、残骸を退けて無理矢理こじ開ける。


 「おや、あなたはどちら様で?」


 そこには本を読んでいる男が一人。顔を上げる事なく視線は本に向いたままだが、こちらの事はキチンと認識している様だ。早く仕事を終わらそうと男の前に立つ。


 「あなたを連れ出しにきました」

 「私を?一体誰の命令で?」

 「付いて来ればわかります。あなたを連れて来いと指示を受けたので、拒否するなら無理矢理にでも連れて行きますが」

 「おやおや、ずいぶん物騒な」


 そう言いながら男は本を閉じ立ち上がる。服についた埃を払いながら目の前の女性に笑顔を見せる。

 そんな男の様子に顔を歪めながら、嫌悪感を隠しもせず腰のホルダーから一丁の機導銃を手渡す。


 「それと、その口調をやめて下さい。気持ち悪いです」

 「おっと失礼。まさか素の方がいいとは、これは失礼を。初対面の方にはいつもこの喋り方ですので」

 「まあ良いです。それより早く行きますよ、余りモタモタしていると他の人に気付かれますので」

 「道案内はお任せしますよ」


 女から機導銃を受け取り、久しぶりの感触を確かめる様に何度か握る。床にお置いてある本の向かってトリガーを引き、かつての感覚を取り戻す。


 「それでは行きましょう」

 「こちらについて来て下さい」


 二人は女性が来た道を辿り、誰にも会う事はなく建物の外まで出てきた。外へ出ると、一人の少女が眼鏡で遊びながらつまらなそうに立っていた。


 「戻りました」

 「お帰りなさい。その人が目標ですか?」

 「ええ」

 「どうも初めまして。私ーー」

 「ああ、自己紹介は結構です。それよりさっさと行きましょう。あの人も待ちくたびれてますよ」

 「そうですね、私も早く帰りたいので」

 「ふむ、いったいどこに向かうのでしょうか」

 「.....」

 「何か?」

 「なんて言うか、その話し方胡散臭いですね」

 「おや、そちらの女性にも同じような事を言われましたよ」

 「素のあなたは気持ち悪いですけど」

 「これは手厳しい」

 「まあ良いです。さ、改めて行きましょうか。こんな臭いところ、サッサとおさらばしたいです」

 「それは私も同意です」

 「私はこの匂い、結構好きなんですがね」

 「なるほど、ただの変態でしたか」

 「もはや連れて行くのも嫌になって来ました」

 「後であの人に文句を言ってやりましょう」

 「それは賛成です」

 「おやおや、女性は難しいですね」


 3人で施設の外に止めてある車に乗り込むと、闇夜の道を走り去っていった。


 大量の死体を残して。


 特に車の中での会話もなく、そのまま走り続ける事一時間。何の変哲もない雑居ビルの前に止まった。車を近くの駐車場に停め、ビルの中へと入っていく。4階で降りるとKLY株式会社と書かれているドアを開け、中へと入っていった。


 「カモフラージュ用の事務所ですか」

 「ええ、よくご存知で」

 「私も職業柄、色々やっておりましたから」

 「そうですか、興味は無いので。それでは私たちはこれで。そこの奥の扉に入ってくれれば良いので」

 「案内、ご苦労様です」

 「そう言うのは良いです。行きましょう」

 「はい」


 2人が事務所を出ると、男は言われた通り奥の扉を開ける。中は明るく、雰囲気的には社長室と言ったところだろうか。

 男は、目の前に座っている仮面にどう対処しようかと頭を悩ませ始めた。


ーーーーーーーー


 「あーあ、大丈夫ですかね」

 「何が?」


 先程とは打って変わって、砕けた口調で話す2人は帰り道のコンビニで車を停め、カフェオレを飲みながらのんびりとしていた。


 「あの男、仲間に入れる気なんですよね?」

 「仲間って言うか、雇うとは言っていたわね」

 「でも、一緒に仕事するって事じゃないですか。私ヤダな、あの人」

 「私だって嫌よ。でも、あの人の決める事だから何らかの意図はあるんでしょ」

 「どうせ何も考えてないですって。使えそうだから入れた、なんて事かも知れませんよ」

 「あり得るわね」

 「でしょ?もし仕事組まされたら、あのお面ぶっ壊してやりますよ」

 「辞めなさい、あの人泣いちゃうから」

 「何個もお面持ってるから、一つぐらい良いと思いません?」

 「ダメよ。あの人、自分のお面一つ一つに名前つけるぐらい大切にしてるんだから」

 「え、マジですか?」

 「マジよ」

 「キモいですね」

 「キモいのよ」


 自分達の上司の愚痴で盛り上がりつつ、カフェオレを飲み終えると再び出発しようと車を発進させる。


 「てか、もう夜中の2時じゃないですか」

 「あら、ホント」

 「真奈(まな)さんの家ってここから近かったですよね?もう真奈さんの家に泊めて下さい。今更自分の家に帰るとか時間がかかって嫌なんで」

 「良いけど、明日学校じゃないの?」

 「別にサボっても、誰も何にも言わないんで良いですよ」

 「そう。ならこのまま向かうわね」

 「はい、お願いします」


ーーーーーーーー


 男が仮面に対し、どうしようかと考えていると、向こうから声が掛けられた。


 「やあ、来てくれてどうも」


 声は若い青年のような感じで、仮面をしているところ以外には特に怪しいところはない。何かあった時の為に腰のホルスターに手を添えながら会話を続ける事にした。


 「此方こそ、助けていただき感謝しますよ」

 「礼には及ばないよ。さて、ここに君を連れて来てもらった訳だけど、少々仕事を手伝ってもらいたくてね」

 「ほう、それはどの様な内容で?」

 「インディットナンバーズの回収って言いたい所だけど、今回は少し違うかな」

 「今回、と言うことは長い付き合いになるので?」

 「まあ、そう捉えて来れて構わないよ。それで、今回の内容は、この子にちょっかいを出してもらいたくてね」


 胸ポケットから一枚の写真を出し、男に見せる。男はその写真を見ると、ニタリと気味の悪い笑みで顔を歪ませる。


 「ちょっかいとは、どこまでやっても?」

 「そこは任せるよ。ああそうだ、今回殺しは無しで」

 「.....何故です」

 「まだ時期尚早だからだよ。然るべきタイミングはもっと後なんだ」

 「成る程。依頼了承しました。して、今回の報酬は?」

 「脱獄させてあげたんだから、その貸しとチャラで。次回からはきちんと用意するよ」

 「ありがとうございます。決行のタイミングは如何程に」

 「1週間後。君にも準備が要るだろうからね。後、これも渡しておこうかな」


 仮面から鍵と地図が渡される。見る限り古いタイプのモノのようで、電子ロックが主流の今の時代に珍しい物だと感じた。


 「ここから五分程歩いた所にある隠れ家的な所さ。そこを拠点にしてもらって構わないから、自由に使ってよ。あ、お金は隠れ家にあるから」

 「何から何までありがとうございます」

 「気にしないで、君に利用価値がある限り此方もそれなりのものは用意するさ」

 「これは怖い。では、私はこれで」

 「そうそう、一つ言い忘れてた」

 「何でしょう」

 「僕の事はボスか名無しって呼んでね。本当の名前は教えられないんだ」

 「畏まりました、ボス」

 「うん、それじゃあ」

 「ええ、失礼します」


 男が部屋を出ると、仮面がその素顔を露わにする。


 「ふーっ、やっぱり暑いや。それにしても、胡散臭い顔してたな」


 新たな戦力として招き入れた男、一ノ瀬真(いちのせまこと)。想像以上に怪しい雰囲気をしていたが、働いてさえくれれば問題はない。

 一ノ瀬が動いた時、何が起きるかを楽しみにしながら今か今かと心躍らせる。


 「待っててね、君はこれからなんだから」

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