第六話 おやじ
最近、名前を知らない転生少女から声を掛けられる事が増えた。
さっきもコンビニの帰り道で「ブルマの人ですよね?お陰様でうちの寮が勝てました。ありがとうございます」と礼を言われた。
球技大会に優勝すると慰安旅行や欲しい施設の要望を出す権利がもらえるらしい。
慕われてはいるようだけど、ブルマの人ってなんだよ…四天王達の気持ちが少しわかる気がする。
噂だけ伝言ゲーム化して、やよいさんにブルマを履かせた鬼畜みたいに思われ無いと良いのだが。
居間で昼飯を待っていたらスマホの着信音が鳴った。親父からの電話だ。
「もしもし、親父?」
「ショウか?少し時間良いか?」
親父が家に来るらしい。母親とは偶に連絡を取るのだが、親父が突然何の用だろう?正直、今の暮らしを邪魔されたくない。色々と考えていたらインターホンが鳴った。
玄関のドアを開くと「こんにちは、ショウ」やよいさんだった。
「こんにちは、やよいさん、あの、今日は」やよいさんは俺の言葉を待たずに台所へ行きお茶の用意を始めた。
とりあえず帰ってもらわないと、親父とやよいさんが鉢合わせしてしまう。
程なくしてインターホンがまた鳴った。
俺はやよいさんを下からすくい上げるように抱き上げて、一階の書斎へ走った。
書斎の押し入れを開けて中にやよいさんを置く。
「すみません、暫くここでじっとしていてください」押し入れを閉じて玄関へ向かう。
「親父、久しぶり」
「ああ、元気にやっていそうだな」親父を居間の席へ案内する。
「今日はこれを渡しに来た」親父が手にしていた袋の中身を取り出した。
テーブルに置かれたのはデスクトップパソコンだった。
「最近の若者は何でもスマホで済ませてしまうらしいが、元々ここにあった物なんでな」そう言えば書斎にディスプレイだけがあったな。
親父は立ち上がりパソコンを持って書斎へ向かおうとした。
「自分で設置するからいいよ」俺は引き止めたが「パソコンの設定に詳しくないだろ?まかせておけ」親父は書斎のラックにパソコンを設置した。
「確かゲーブル類は押し入れに」押入れの前で様子を見ていた俺を押し退けて、親父が押し入れを開いた。やよいさんなら気を利かせて隠れてくれるはずと期待したが、親父とやよいさんの目が合う。
「これはどういう事だ?」親父が俺を睨む。
「いや、これには訳が」この歳になっても親父はちょっと怖い。
「やよいさんは未来から来たロボットじゃないんだぞ。ちゃんと部屋を用意してあげなさい」考えてみれば、伯父とやよいさんが幼馴染なら、その弟である親父も幼馴染な訳だ。
「マサヒロ、久しぶり。ショウ、もう出ても良い?」
「はい」俺は気の抜けた返事をした。
保護区には登録済みの車しか入れない。
用を終えた親父を駐車場所まで送ることにした。親父一人だと職質される可能性があるからだ。
夏の日差しの下、少し離れて歩く俺と親父。そこに黄緑色の髪をした少女が近づいてきた。
「こんにちは、やよいさんにブルマを履かせた人ですよね?凄かったって聞いてますよー」俺が軽く挨拶をすると少女は去っていったが、こちらを見つめる親父の目が細くなる。
「ショウ。おまえ、やよいさんに」親父の語気が強くなる。
「まて、親父。ちゃんと説明をするから!」この後俺は、炎天下のなかで親父に一から十まで経緯を説明する事になった。




