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辺境交番のお巡りさん、警察手帳で迷惑チートを【凍結】する。無法な異世界をショットガンと現代法で無慈悲に裁く合法無双劇  作者: 月神世一


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違法植物メロロンの摘発。農業のおじさんをキャバクラから救え

違法植物メロロンの摘発。農業のおじさんをキャバクラから救え

「お巡りさん……っ! ウチの旦那を、あの泥棒猫(メロン)から取り返してくださいぃぃっ!」

 朝のポポロ村駐在所。

 デスクで始末書を書いていた俺の前に泣き崩れていたのは、村のベテラン農家の妻、泥沼恵(45歳)だった。

 普段は夫婦仲が良いと評判の彼女が、化粧をドロドロに崩してハンカチを噛み締めている。

「落ち着いてください、恵さん。泥棒猫……いや、メロンって?」

「ウチの旦那、ここ一週間、家に帰ってこないんです! ずっとビニールハウスに引きこもって……『あの子は俺に本気なんだ』とか『女房とは別れる』とかブツブツ言ってて! 昨日なんて、家の貯金を全額引き出して、最高級の肥料(ドンペリ)を買い込んでいったんですよぉ!」

「……なるほど。相手は『メロロン』ですね」

 俺はペンを置き、眉間を揉んだ。

 メロロン。それはポポロ村の狂った生態系を象徴する魔性植物の一つだ。

 熟すと甘い香りで周囲の者を誘惑し、思考力をふわふわにする。上位種(クイーンメロロン)ともなれば、農家のおじさんを極上の甘い声で洗脳し、己の養分として搾取し尽くすという、恐るべき生態を持っている。

「ポポロ村の条例では、クイーン種に成長する可能性のあるメロロンの栽培は、厳重な資格と『耳栓・防毒マスク』の着用が義務付けられているはずですが」

「だ、だから旦那は隠れて育ててたんです! お願いですお巡りさん、このままじゃウチは自己破産(仮面夫婦)ですぅ!」

「分かりました。被害届、受理します」

 俺は立ち上がり、ガンロッカーから魔改造M870ショットガンを取り出した。

「風俗営業法違反(無許可の接待飲食等営業)および、違法魔性植物の不法栽培。……ガサ入れ(強制捜査)の要件は十分に満たしてますね」

「あのっ、リオンさん! 私も付いて行ってもよろしいですかの!?」

 交番の隅で、お茶漬け(※俺の夜食の残り)をすすっていた芋ジャージ姿の人魚姫、リーザが勢いよく手を挙げた。

「お前は交番で留守番してろ」

「メロン! 高級メロンが現場にあるんですよね!? 私、甘いものに飢えてるんです! 捜査協力という名目で、つまみ食い……いえ、証拠品の押収をお手伝いしますわ!」

「……足手まといになったら置いてくからな」

 俺はパトロールバイクに跨り、サイドカー(仮)にリーザを押し込むと、サイレンを鳴らして泥沼家の農地へと急行した。

     * * *

 村はずれにある、黒い遮光シートで覆われた巨大なビニールハウス。

 入り口に近づくだけで、むせ返るような甘ったるい香りが漂ってくる。

「……ひどい匂いだな。リーザ、絶対にその匂いを深く吸い込むなよ。精神(SAN値)を持っていかれるぞ」

「はーい……くんくん。でも、なんだか高級な香水みたいないい匂いですわ〜」

 俺はバイクを停め、ショットガンを片手にハウスの扉を蹴り開けた。

「ポポロ村駐在所だ! 無許可でのキャバクラ営業の容疑でガサ入れに入――」

 ハウス内に踏み込んだ俺は、その異様な光景に絶句した。

 内部はなぜか怪しげなピンク色の魔導ランプで照らされており、中央のフカフカな土のベッドには、人間ほどの大きさがある巨大なメロン――『クイーンメロロン』が鎮座していた。

 豊かな果肉(?)をぽよんぽよんと揺らしながら、ツルを妖艶な手足のように動かしている。

『あぁんっ……源蔵さぁん……あなたのお水(高級肥料)、とってもおいしいわぁ……♡』

「へへへ……もっと飲んでくれよメロロンちゃん。君のためなら、俺、なんだってするからよぉ……」

 その足元で、無精髭を生やした初老の農夫――源蔵が、鼻の下を限界まで伸ばし、金貨数枚は下らない高級栄養剤(ドンペリ)をボトルごと注いでいた。

 完全にキャバクラのVIPルームである。

「おい源蔵さん。いい加減に目を覚ませ。奥さんが交番で泣いてたぞ」

「あ!? なんだお前ら! 俺とメロロンちゃんの愛の巣に土足で踏み込みやがって!」

 源蔵は血走った目で俺を睨みつける。完全に洗脳されている状態だ。

 すると、クイーンメロロンがツルを這わせ、俺の方へと顔(のような部分)を向けてきた。

『あらあらぁ……? ずいぶんとイケメンなお巡りさんねぇ。ねぇ、そんな物騒な鉄の棒(ショットガン)なんて下ろして、私と一緒に甘ぁい時間を過ごさない? あなたのお水、とっても美味しくて強そう……♡』

 極上のASMRのような、脳髄を直接撫で回すような甘い声。

 普通の男なら、一瞬で骨抜きにされるだろう魅惑の魔力。

「……チッ、安い営業トークだな」

 俺は鼻で笑い、冷たい視線をメロロンに浴びせた。

 俺の持つ【犬のお巡りさん】のスキルの一つ、『嘘を見抜く嗅覚』。

 この超感覚は、対象のフェロモンや心拍、さらには魔力の波長から、一切の嘘と悪意を科学的に看破する。

「その香水みたいな甘い匂いの裏に、キツい『胃酸(消化液)』の腐臭が混じってるぜ。お前、こいつから財産を搾り取った後、最後に身も心もドロドロに溶かして『来年の種』の養分(コンポスト)にする気満々だろうが」

『……ッ!?』

 俺の指摘に、メロロンの動きがピタリと止まる。

「げ、源蔵さんを溶かす!? ひぃぃっ! なんて恐ろしい植物なんですの!」

 背後に隠れていたリーザが悲鳴を上げた。

「な、なに言ってやがる! メロロンちゃんは純粋に俺を愛してくれてるんだ! 俺たちは一つになって、永遠の愛を誓うって――」

「源蔵さん、それは『食われる』って意味だ。あんたの命は、コイツにとってただのワンセットの指名料にすぎないんだよ」

 俺が冷酷に事実を突きつけると、クイーンメロロンの果肉がブルブルと怒りに震え始めた。

『……チッ。空気を読まないサツ(警察)は嫌いよ。こうなったら、アンタたちもまとめて私の養分にしてあげるわぁぁッ!!』

 甘い声が突然、ドスの効いた夜叉のような声に変わる。

 メロロンの表面が裂け、鋭い牙がびっしりと並んだ巨大な捕食口が現れた。無数のツルが鞭のようにしなり、俺たちに向かって襲いかかってくる。

「ヒッ!? バケモノですわーっ!」

「リーザ、下がってろ!」

 俺はM870を構え、ポンプアクションを引く。

「公務執行妨害および、殺人未遂。……実力行使に移る。麻酔弾(スタン・スラッグ)、装填」

 だが、俺が引き金を引こうとした瞬間――。

 背後にいたリーザが、凄まじい勢いで俺の前に飛び出した。

「待ってくださいリオンさん! あいつの中には、源蔵さんが貢いだ『高級栄養剤(ドンペリ)』の成分がたっぷりと蓄積されているはず……! つまり、あいつの果汁は今、最高級の高級メロンジュースということですわね!?」

「は? お前、何を――」

 リーザの瞳に、空腹という名の狂気が宿っていた。

 彼女は懐から、奇妙な『お賽銭箱の形をした小型掃除機』を取り出した。

 彼女のユニークスキル【貧乏神】の具現化武装だ。

「私の前で、カロリーを無駄にするなど許しませんわ! その高級果汁、私が無銭飲食(タダ活)して差し上げます!! 全開吸引(ダイソン・モード)ッ!!」

 ブォォォォォォォンッ!!

 リーザがお賽銭箱型掃除機のノズルをメロロンに向けると、凄まじい吸引力が発生した。

 それは物理的な風ではない。対象の『運気』『財産』そして『栄養』を強制的に没収する、悪運のブラックホールだ。

『ギャアァァァァッ!? ま、待って、私の果汁が! 私が源蔵から絞り取った高級養分がぁぁっ!!』

 メロロンが悲鳴を上げる。パンパンに張っていたクイーンメロロンの果肉が、掃除機に成分を吸い取られ、みるみるうちにシワシワの干し柿のように萎んでいく。

「あははははっ! 甘いですわ! 最高のメロンジュースですわーっ!!」

『や、やめ……やめろぉぉぉ……』

 わずか十秒足らずで、巨大なクイーンメロロンは手のひらサイズのシワシワの種にまで縮小してしまった。

「……えぇと」

 俺は構えていたショットガンをそっと下ろした。

 俺の出番、完全に奪われたんだが。どんだけ食い意地張ってんだ、この人魚姫。

「あ、あぁ……俺の、俺のメロロンちゃんが……」

 洗脳が解けたのか、源蔵さんがシワシワになった種を見てその場に膝をついた。

「源蔵さん。これで目が覚めたな。奥さんのところに帰って、土下座してやり直せ」

「うぅっ……俺は、なんてバカなことを……! 恵、すまねぇ……!」

「ちなみに、このメロロン畑に貢いだ金は全部電子マネー決済か? 残念だが、リーザの掃除機に吸われた金(養分)は二度と戻ってこないからな。借金返済、頑張れよ」

「うわぁぁぁぁんっ!!」

 源蔵の悲痛な泣き声がハウスに響き渡る。

 一件落着……と言いたいところだが、俺には一つ、確認しなければならないことがあった。

「なぁ、源蔵さん。アンタ、この『クイーンメロロンの種』をどこから仕入れた?」

 ポポロ村の農協では、クイーン種に育つ種は厳重に管理されており、一般の農家には絶対に卸されない。

「ひぐっ……それは……」

 源蔵は涙を拭いながら、震える声で答えた。

「数日前……村にやってきた、金髪の行商人から買ったんだ。あの行商人、自分は『勇者ゼロスのプロデュース会社』の者だって名乗ってた……。これを育てれば、村のGDPが倍になって大儲けできるって……」

「……ゼロス、か」

 俺の目が細くなる。

 あの迷惑系勇者。物理的な襲撃(キメラの派遣)が失敗したからといって、今度は違法植物の密輸で、ポポロ村の経済と家庭を内部から崩壊させようと企んだというわけか。

「ただの炎上配信者かと思ってたが……完全に一線(マフィアの領域)を越えたな。上等だ、本物の『社会的抹殺』ってやつを教えてやるよ」

 俺がゼロスへの怒りを静かに燃やしていた、その時だった。

『ハーイ! ゴッドチューブをご覧のリスナーの皆さ〜ん! 大人気ゴッドチューバーのキュララちゃんだよっ☆』

 突然、背後のビニールハウスの天井が破れ、黄金の光と共に一人の少女が降臨した。

 背中には真っ白な天使の羽。手には自撮り棒付きの最新型水晶カメラを持っている。

『今日はなんと、ポポロ村駐在所のイケメンお巡りさんによる、ガチの【ガサ入れ(強制捜査)】現場に密着しちゃってまーす! みんな、スパチャよろしくねっ!』

「……は?」

 カメラに向かってピースサインをする、天使族のゴッドチューバー、キュララ・アルセルラ。

 彼女の水晶カメラが、無精髭の俺の顔をドアップで映し出している。

「……お前、警察の捜査現場に勝手に立ち入るな。公務執行妨害でしょっぴくぞ」

『えへへ〜! お巡りさん、怖い顔もステキ〜! あ、リスナーから赤スパ(高額投げ銭)来ました! 【お巡りさん、ショットガン撃って!】だって!』

 ピースする天使、泣き崩れるおじさん、メロンジュースでお腹をパンパンにして寝転がる人魚。そして、頭を抱える俺。

 ……ダメだ。俺の平穏な交番ライフは、日に日に遠ざかっていく。

 ズキズキと痛む胃を押さえながら、俺は深い深い、今日一番のため息をついた。

読んでいただきありがとうございます。

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