↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境交番のお巡りさん、警察手帳で迷惑チートを【凍結】する。無法な異世界をショットガンと現代法で無慈悲に裁く合法無双劇  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/7

迷子のエルフと極貧人魚姫。シャワールームを原木栽培所にしないでくれ

迷子のエルフと極貧人魚姫。シャワールームを原木栽培所にしないでくれ

「……うん、悪くないな」

 大宇宙管理局から『巡査長昇級』の報酬として支給された、真新しい125ccMT魔導パトロールバイク。

 純白の車体に、青と赤の魔導パトランプ。魔力と闘気で駆動するそのエンジン音は静かで、それでいて力強いトルクを秘めていた。

 俺――ポポロ村駐在所巡査長のリオンは、真新しいヘルメットを被り、アクセルを軽く吹かした。

 今までは村の巡回も支給品の『実用自転車』でギコギコとペダルを漕いでいたが、今日からは違う。圧倒的な機動力による、優雅で快適なパトロールの始まりだ。

「よし、今日も定時退社を目指して、サクッと巡回を終わらせるか」

 青空の下、ポポロ村ののどかな田園風景をバイクで走り抜ける。

 最高だ。風が気持ちいい。これぞ求めていたスローライフ――。

 ドゴォォォォンッ!!

「……は?」

 俺のささやかな幸せをへし折るように、村の北側――森との境界線付近から、巨大な火柱が天高く噴き上がった。

 野焼きのレベルではない。周囲の木々が次々と黒焦げになり、空が真っ赤に染まっている。

「……なんで俺の管轄は、こう毎日毎日燃えるんだよ!」

 ウゥゥゥゥゥーーッ!!

 俺は魔導サイレンを鳴らし、アクセルを全開にして火災現場へと急行した。

     * * *

「あらあら、困りましたわ。ただ暖を取ろうとしただけですのに、炎の精霊さんが少しはしゃぎすぎてしまったみたいですねぇ」

 火災現場に到着した俺が見たのは、地獄絵図の中でニコニコと微笑む、一人の美しいエルフの少女だった。

 ふわふわのお嬢様ドレスに、長く透き通るような金髪。

 だが、彼女の目の前で大暴れしているのは、焚き火などという可愛らしいものではなく、全長十メートルはある『火炎龍(フレイムドラゴン)』だった。

「どこが『少し』だ! クラスAの火災警報だろうが!」

「あ、お巡りさんですか? ごきげんよう。私、世界樹の森の次期女王、ルナ・シンフォニアと申します。実は道に迷ってしまいまして」

「自己紹介は後だ! 下がってろ!」

 俺はバイクを停めるなり、背中に背負っていた魔改造M870ショットガンを抜き放った。

 薬室に装填するのは、対火災用の特殊弾だ。

「――ゼロ・アブソリュート・バレット、装填」

 銃口を暴れ狂う火炎龍に向ける。俺の『魔法適性A』による氷属性魔法と、闘気を極限まで圧縮した絶対零度の弾丸。

 引き金を引いた瞬間、青白い冷気の奔流が火炎龍を丸呑みにした。

「ピギャァァッ!?」

 パキパキパキッ! と甲高い音を立て、数千度の炎の塊だった龍が、一瞬にして巨大な氷像へと変わり――そのまま粉々に砕け散った。

「ふぅ……消火完了」

「まあ! 素晴らしい氷魔法ですね! お兄さん、とってもお上手ですわ!」

「呑気に拍手してる場合か。お前、自分が何をやらかしたか分かってるのか? 重過失失火罪でしょっぴくぞ」

 俺がルナと呼ばれたエルフに警察手帳を見せようとした、その時だった。

「……か、カロリー……無料の、カロリー……」

 ふと、近くの茂みから、地の底から這い出るような呻き声が聞こえた。

 警戒して茂みをかき分けると、そこにはルナミスデパートのワゴンセールで売っていそうな『芋ジャージ』に『健康サンダル』を履いた少女が、顔を泥だらけにして倒れていた。

 よく見ると、耳の横にはエラがあり、足元には魚の鱗のようなものが微かに光っている。人魚姫だ。

「おい、大丈夫か!? 事件か、事故か!?」

「……あ、お巡りさん……。私、シーラン国の親善大使で、地下アイドルの、リーザです……。あの、これ、食べられますかの……?」

 リーザと名乗った人魚姫の口には、その辺に生えていた雑草(タンポポ)がくわえられていた。

「雑草食ってんのかお前!? どんだけ極貧なんだよ!」

「だ、だって……今日のギャラはパンの耳だけで……。あ、でも、五円玉ならありますわ……これ、磨けば金貨になりますよね……?」

 リーザは震える手で、ピカピカに磨かれた五円玉を差し出してきた。

 ……ダメだこいつ、貧乏すぎて幻覚を見ている。

「ハァ……とりあえず、二人とも交番に連行する。乗れ」

 俺はパトロールバイクの後部座席に無理やりエルフを乗せ、サイドカー代わりに魔法で急造したリアカーに人魚姫を乗せて、交番へと引き返した。

     * * *

 翌朝。

 徹夜でルナの事情聴取(という名の迷子の説教)と、リーザへの炊き出し(交番支給のカップ麺を五杯食われた)を終えた俺は、疲労困憊で交番の仮眠室から這い出した。

「あー……疲れた。とりあえずシャワー浴びて、さっぱりしてから帰ろう」

 俺はタオルを首にかけ、交番の奥にあるシャワールームの扉を開けた。

 ――ムワッ。

 扉を開けた瞬間、生温かく、ひどく土臭い湿気が顔にまとわりついてきた。

 シャワールーム全体にモヤがかかっており、何やら異様な光景が広がっている。

「……は?」

 そこには、芋ジャージ姿のリーザが、満面の笑みで霧吹きを持って立っていた。

 彼女の足元、そしてシャワーブースの中には、どこから拾ってきたのか『大量の原木』がズラリと並べられている。

 そして、その原木には、肉厚で巨大なキノコ――高級食材として知られる『肉椎茸』が、これでもかと群生していた。

「あ、リオンさん! おはようございますの!」

「……お前、シャワールームで何やってるんだ?」

「見てください! 大豊作ですわ! ここのシャワールーム、湿度と温度が菌床栽培に完璧な環境なんですの!」

「俺の癒やし空間を原木栽培所にすんな!!」

 俺は思わず大声でツッコミを入れた。

「公有地の私物化および不法占拠だぞ! とっとと片付けろ!」

「ええーっ!? ダメですわ、これがあれば私の今月の食費が浮くんです! なんならリオンさんにも上納(おすそわけ)しますから! ライスの上にこの肉椎茸を乗せて醤油を垂らすと、お肉みたいな味がして最高なんですの!」

「美味そうにプレゼンしてもダメだ! 今すぐ撤去しろ!」

 俺とリーザがシャワールームでキノコを巡って揉み合っていると、交番の入り口の扉がバンッ! と勢いよく開いた。

「リオン様ぁ〜! 朝ごはん、作りに来ましたよぉ♡」

 エプロン姿のキャルルだった。彼女の腕には、手作りの朝食が入ったバスケットが抱えられている。

 だが、キャルルの視線が、給湯室でお茶を飲んでいるエルフ(ルナ)と、シャワールームで俺と密着(キノコを奪い合っているだけだが)しているジャージ姿の人魚(リーザ)を捉えた瞬間。

 ――ピキッ。

 キャルルの笑顔が凍りつき、交番内の温度が急激に5度ほど下がった。

 月兎族特有の、尋常ではない『ヤンデレの殺気』が膨れ上がる。

「……リ、リオン、様? どうして、神聖なリオン様の職場に、泥棒猫(エルフと魚)が二匹も入り込んでいるんでしょうか……?」

「あ、いや、誤解だ。こいつらはただの保護対象で――」

 キャルルはバスケットをカタカタと震わせながら、ゆっくりと背中のダブルトンファーに手を伸ばした。

「リオン様のパーソナルスペースは、私だけのものです……。部外者は、粉砕します(ドス黒い笑顔)」

「まあ、素敵なトンファーですわね! お近づきの印に、お花を咲かせてあげますわ!(ルナが謎の植物魔法の詠唱を開始)」

「ひぃぃっ! やめてください、私の貴重な財産(肉椎茸)が燃えちゃいますのーっ!」

 大混乱に陥る交番。

 警報を鳴らし始める魔導システム。

「……もう嫌だ。誰か俺を定時で帰らせてくれ……」

 激痛を訴える胃をさすりながら、俺の長い長い一日が、また始まろうとしていた。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、★評価やブックマークで応援していただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。