害獣駆除の許可が下りました。クリムゾン・バレット装填
害獣駆除の許可が下りました。クリムゾン・バレット装填
深夜。ポポロ村駐在所の事務デスクで、俺はひたすらボールペンを走らせていた。
「被疑者はカツ丼の提供により自供。背後関係として勇者ゼロスの関与を認める……っと。よし、これで調書は完成だ」
背伸びをして、すっかり冷めたインスタントコーヒーをすする。壁掛け時計の針は午前二時を回っていた。
残業代の出ないサービス残業にため息をついた、その時だった。
ズズンッ……!
地響きのような震動が、交番の窓ガラスをビリビリと揺らした。
「なんだ?」
『リ、リオン様ぁぁっ!』
勢いよく扉を開けて飛び込んできたのは、またしても村長であるキャルルだ。彼女のウサギ耳はピンと張り詰め、普段は朗らかな顔に珍しく焦りの色が浮かんでいる。
「村の防護結界の外に、巨大な魔獣が……! あれ、自然発生したものじゃありません。複数の魔物の死骸を縫い合わせたような、違法な『合成魔獣』です!」
「合成魔獣だと?」
俺はデスクのノートPCを叩き、村の入り口に設置した監視カメラ(巡査ゴーレムの視覚データ)の映像をモニターに映し出した。
暗闇の中、赤く光る複数の眼。全長五メートルはある醜悪な肉の塊が、ポポロ村を覆う魔導防衛フィールドにドスドスと体当たりを繰り返している。
モニターの端には、ご丁寧にゴッドチューブの配信画面がリンクされていた。
『ヒャハハハ! 見ろよリスナー! あの生意気な田舎村に、俺様の金で雇った特注のキメラをけしかけてやったぜ! チートが凍結されようが関係ねぇ、圧倒的な暴力の前じゃ、警察手帳なんて紙切れだろォが!』
配信画面のワイプで、勇者ゼロスが醜く顔を歪めて高笑いしている。
どうやら、手下を逮捕された腹いせに、違法な召喚魔獣を使って村を物理的に更地にしようという魂胆らしい。
「……ふざけた真似を」
俺は静かに立ち上がり、交番の奥にある武器庫へと向かった。
制服のシャツの上から『対魔導完全防護ベスト』を着込み、バックルを締める。そして、愛銃である漆黒の『魔改造M870ショットガン』を手に取った。
「リオン様……! 私も戦います! 村長として、村を荒らす奴は許しません!」
「あぁ、頼りにしてるぞ、キャルル。……だが、今回は『逮捕』じゃない」
俺は魔法ポーチから、赤く明滅する特製のショットガンシェルを取り出した。
「相手は理性のない魔獣だ。つまり、これは事件(公務執行妨害)ではなく、ただの『害獣駆除』。……役所仕事としては、一番手っ取り早い案件だ」
ジャキッ!
薬室に、特製弾を装填する。
「本庁(大宇宙管理局)への害獣駆除申請、事後承諾で決済完了。――クリムゾン・バレット、装填」
* * *
ポポロ村の境界線。
防護フィールドが軋みを上げ、合成魔獣の巨大な爪が結界を削り取っていく。
『行けぇ! その村の交番ごと踏み潰せぇ!』
ゼロスの声がドローン水晶から響く中、俺とキャルルは魔獣の正面に立った。
「キャルル、装甲が厚い。まずは体勢を崩せるか?」
「はいっ! リオン様のためなら、私、なんだって粉砕してみせます♡」
キャルルがヤンデレ気味な笑みを浮かべた瞬間、彼女の足元の地面が爆発したように抉れた。
月兎族の跳躍力と、100メートルを5秒台で走る超絶的な脚力。
弾丸のように空へ飛び上がった彼女は、月を背にして空中で一回転する。
「月影流――流星脚っ!!」
タローマン製の特注安全靴に闘気が集束し、隕石のような飛び蹴りが魔獣の脳天に突き刺さった。
ゴアァァァァッ!?
33,750ジュールの運動エネルギーをモロに食らった魔獣が、悲鳴を上げて大きくのけぞる。完璧なアシストだ。強靭なキメラの防御態勢が、完全にガラ空きになった。
「よくやった。……あとは俺の仕事だ」
俺はM870を構え、銃床を肩にしっかりと押し当てる。
魔獣に向けた銃口。引き金に添えた指。
俺の体内から練り上げられた『闘気(ランクB)』と『炎属性魔法(ランクA)』が、薬室内の特製シェルに極限まで圧縮・充填されていく。
ただの物理弾じゃない。
俺の魔力と闘気を重畳させた、超次元警察特製の必殺弾。
「害獣駆除、執行する」
ズガァァァァァァァァンッ!!!!!!
引き金を引いた瞬間、夜の闇を真紅の閃光が切り裂いた。
銃口から放たれたのは、数千度を超える極大の火炎旋風。
それが闘気の推進力を得て、一筋のレーザーのように魔獣の巨体に直撃する。
『クリムゾン・バレット』。
「ギ、ギャアァァァァ――」
断末魔を上げる暇すらなかった。
着弾した瞬間、合成魔獣の巨体は内部から急激に膨張し、圧倒的な熱量によって細胞ひとつ残さず『蒸発』した。
跡形もなく消し飛んだ魔獣の後に残ったのは、赤々と燃えながらドロドロに溶けた地面の焦げ跡だけだった。
「……ふぅ。駆除完了」
銃口から立ち上る硝煙をフッと吹き消し、俺はショットガンを肩に担ぎ直した。
「すごいですぅぅっ! リオン様、かっこよすぎますっ!!」
空から着地したキャルルが、目をキラキラさせて俺の腕に抱きついてくる。柔らかな感触とウサギ耳が頬に当たるが、今は気にしている余裕はなかった。
空中に浮かんでいたドローン水晶の向こうで、ゼロスが驚愕で顔を完全に引きつらせているのが見えた。
『な、バカな……!? 俺の、俺の金で雇ったキメラが……一撃で蒸発しただと!? チートも使ってない、ただの銃だぞ!?』
「おい、三流勇者」
俺はカメラ越しに、ゼロスに向かって冷たく言い放つ。
「次はお前自身の番だ。首を洗って待ってろよ。……公務執行妨害のツケは、高くつくぞ」
俺がショットガンの銃口をカメラに向けると、ゼロスは『ひぃっ!』と情けない悲鳴を上げ、配信はプツリと強制終了された。
「よし、終わった終わった。交番に戻って寝るぞキャルル」
「はいっ♡ あ、リオン様! 私、ご褒美にコーヒー淹れますね!」
大きく欠伸をした時、制服のポケットに入れていた業務端末がピロン、と軽快な通知音を鳴らした。
画面を見ると、大宇宙管理局からのメッセージが表示されている。
『特務巡査リオン。害獣駆除および村の防衛任務の多大なる功績を評価し、【巡査長】への本採用を確定。つきましては、階級特権として【パトロールバイク(125ccMT魔導仕様)】を支給します』
光の粒子が集まり、交番の前に、魔法陣と共にピカピカの白バイ風バイクが転送されてきた。
「おっ、マジか! これで村の巡回が楽になるな!」
「わぁ! 素敵な乗り物ですね! 私、リオン様の後ろに乗ります!」
「いや、これ一人乗り用だぞ」
「改造します(真顔)」
俺の平穏な交番ライフは、どうやらまだまだ遠そうだが……新しい相棒を手に入れた高揚感に、俺は少しだけ口角を上げたのだった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!
「キャルルの蹴りからのショットガン、最高のバディ!」
「害獣駆除(物理)エグすぎる!」
「パトロールバイク支給キターー!!」
と、バトルの爽快感やリオンのカッコよさを少しでも感じていただけましたら、
ぜひページ一番下より、
【ブックマークに追加】と、
【星(☆☆☆☆☆)を★★★★★に評価】して応援していただけると最高に嬉しいです!
次回、第4話「迷子のエルフと極貧人魚姫。シャワールームを原木栽培所にしないでくれ」
いよいよポポロ村に、あの『ヤバいヒロイン達』がやってきます! お楽しみに!




