第3話
鉛のように重く、鈍い時間が這うように過ぎていった。頭上には鉛色の空が膨れ上がり、暗くどんよりと広がっている。予感された嵐は一向にその鬱憤を晴らそうとせず、湿気だけが空気にねっとりとまとわりつく息苦しい焦燥感の中に世界を閉じ込めていた。雨粒はまだ一滴も地面に落ちていない。
ズキズキ……ッ
倉庫の薄暗がりから監察医が姿を現した。眼球の奥でリズミカルに脈打つ頭痛をなんとか抑え込もうと、彼は虚しくこめかみを押さえていた。
外では、警察の慌ただしい動きが続いている。パトカーの赤色灯が催眠術のような周期で点滅していた。
ピカッ、ピカッ。
法医学研究所の車がすでに大半の遺体を回収した後だったが、あの短い空白の時間こそが決定的に重要だったのだ。官僚や上層部が報告書を綺麗に消毒し、事実を改ざんし始める前に、残酷な真実をこの目に焼き付けるための唯一のチャンス。
先ほど目の当たりにした光景が、氷のように冷たく鮮明に脳裏に蘇る。
あの会話の数分後、鑑識官は現場の隔離された片隅へと彼を案内した。そこには一人の警官の遺体が転がっていた。死に慣れ親しんだ者にとってすら、その光景はあまりにも異様だった。命を守るはずの防弾チョッキは、無用のボロ布と化している。ケブラー繊維は暴力的に引き裂かれ、外側へと弾け飛んでいた。そして兵士の胸の中央には、グロテスクな大穴が空いている。常軌を逸した運動エネルギーの衝突によってもたらされた、内部の壊滅的な破壊を曝け出す空洞。
「報告によれば、彼を撃った男は直後に逃走したそうです」
鑑識官は、暗い表情でその惨状を観察しながら言った。
監察医はもう一度、その脳内イメージを分析した。あれは路上に出回るような通常の弾薬がもたらす損傷ではない。
「きちんとした弾道解析や機関の検査なしには、俺にも断言はできない」
彼の声は掠れていた。彼らを縛る形式的な壁を取り払い、監察医は素の言葉を吐き出す。
「だが、あの傷の痕跡とチョッキの破壊具合を見る限り……同じ銃撃によるものだろうな」
鑑識官は周囲を見回し、監査局や司令部の人間の耳が届かないことを確認した。
「数時間なら、私の方で彼をここに留め置けます。我々が必要な証拠を見つけるには、それで十分ですか?」
冷たい風が吹き抜け、現場に染み付いた鉄錆びた血の匂いを運んでくる。だが、道徳的な汚れを洗い流してくれるわけではない。
「できるだけのことはしよう……」
(できるだけのことはする、か……)
その言葉が、嘲りの響きを伴って脳内でこだました。回想から現実へと引き戻される。
監察医は大股で重い足取りのまま歩き続け、倉庫から距離を取ろうとした。先ほど自分が交わした約束から逃げ出すかのように。
ドクンッ、ドクンッ!
先ほどまでは潜在的な不快感に過ぎなかった頭痛が、今やこめかみで暴力的に脈打っている。プレッシャーは圧倒的だった。彼は、あの汚染された不適切な環境下で、遺体を分析し、メスを入れなければならなかったのだ。それは彼が遵守すると誓ったあらゆる衛生的・法的プロトコルに対する冒涜だった。
(連中は気づく……間違いなく、俺がやったとバレる……)
思考が螺旋を描いて落ちていく。
死体は雄弁だ。皮膚が、組織が、傷跡が……そのすべてが真実を叫んでいる。誰かが再鑑定を行えば、公式の解剖前に遺体に手が加えられたことは一目瞭然だ。
(俺は終わったな……)
彼は隔離エリアから遠ざかりながら、歩みを進めた。鑑識官は隠蔽を約束し、バックアップを保証してくれたが、監察医の信頼は脆いものだった。誰よりも自分の職業を熟知しているのは彼自身だ。死は秘密を守らない。メスの——あるいは急造の刃物の——痕跡は、決して消えることはないのだから。
彼は、背後に残してきた喧騒とは対照的な、静まり返った無人の通りで立ち止まった。
窓が閉ざされ、明かりの消えた周囲の家々を眺めながら、彼はその生活の孤立感を感じ取っていた。肩越しに振り返ると、パトカーと遺体搬送車の回転灯が、倉庫の壁を赤と青に染め上げている。あの人々の日常からわずか数メートルの場所で、軍事レベルの衝突が勃発したなどと考えるのは、あまりにもシュールだった。
「なんだ、おっさんサツだったのか」
突然、若々しい男の声が思考を切り裂き、彼のすぐ背後から響いた。
ビクッ!
監察医は勢いよく振り返り、心臓が跳ね上がった。普段は虚ろな彼の瞳が、一瞬だけ見開かれ、やがてその見覚えのある姿に焦点を合わせる。
あの時の少年だ。雨の日に強盗に失敗した、あのガキ。
「あの日、おっさんがあの家の前に突っ立ってたのも納得だぜ」
少年はポケットに両手を突っ込み、まるで大いなる謎を解き明かしたかのような得意げな態度で言った。
監察医は息を吐き、呼吸を整えようとした。
「君は、学校かどこかにいる時間じゃないのか?」
「学校は午前中だけ。午後は俺の仕事の時間だからな」
少年は気にも留めない様子で肩をすくめる。
監察医は片眉を吊り上げ、すぐさまその眼差しに疑念を蘇らせた。
「『仕事』……というのは……まさか……?」
少年はその皮肉に気づき、ムキになって鼻を鳴らした。
「あん時のは一回きりだっての! 切羽詰まってたんだよ。前にも後にも、あんなことしたのあん時だけだ!」
彼は腕を組んで抗議した。
男の肩の緊張が解けた。暗い瞳の奥に、安堵の光が微かに灯る。彼はその言葉を信じたかった。
「でさ……」少年は小首を傾げ、純粋な好奇心を表情いっぱいに溢れさせた。「おっさんは探偵か何か? 事件を解決するやつ?」
「いや、私は……」
言葉が喉の奥でつかえた。自分の職業の現実は、路地裏での立ち話にするにはあまりにも病的すぎる。
(毎日毎日、骨をノコギリで挽き、臓器の重さを量っているなどと、子供に言えるわけがない)
「……私は、法医学の分析官だ」
彼は最も専門的で、無菌的な響きを持つ言葉を選んで答えた。嘘ではないが、そのプロセスの生々しさは見事に省かれている。
少年は瞬きをし、当惑するほどの速さで情報を処理した。
「じゃあ、おっさん、死んだ人間を切り開くのか!」
監察医は一瞬だけ目を閉じた。現実をマイルドにしようという試みは、無惨にも失敗に終わったようだ。
「ええと……そうだ」
「すげえ! 超カッケェじゃん!」
少年は、その職業の猟奇的な側面を完全に無視し、子供のような熱狂で目を輝かせて叫んだ。
「君がそう思うならね……」
監察医は呟いた。彼にとって、肋骨を切り開き、内臓を計量することの何が『カッケェ』のか、全く理解できなかった。
「でも、がっぽり稼いでんだろ、おっさん」少年は歩道の小石を蹴飛ばしながら言った。「映画じゃ、そういう汚れ仕事は金払いがいいって相場が決まってるからな」
男はしばらくの間、少年を観察した。リラックスした姿勢、着古した服、屈託のない笑顔。そこには、彼が冷たい金属のテーブルの上でよく目にするような、冷酷な犯罪者のプロファイルと一致するものは何一つなかった。
「あの雨の日、君がくだらない遊び金欲しさに私を襲ったとは思えない」監察医は言った。声は穏やかだったが、その分析的な瞳は若者の虚勢を見透かしていた。「何か事情があるんだろう?」
少年の笑顔が揺らいだ。彼は視線を逸らし、古くすり減った自分のスニーカーを見つめる。先ほどまでリラックスしていた肩が、目に見えない責任の重圧で強張った。
「お袋がさ……俺や下の弟たちのために、毎日死に物狂いで働いてるんだ」
彼は虚勢を捨て、低い声で語り始めた。
「俺も手伝おうと思って、いろいろやってきたんだよ。市場で箱を運んだり、ビラ配りしたり……でも、いくら稼いでも全然足りねえんだ。請求書が届いて、全部飲み込まれちまう」
監察医は黙って聞いていた。この忘れ去られたスラムの街角では、どこにでも転がっているありふれた物語だ。だが、死亡診断書のインクではなく、生きている人間の口から直接それを聞くのは、全く違う重みがあった。
「だが、おもちゃの銃を人に突きつけても問題は解決しない。決定的な終わりを招くだけだ」
彼は答えた。その声は、自分でも驚くほど厳格で、まるで兄のような響きを帯びていた。
「もし私が本物の警官や、銃を持った人間だったら……反撃していたかもしれない。君は今頃、冷たい霊安室の引き出しの中だったんだぞ」
少年は身震いした。『もしも』の現実が、重くのしかかったのだ。
「分かってる! 分かってるよ! 悪かったってば!」彼は両手をぶんぶんと振り回し、必死に弁解した。「本当にあの時だけなんだ! 絶望に負けて、バカな真似をしたんだよ!」
必死に言い訳をする少年の姿を見つめていると、彼から溢れ出すカオスで生命力に満ちたエネルギーが伝わってくる。それは、死体安置所の冷たさとは対極にあるものだった。
数年ぶりに、男の顔の筋肉が本当に弛緩した。唇の端が上に持ち上がり、ほんの一瞬だが、錆びついてはいるものの純粋な笑顔が浮かんだ。
スッ……
彼はコートのポケットに手を突っ込んだ。財布を取り出すためではない。煙草の箱とペンを取り出すためだ。彼は箱の裏に住所を書き殴った。
「私の友人に、この近くで建材店を営んでいる男がいる」彼はその紙切れを少年に差し出した。「重労働だ。セメントやレンガを運び、在庫を整理する。毎日、背中が砕けるような思いで家に帰ることになるぞ」
少年はまるで宝くじの当たり券でも受け取るかのように、その煙草の箱を受け取った。
「だが、彼なら君に十分な給料を払ってくれると確信している。そして何より重要なのは、彼が期日通りに必ず支払ってくれるという点だ」
「マジで!?」少年は目を丸くして、興奮のあまり叫び声を上げた。
「ああ。私が紹介したと言いなさい」監察医は再び表情を引き締め、いつもの仮面を被り直した。「ただ、彼を強盗しようなどとは考えないことだ。彼は元軍人で、私のように気が長くないからね」
「うっせえよ、おっさん!」少年は笑い飛ばし、神聖なお守りのようにその住所をポケットに慎重にしまった。「その店で一番の働き手になってやるからな!」




