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第2話

 鈍色に染まった、鉛のように重い日々が這うように過ぎ去った。


 解剖は終わり、事件は警察の官僚的な記録の束へと放り込まれ、遺族は重すぎる悲嘆を背負いながら、肉親の残骸を土へと還した。この街にとって悲劇のサイクルは終わったかに見えたが、彼にとっては違った。


 その監察医には、一つの習慣があった。死がこれほどまでに身近に触れた時、必ず実行してしまう無言の強迫観念。


 彼は、現場に戻ってきた。


 シトシトシト……


 雨は降り続いていたが、その狂気はすでに鳴りを潜めていた。今はただ、ゆっくりと、静かに流れ落ちている。それはまるで、もう嗚咽する力すら失った天使の、押し殺した涙のような連続した液体の哀歌だった。


 彼は反対側の歩道で立ち止まった。計算された距離感。詳細を見失うほど遠くなく、しかしその場に染み付いた喪失の空気に踏み込むほど近くもない。目の前では、雨に打たれて力なく垂れ下がった黄色い規制線が、未だにその家を外界から切り離している。


 今回、純白の防護服は身につけていない。長いレザーコートの下にカジュアルな服を隠し、黒い傘が彼の顔に濃い影を落としていた。


 彼はそこに微動だにせず立ち尽くし、その不幸のモニュメントを見張っていた。それは彼にとっての個人的な儀式だった。この職業によって蝕まれた魂に、わずかでも残っているかもしれない人間性の欠片を救い出そうとする、絶望的で機械的な試み。


 だが、その努力は徒労に終わった。彼の瞳はその廃墟と同じくらいの生命力しか反射していない。暗く、淀んだ井戸のようだった。


 数分が液状の永遠へと変わる。おそらく数時間が経過した頃、彼はついに左へ踵を返し、この立ちんぼを終わらせようと体を向けた。


 ドンッ!


 その一瞬の隙に、衝撃が走った。

 小さな影が彼にぶつかった。計算された、素早い体当たり。少年は彼とすれ違いざま、顔を上げることもなく、濡れた歩道を急ぎ足で歩き続けた。


「おっと、わりぃな、おっさん」


 少年の声は軽く、この陰鬱な環境には似つかわしくない、ふざけたような若々しさを帯びていた。その不協和音と、コートのポケットが急に軽くなった感覚が合わさり、監察医の脳内で警報が鳴り響いた。


「待ちなさい、少年」


 男の声は低く、しかし断固としていた。目は半開きのまま、切迫感など微塵もなく、ただ論理的なプロトコルを実行しているだけだ。


 ピタッ。


 少年は足を止めた。細い肩がビクッと震え、それから振り返る。彼は歪んだ笑みを浮かべていた。サイズの合っていない無邪気さの仮面。


「な、なんだよ?」

「私の財布だ……」


 パラパラパラ……


 二人の間に沈黙が降りた。傘の布を叩くリズミカルな雨音だけがそれを満たしている。少年は雨ざらしのまま、髪も服もずぶ濡れで、目の前に立つ威圧的で濡れていない男を睨みつけていた。


「ええっと……だから……」少年は視線を泳がせ、逃げ道を探る。

「頼むから……」監察医は疲れ切った様子で手を差し出した。


 スゥゥゥ……


 少年は深く息を吸い込み、歯の隙間から空気を漏らした。突然、彼の姿勢が変わる。脆さは消え去り、震えを伴う攻撃性が顔を出した。


「何様だよ、おっさん!? 俺に勝てるとでも思ってんのか、あぁ!? この財布はもう俺のもんだ!」


 バッ!


 彼は乱暴に腕を振り上げた。薄汚れた布に包まれた手が、監察医の胸元に何かを突きつけている。そのシルエットは紛れもない。短い銃身、角張ったフォルム。拳銃だ。


 監察医は状況を評価した。

(俺自身の命には大した価値はないが、論理的に考えれば生き残るべきだ。他人の絶望を相手に賭けをするつもりはない)


「分かった……それは君が持っていなさい」彼はゆっくりと降参のジェスチャーで両手を挙げながら答えた。


 少年は勝利の唸り声を漏らし、肩の力をわずかに抜いた。


 ゴォォォォォォッ!!


 その時、自然が介入した。

 突き刺すような突風が通りを吹き抜け、男の手から傘を奪い去りそうになる。不意を突かれた少年もまた、その偽装を保つ幸運には恵まれなかった。彼の手を覆っていた布が暴力的に剥ぎ取られ、枯れ葉のように遠くへ吹き飛ばされた。


 灰色の日の光の下、真実が露わになる。

 そこに冷たい金属など存在しなかった。あるのは、粗悪に成形された安物の黒いプラスチックだけ。法律で定められたオレンジ色の銃口は削り取られ、傷だらけだった。そのおもちゃにリアリティを持たせようとする、哀れで失敗に終わった試み。


「ええっと……だから……」見破られた自分の嘘に金縛りになり、目を丸くして少年が呟く。


 監察医は目を細め、その馬鹿げた物体に焦点を合わせた。

 ハァ……

 恐怖よりも疲労感が重くのしかかり、深い溜息をつく。


「私の財——」


 バサァッ!!


 言い終わる前に、再び風が彼らを打ち据えた。手の中で傘が回転し、閉じて制御しなければならなくなる。彼がようやく傘を制圧し、前方に視線を戻した時、歩道はもぬけの殻だった。


 少年は消えていた。


 ずっと前方、迷宮のようなスラムの路地を、少年は走っていた。


 バチャッ! バチャッ!


 泥水を撒き散らしながら、死神に追われているかのような速度で駆け抜けていく。いや、実際にそうだったのかもしれない。

 逃走中、後ろを振り返った少年の血が凍りついた。


 傘の男が追ってきている。普通の人間の走り方ではない。レザーコートを風になびかせながら、容赦のない悪魔のように、恐ろしいほどの執念で迫ってくる。


「こっち来んなぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 少年の絶叫が空気を切り裂き、絶望がこだまする。そこを通りかかったわずかな人々は、そのシュールな光景を目撃した。ボロを着た少年が、身なりの良い男から逃げている。社会的なコントラストは一目瞭然だった。少年は擦り切れた服を着て、足にまともに引っかかっていない古いサンダルを履いている。一方の追跡者は、権威と物質的な快適さのオーラを放っていた。


 ガチャンッ! バンッ!


 少年は狭い路地へと進路を変え、ゴミ箱や木箱など、障害物になりそうなものを手当たり次第になぎ倒していく。時間を稼ぐ必要があった。奇跡が必要だった。

 男が躓くのを期待して、彼は再び後ろを振り返った。


 だが、障害物のある場所に到達しても、男の目は計算高く焦点を合わせたままだった。


 タッ、タッ、タッ。


 予想外にアスリートのような滑らかさで障害物を跳び越え、速度を落とすことなく瓦礫を避けていく。


「死人みたいな顔してんのに、走んの早すぎだろ!!」


 その時、少年の世界は終わった。

 高い有刺鉄線のフェンスが路地の突き当たりを塞いでいたのだ。行き止まり。パニックが全身を支配する。


 ガリッ、ガリッ。


 彼は登ろうと金属を爪で引っ掻いたが、遅すぎた。


 ズシン、ズシン。


 重い足音が彼のすぐ後ろで止まる。男が追いついたのだ。


 息を切らしながら少年は振り返り、冷たいフェンスに背中を押し付けた。男が近づいてくるのが見える。虚ろな目、こわばった体、死刑執行人のような暗い顔つき。

 少年は強く目を閉じ、顔を守るために両腕を上げた。痛みを待つ。殴打、蹴り、人生がいつも自分に用意している不可避の罰を。


 しかし、衝撃が来ることはなかった。

 代わりに、震える手から何かが優しく引き抜かれるのを感じた。財布だ。


 少年は片目を開け、それからもう片方の目を開けて混乱した。

 目の前で、男が手を差し出している。そこにあるのは握りこぶしではなく、差し出された紙幣だった。


「受け取りなさい。これが必要なんだろう?」


 少年は雨に濡れた札束を見て、それから男の無表情な顔を見た。その瞳は相変わらずそこにあった。光もなく、怒りもなく、あからさまな同情もない。ただの虚無。


「なんで……?」若者の声は掠れた囁きとなって出た。

「なぜ、か……」


 監察医は呟き、その質問を自分自身に繰り返した。彼は散らかった脳内ファイルを整理するかのように、間を置いた。

(俺は……)

「君が悪い子ではないと思ったからだ。ただ、それだけだ」


 少年は呆然と瞬きをし、震える指で金を受け取った。


「おっさん、変なの」


 フッ……


 男は鼻から息を吐いた。笑い声とも疲労のため息ともとれる短い音だったが、彼の唇は一文字に結ばれたままだった。彼は振り返り、降りしきる雨の中で再び黒い傘を開いた。


「もうこんなことはやめなさい。もし相手が別の人種なら、君を殴るだけでは済まない。殺されるぞ」


 彼は振り返ることなく、路地を引き返し始めた。


「仕事を見つけなさい、少年。こんな生き方をしてはいけない」

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