↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年傭兵は幼女を拾った。でも厄災の魔女かもしれない。  作者: 阿井りいあ
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/78

75 精密な魔力検査


 移動したのは検査には関係のない部外者たちだ。

 カオンとテオドール、それから警備にあたっていた騎士たちまで部屋の外へと追い出された。

 隣の部屋を待機室として使っていいと言われているため、カオンとテオドールはそこで待つという。


 最後まで渋っていたのは国王の護衛騎士たちだった。

 何かあれば駆け付けられる距離とはいえ、魔法使い二人とリグたちだけで部屋に残すのは不安があるのだろう。任務を全うする騎士としてはもっともな意見ではある。


「私の側にはかつての近衛騎士もいるのだぞ。心配はいらぬ」

「お任せを。一時的に陛下の御身をお守りすると約束いたします」


 最終的に国王とモッシュのこの言葉で納得した騎士たちは、扉の前で待機することで落ち着いた。


「まったく。元同僚だというのに、警戒心の強いことよ」

「近衛兵たるもの、そのくらいでなければ安心できませんよ、陛下。俺はむしろ安心しました」


 国王とモッシュが親しげに話している姿を見るのは新鮮だった。

 同時に、リグの知らない顔を見せるモッシュに、ほんの少しだけ寂しさも覚える。


(いつだったか、どこかの村で俺と同じくらいの子が言ってたっけ)


 普段は頼りない父親が仕事仲間の前では怖いらしい、という話を聞いて、その子は絶対に嘘だと言ってきかなかった。

 けれどリグはその子の父親が仕事をしている姿を見た。部下を叱る彼の姿は間違いなく怖かったのだ。

 結局それをいくら伝えても、その子は信じてくれなかったのだが。


(仕事中の父親の姿を初めて見た時って、こんな気持ちなのかもな)


 親しい人の、自分の知らない一面。


 モッシュとはもうずっと一緒だったし、傭兵として働く姿もずっと見てきた。

 初めて見る一面がまだあることに戸惑ったのかもしれない。


 リグと出会う前のモッシュのことをほんの少しだけ知れたと思えば嬉しさもある、という少々複雑な感情をリグは持て余した。


「では、まず魔力検査を行います。魔法陣の上に立ち、魔力量とその質を測定するもので、痛みはありませんが少し風を感じるかと思います」


 ぼんやりしていた時に魔法使いからの説明を聞き、リグは慌てて顔を上げた。


「わ、わかりました。まず俺からやってもらっていいですか?」

「ええ。では兄君、こちらへ」


 スッと手で促され、リグはいつの間にか床に用意されていた魔法陣の上へ向かう。


「リグにぃ……」

「大丈夫だよ、ポレット。ま、俺はほとんど魔力なんてないからポレットみたいにすごい反応とかはないだろうけどな」


 魔法陣の外で不安そうに自分を呼ぶポレットに、リグは笑って安心させてやる。

 怖くも痛くもないんだぞ、と見せてあげるのが今のリグの仕事なのだ。


 そんなリグの様子を見て、魔法使いは微笑ましげに口角を上げると、それでは始めますと声をかけてから魔法陣を起動させた。


 足元から上に向かって風が舞い上がる。そよ風程度の強さのため、服の裾や袖から入って来る風が少しくすぐったく感じる程度だった。

 しばらくして風が収まると、動いていいですよと声をかけられる。そのままポレットの下へ行き、駆け寄ってきたポレットを抱き止めた。


「かぜ、ひゅうん、てしてたね」

「ああ。ちょっとくすぐったかった」

「ふふ、たのしそう」


 どうやらポレットの緊張も少し解れたようだ。

 やはり自分が先に試してみると提案してよかったとリグは胸を撫でおろした。


「これは興味深い。兄君はどうやら精霊の愛し子ですね」

「え、精霊の……?」


 二人で笑い合っているところへ、魔法使いが驚いたように検査の結果を口にした。

 聞いたことのない言葉を耳にし、リグは思わず聞き返す。


「魔力の質が清らかな者をそう呼ぶのですよ。この魔力を持つ者は日常的に人より少し幸運だったりします」

「そ、そうなのか? あんまり実感ないけど……」


 魔力が清らかと言われてもいまいちピンとこない。

 褒められているのかさえわからないが、人より少し幸運というのは喜ぶべきところなのだろうか。


 思わずポレットと顔を見合わせていると、魔法使いは続けてにこやかに告げた。


「魔力量は多くありませんが、日ごろから使い慣れていることがわかります。その調子で使い続けていれば、身体強化ももっと上達するかと」

「! ありがとうございます」

「思わぬところで良いことが知れたな、リグ」

「リグにぃ、すごい!」

「うん、ビックリした」


 今度は間違いなく誉め言葉だ。これまでの努力の成果が出ていると知れて、リグの顔にも笑みが浮かぶ。


 やったところでリグにとっては意味のない検査だと思っていたが、案外、この後の検査でも知らなかったことが知れるいい機会になるかもしれない。


「次は妹様。こちらへ」


 声をかけられ、ポレットの身体に再び力が入る。

 大丈夫だとわかっていても、やはり緊張はするようだ。


「ポレット、きっと大丈夫だ」

「ん!」


 頭を撫でながらリグが告げると、ポレットはキュッと両拳を作ってから魔法陣の上へと移動した。

 歩き方がカクカクしているその姿が愛らしく、全員で微笑んでしまう。


「それでは、始めますね」


 魔法使いの声も、心なしか柔らかい。

 この場にいる者は、まだ子どものポレットをちゃんと気遣ってくれることがわかって、リグもホッとした。


 ポレットの立つ魔法陣が起動する。

 すると、リグの時と違って周囲にも風圧が及ぶほどの強風が吹き荒れた。

 国王の前にはモッシュが立ち、風除けになっている。待機していた魔法使いは、風の影響を緩和すべく魔法を使っている様子だった。


 モッシュが国王を守っているため、リグは一人で両足を踏ん張って耐える。腕で口元を覆い、呼吸をしやすくした。


(ポレットは、無事か?)


 風で目を開けるのも困難だったが、薄目で確認する。

 魔法陣の上では、ポレットがぽかん、とした表情で立っているのがかろうじて確認できた。

 どうやら、この強風の影響をポレット自身はそこまで受けていないらしい。


 しばらくして風が止み、その場には衣服や髪の乱れた国王、モッシュ、リグと魔法使い二人がやや放心した状態で佇んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ポテンシャルは高いのに、本人の自覚はないんですよね_:(´ཀ`」 ∠): 周りが凄過ぎるのがいけない_:(´ཀ`」 ∠):
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。