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少年傭兵は幼女を拾った。でも厄災の魔女かもしれない。  作者: 阿井りいあ
一章

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74 検査に立ち会う者


 国王は次にポレットに視線を向けた。


「ポレット、といったか」

「……おーさま?」

「そうだ。聡いな」


 リグはハッとする。つい油断してしまったが、もしかしたら今日はポレットにとって最悪の日になる可能性もあるのだ。

 決して反抗するつもりはなかったというのに、リグの身体は反射的に動き、ポレットを庇うように前に出てしまった。


 わずかに眉を上げた国王に、リグはしまった、と冷や汗を流す。

 しかし国王はリグに注意することもなく、愉快そうに笑った。


「モッシュよ。この者は妹を守る良き兄だな」

「……ええ。自慢の息子です」

「息子、か。ははは、将来が楽しみだな」

「陛下といえど、本人の意思なく渡しませんよ?」

「まったく、其方の首を縦に振らせることの難しいことよ」


 どうやら、不敬だと罰せられることはなさそうだ。

 だが思っていた以上に国王から優しい目を向けられて、リグは戸惑ってしまう。


 モッシュが尊敬する人なのだから、話くらいは聞いてもらえるとは思っていたが……ここまで友好的だとは思っていなかったのだ。


「怯えずともよい。たとえどのような結果が出ようと、其方が其方である限り(・・・・・・・)乱暴な真似はせぬということも約束しよう」


 国王は、ポレットを見つめながらそう言った。


(ポレットが、ポレットである限り……か)


 それはつまり、ポレットが魔女だと判断されれば、場合によっては対応も考えることになる、ということだろう。


 でも不思議と国王に対する不安な気持ちはなかった。


(きっとこの方なら、もしポレットが魔女だと言われても乱暴な扱いはしない。大昔の国王とは考え方が違うんだ)


 きっと、以前会ったような嫌な貴族もたくさんいる。それでも、国のトップが頼もしいというだけでかなり心強かった。


「では、本日の流れを私から説明させていただきます」


 魔法使いの一人がそう告げたことでハッとする。

 リグは姿勢を正して向き直った。


「検査に同席される方は国王陛下、それからポレットさんの保護者であるモッシュ殿、共に検査を受ける兄君のリグ殿、そして私と助手の魔法使いが二名となっております」

「えー、僕はダメなの?」

「……申し訳ありません、テオドール殿。貴殿はあまりに優秀な魔法使いでいらっしゃる。そのため、結果一つで大きな影響を与えかねない検査への同席は控えていただく他ないのです」


 説明した魔法使いは申し訳なさそうに、それでいて毅然とした態度でそう告げた。

 リグは、それだけ大切な検査なら優秀な魔法使いであるテオドールがいたほうがいいのでは? と首を傾げてしまったのだが。


「僕、改ざんなんてしないよ?」

「意志は関係ございません」

「……オッケー。『出来る』ってことが問題なわけね。理解しましたぁ」


 テオドールは、いわばポレットの「味方」だ。

 不都合な結果が出た場合、思わず結果を改ざんしてしまうかもしれない、ということなのだろう。

 リグだってテオドールがそこまでするとは思っていないが、彼の言うように「出来てしまう」ことが問題なのは理解できた。


 テオドールが同席しないとなると不安が残るが、ポレットにはリグもモッシュもついている。きっと大丈夫だとリグは自分に言い聞かせた。


 そんな中、すっとカオンが小さく手を上げる。


「検査が終わった後、そのままポレットをどこかへ連れて行く、ということはありませんよね?」

「……それは」


 カオンの質問にハッとし、続けて言い淀む魔法使いに息を呑む。

 これでは、もし問題があった場合はそのままポレットを確保すると言っているようなものだ。

 万が一そうなったとしても、仲間に何も言わずに連れて行くなんてあってはならない。


「どんな結果が出たとしても、必ずまた私たちにも会わせてください。嘘偽りない報告もお待ちしていますよ」

「し、しかし」

「あは、どうせモッシュとリグに聞くんだから二度手間でしょ。無理に調べてもいいっていうなら僕が……」

「わ、わかりました! お約束いたします!」

「そう? ありがとー!」


 やや強引ではあるが、隠されるよりずっといい。それにテオドールなら本当に個人的に情報を集めてしまえるだろう。

 リグはテオドールの使い魔の蜘蛛を思い出し、そっと自身の腕を撫でた。


 そのままチラッと国王に視線を向けると、穏やかな眼差しでモッシュに語りかけているところだったため、リグは思わず聞き耳を立てる。


「モッシュよ、其方は本当に面白い者たちと共にいるのだな」

「お見苦しいところを……」

「いや。ここで会えてよかった。其方がなぜ城に戻りたがらないのか、その理由も知りたかったのでな」

「……ご理解いただけた、と?」

「そうだな。気持ちは少し、わかったかもしれぬな」


 国王は、どこか寂しそうに笑った。


「未来(子どもたち)を、守ってやるといい」

「っ、ありがとうございます」


 モッシュが深々と頭を下げる。

 恐らく国王はたった今、ようやくモッシュの勧誘を諦めたのだろう。


 ならば自分は、モッシュの自慢となる息子でいなければ。

 ポレットを守れるような兄に。


「喜ぶのはまだ早いぞ。筆頭魔法使いよ、早速検査の準備を」

「かしこまりました」


 国王と魔法使いの声を皮切りに、それぞれが精密検査のために動き始めた。


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― 新着の感想 ―
最近だとあまり見ないほどまともないい王様です_:(´ཀ`」 ∠): もっとも、そういう方ほど清濁併せ持つ場合が多いので今後の予想がつきませんね…
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