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少年傭兵は幼女を拾った。でも厄災の魔女かもしれない。  作者: 阿井りいあ
一章

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71 いずれにせよ証明を


 話が終わり、一度リグたちは解放された。

 城に滞在しろというお達しがあったようだが、カオンを筆頭に半ば強引にお断りしたのだ。

 恐らく逃げないようにということなのだろうが、テオドールの性格も踏まえて縛り付けるほうが悪手だと考えたのだろう。その対応は正しい。


 すっかり夜も更け、リグたちは精神的に疲労困憊だった。

 今日もあの高級宿に泊まるのかと思われたが、カオンの手配の下、今日は違う宿に向かう。


「うちの家の者が我々の情報を売ったのだと思います。迷惑をおかけしてすみません」

「別にカオンのせいじゃねぇだろ。そこまで責任を感じなくても……」

「いえ、家の名を使って宿を取らなければあんな形で魔法使いが襲撃することも、宿が包囲されることもありませんでしたから」


 カオンはかなり責任を感じているようだ。

 その罪滅ぼしと言わんばかりに、今日泊まる宿の費用もカオンが全て持つと言って聞かない。

 誰もカオンのせいとは思っていないが、本人の気が済むならと甘えることにした。


 そもそも、王都にだけ傭兵団の宿舎がないのも問題だ。

 王都は人口が多く、建物を用意できないと言われているが、荒くれの集まる場所など作りたくないという本音が透けて見える。


(俺、やっぱり王都は好きじゃないかも)


 みんながあまり王都に来たがらない理由はまた違うのだろうが、肌に合わないというのがリグの感想だった。


「カオンの家族がいなくてもさー、どこに泊まってても居場所はバレたでしょ。王都にいる限り……いや、僕たちは傭兵だし、この国にいる限り、かな」

「それもそうですね。ただ、今回のことはけじめとして謝罪させてください。私もそろそろ完全に縁を切る覚悟が決まりました」

「……いいのか」

「ええ。爵位なんて、必要なら実力で取ります。取るなら他国で」

「そん時は祝いに行こう」


 カオンもモッシュも冗談めかして言っているが、それが出来るだけの実力があるところがカオンの恐ろしいところだ。

 いつか来るかもしれないその時は、他国だろうと自分もカオンを祝いたいと切に願う。もちろん、ポレットも一緒に。


「さて、今日はどうにか乗り切ったわけだが」


 宿に着き、慣れた様子でテオドールが隠蔽系の魔法を重ね掛けした後、リグたちは室内でいつものように話し合いを始めた。

 ポレットはすでにぐっすり眠っているので、リグはベッド脇に座っている。


 改めて思い返すと、かなりギリギリだったと思う。よく乗り切ったとも。


「無理矢理だったよな……」

「テオドールが暴走しかけた時はさすがに肝が冷えましたよ」

「へへへ、カオンに褒められちゃった」

「褒めてません」


 実際、止められなかったらテオドールは本当に暴走していたのだろうか、と思うとリグも背筋が凍る思いだ。

 親しい魔法使いが第二の厄災になるだなんて笑えない。


 モッシュは軽く息を吐くと、改めて口を開く。


「さすがに明日どうこうされることはないだろう。ヤツらも上に話をつけにいかないといけないだろうからな」

「だね。魔法省って頭固い奴らばっかだからさー。会議に一日はかかると思うよ」

「そいつは助かるな。そこで、だ」


 モッシュは一度言葉を区切ると、姿勢を正して改まったように顔を向けた。


「俺は明日、陛下に会いに行こうと思う」

「それは……急に謁見できるとは思えませんが」

「そこはなんとかする」

「普通はなんとも出来ないんだけどねー」


 モッシュはなんてことない様子で告げたが、国王に会うというのはとんでもないことだ。

 急に嫌な予感がしたリグは、思わず口を挟む。


「モッシュ、陛下に何か頼むのか? もしモッシュが戻って来る代わりに、とか言われたら……」

「……まったくないとは言い切れないな」

「そんな」


 その可能性を彼自身も否定できないのだろう。

 モッシュは困ったように眉尻を下げつつも、その意志は固そうで、真っ直ぐな目をしたままだった。


「子どもたちを守るためならなんだってする」

「モッシュ……」

「大丈夫さ、リグ! いざとなったら僕がモッシュも連れて他国に逃げてあげるよ。ちょっと重いけどどうにか一緒に飛ばせるでしょ。短距離なら」

「はは、力業すぎるな」


 どくんどくんと心臓が嫌な音を鳴らしっぱなしだ。

 思えばそれは、魔法使いのミリューが襲撃してからずっとだった。


 モッシュは朗らかに笑っているし、テオドールの言葉は実際にできることでもあるとわかっている。

 それなのに胸騒ぎが止まらないのはきっと。


(良くも悪くも、きっとこれまでの日常が崩れるんだ。そんな気がする)


 リグの良く当たる勘がそう告げていた。


「何度も言うが、陛下はとてもお心の広い方だ。俺は意外と希望があると思っている」

「厄災の魔女へのこれまでの対応について、話すのですか?」

「仄めかす程度に、な。王族からすれば、公にしたくない話のはずだから食いつくだろう」

「王族を脅すことになりますね……」

「モッシュもただではすまないかもねー」

「っ、罰せられるってことかよ!?」

「リグ、落ち着け」


 もしそうなら、モッシュだけが罰せられるのは間違っている。リグだって、カオンだって、テオドールだって同じなのだから。

 ポレットも何をされるかわからない今、いよいよ他国への逃亡が視野に入ってきた。


 だがその前に、ポレットが安全であることをリグたちは証明しなければならない。

 ポレットが、厄災の魔女ではないということも。


「あは、もし処刑でもされそうになったらその時も僕が助けてあげるよー」

「頼もしいんだか危ういんだか、判断に困るな」

「っていうか、縁起でもないこと言うなよな! テオドール!」


 そしてそのためには、ポレットに精密検査を受けさせるしかないのだ。

 それが、逆にクロの証明になってしまう可能性があったとしても。


次回から毎週水曜日21時の週一更新になります。

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