表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少年傭兵は幼女を拾った。でも厄災の魔女かもしれない。  作者: 阿井りいあ
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/68

50 ポレットの目的


 宿舎の外の屋根のある場所で、普段野営している時のように火を囲みながら朝食を摂る。


 食事を終え、後片付けをしてから早速今日の仕事に取り掛かるのだが、その前にポレットが突然みんなの前で宣言をした。


「ポレット、かだんつくる!」


 事情を知るリグは思わずギクッとしてしまったが、事情を知らない他のメンバーはきょとんとした顔でポレットに注目している。


「花壇、ですか?」

「うん! ポレット、きれいなかだん、つくりたい!」

「なぜ花壇があることを知っているのですか?」


 最初に反応してくれたのはカオンだ。その表情には驚きが見て取れる。


 リグは冷や汗を流し、慌てて会話に入った。


「ご、ごめん! それは俺が話しちゃったんだ」

「なるほど。まぁ、いずれ知ることだったでしょうし、仕方ありませんね」


 かなり焦ってしまったが、カオンも他のみんなも、単純にポレットは花が好きなのだろうと勝手に納得してくれたようで、特に疑問を口にすることはなかった。


 肝は冷えたが、花壇を再生させたいポレットの気持ちはわかる。

 それに、リグとしても元通りになったら素敵だとは思っていた。


 だが現実的には少し厳しいのでは、とも。


 案の定、カオンは複雑そうに眉を寄せると、ポレットに丁寧に説明してくれた。


「とても素敵なことですが、すぐ花壇に取り組むのは難しいですよ、ポレット。まずは人々の暮らしを整えるのが先決ですから」

「くらし? かだんあると、みんなうれしいよ?」

「あー……そうですが、えっとですね……」


 珍しくカオンが考え込んでいる。さしものカオンであっても幼児にわかりやすく伝えるには頭を悩ませるらしい。


 だが、子どもの相手には他の誰よりも慣れているだけあって、カオンは少し考えてから再びわかりやすく説明を口にした。


「今はまだ、住む場所も食べるものもあまりないのです。花壇があれば皆さんは喜んでくれるでしょうが、先に住む場所と食事を十分確保……たくさん用意しなければならないのですよ」

「すむばしょと、ごはん」

「ええ。ポレットだって、いくら綺麗でも花壇を見ただけでお腹は膨れないでしょう?」

「うん、おなかすく」


 非常にわかりやすい例えだ。ポレットはお腹を両手で押さえながら大真面目に頷いた。

 その様子が愛らしく、リグも、そしてモッシュやテオドールも思わず小さく笑ってしまう。


 モッシュは誤魔化すように一度わざとらしく咳をすると、二人の会話に参加した。


「だが、ポレットのやりたいという気持ちは大切だな。それに悪くはない考えだ」

「僕もそう思うー! 町のシンボルが少しでも形を取り戻したら、町の人たちの心が元気になるよね」

「……テオドールにもそういう人の心、あったんだ」

「ちょっとリグ、お兄さんとお話しよっか」

「ちょ、やめっ、冗談だよっ!!」


 テオドールの賛成した理由があまりにも意外だったため、リグは余計なことを言ってしまったようだ。

 肩を組まれ、ぐりぐりと頭に拳を押し付けられたリグは慌ててもがく。


 ただ、ポレットの「やりたい」という気持ちをみんなも尊重してくれるのが嬉しかった。


「たしかにそうですね。花壇を見て、また頑張ろうという気力は回復するかもしれません」

「かだん、つくれる?」

「そうですねぇ……毎日、ノルマとは別で時間をとって、少しずつ取り組むなら問題ないかと」


 自分たちが傭兵として派遣されたのは復興のため。まずはここに住む人たちの生活を整えるのが第一なのだ。


 そんな中で花壇にばかり時間を割けば、当然反感を買うだろう。

 だからこそ、やることはきちんとこなした上で、空いた時間に取り組む必要がある。

 しかしそうなると、かなりの体力と時間が奪われることになる。通常の仕事に加えて別の作業をするということなのだから。


 当然、それも頭に入れているモッシュはパンと一つ手を打つと、人差し指を立ててポレットに告げた。


「ただし、無理するのはダメだ。疲れ切って翌日の作業が進まないなんてことになったら意味がないからな」

「わかった!」

「本当に少しずつしか進まないと思いますよ。それでもやりますか?」

「やる! だってディ……」

「ディ?」


 リグの背中に冷や汗が流れる。今、ポレットは間違いなく「ディザ」という名前を出そうとしたからだ。

 内緒にしてほしいと頼んだ本人がうっかり口を滑らせるとは。


(いや、ポレットはまだ幼児なんだから、隠しごとが苦手なのは当然だよな)


 出来る限りリグがフォローをすべきなのだろうが、ここからどう取り繕えばいいのかすぐには出てこなかった。


 そんな時、ポレットが口を押さえながら恥ずかしそうに告げる。


「か、かんじゃった」


 ポレットにしてはうまく誤魔化せたのではなかろうか。リグは内心で流した冷や汗を拭った。


 みんなもポレットの可愛さにほっこりと笑っている。どうやら変に思われることはなかったようだ。


「じゃあ、仕事終わりに一度集まって、花壇をどう再生していくか話し合うか」

「そうしましょう。今日の作業で、へとへとになってしまうかもしれませんしね」

「慣れるまでは花壇づくりとか言ってられないかも~。それでも文句言うのはダメだからね、ポレットちゃん」

「ん!」


 どうにか話はまとまり、全員が立ち上がる。

 花壇を再生させる目的は出来たものの、まずは復興作業だ。


 宿舎の外から見える町並みだけでも骨が折れるのがよくわかる。

 これまで作業をしてくれた人たちのおかげで道のようなものが出来ているのは助かるのだが。


(ポレットが夢で見たって言う綺麗な花壇、俺も見てみたいな)


 そのためには、地道な一歩から作業を進めていくしかない。


 リグは軽く両頬を叩くと、気持ちを切り替えて作業へ向かう足を踏み出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ