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迷子おじさん
椿さんが僕を知っている。僕は椿さんと会った記憶がない。そしてサクラも、生前の椿さんの記憶で止まっている。
「中身、は、誰なんでしょうか」
サクラが呟く。美津さんのスマホから再び着信音。今度は、たらこ・たらこ。
「あ、ごめん。旦那から電話。……あい、もしもし?浮気?しとらん、しとらん。サクラと飯食ってる」
ごめん、とハンドサインをして店外へ出て行った。
「俺を知ってるってことは鼎造だと思うんだけど、そうなると取り憑いてるみたいなことかな」
「おじさんの中身が鼎造さんだとしたら、おじさんに会えれば時間が戻るんでしょうか?」
美津さんが戻って来た。
「ごめん、ホテルに旦那置いて来たんだけど迷子になったみたいで探してくる。お財布置いてくからこれで払ってくれる?椿が来たら何か食べさせてね。お財布はグランマん家に預かってて」




