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24年前
夫の実家に一人暮らし。再婚の話も何度かあったけれど、断った。さみしくないわけではなかった。でも、もし聡太が生きていたら。戻って来れる場所でありたかった。
マツ、60歳。それなりに年も重ね、気持ちの折り合いがついてきた。父親は早くに亡くなり、今は母の介護で実家へ行ったり来たりしている。実家には兄夫婦がいて面倒をみてくれている。兄夫婦は共働きのため、デイサービスの日以外の平日は母と過ごす。大変なことも多いが、誰かに必要とされるのは嬉しい。
その日は、夕方から大雨の予報だった。
「ごめん、母さん。今日中に採らないとカタウリ出荷出来なくなるから畑に行ってくる。1時間くらい」
「大丈夫。今日は体の調子も良いからな。」
急いで山の上にある畑に行った。予報よりはやく、今にも降り出しそうな空。手早く収穫し、バイクに積む。遠雷の音。急いで帰らなきゃ。
子供の、泣き声。
気のせいじゃない。鼎造ジイサの家の跡地の方から聞こえる。明るい日でも不気味な雰囲気がある場所なので近付かないようにしていた。山の裏から来た迷子か?放って置くわけにもいかず、近付いた。
小さな子供が泣いていた。
「………聡太。」




