フルーツキャロット。
【ただいまー】
「お帰り、ヤッケ干したら中で暖まりな。」
「うん、ママは?」
「郁恵ちゃんと、晩ごはんの用意してくれているよ。お風呂も、今のうちに入っておいで。」
「慎吾、ユキの所に行こ。」
「おぅ。」
(ユキ、しんどくない?)
(大丈夫よ、明日か明後日には産まれるわね。)
(わっ、本当?これね、松ぼっくり拾って来たんだ。ユキ、しばらく外に出てないでしょ。慎吾も、一生懸命探してくれたんだよ。)
(そう、ありがとうね。ユウナ、余計な事考えないで慎吾にいっぱい甘えなさい。)
(うん、ユキも丈夫な子を産んでね。)
「ユウナ、ハクがそろそろ産まれるって。」
慎吾は、ハクと意思疎通が出来るみたい。
ボクは、ユキほどハクとは喋れない。
やっぱり、オスだからかなぁ?
「ユキが、言ってた。明日か明後日には、産まれるって。楽しみだな、ユキ大丈夫かなぁ?明日なら、柳山のおっちゃん近くにいるからすぐ呼んで来れるはず。慎吾、お風呂行こ。グヘヘ!」
「よし、着替え取りに行こう。」
何でよ、民宿のお風呂って男女別々なの?
慎吾の引き締まった身体が、堪能出来ないじゃない!
「どうした、ユウナ。一人で、入れるか?」
「うーん、どうかなぁ?」
その手が、ありましたか。
「おばば、連れて来ようか。」
「もう、慎吾のバカ!一人で、入れるよ!」
何、怒っているんだろう?
晩ごはんを食べに、大広間へ向かう。
慎吾は大人のテーブルなのに、ボクだけキティちゃんのミニテーブルだった。
「ねぇ、何でボクはここ?」
「いつも、そこじゃないの。嫌なら、食べなくてもええよ。」
「ううん、食べる。」
「おばばって、ユウナをあまり甘やかさないのね。何か、秘訣でもあるの?」
「秘訣も何も、私とユウナは同じ日に産まれたんだもの。何で、甘やかさないといけないんだい。」
【えーっ!】
「おばばさんって、私より年下なの?」
「何、言ってんだい。ユウナと麻里を基準に考えたら、どうしようもなくなるよ。ユウナは、ワンコだし。麻里は、ハイエルフなんだ。二人共、物心つくのに何十年かかると思うんだい。」
確か、ハイエルフの私は百年位。
ワンコのユウナに至っては、もっとだったはず。
ただ、人里で育った私達は案外に早く物心がついた。
それでも、百年近かったけど。
ユウナとおばばが、同時に産まれたとは知らなかった。
どうりで、おばばさんはユウナを特別視しない訳だ。
「ユウナ、カレーだぞ。何か、色が違うな。」
ボクのカレーは、いつも超甘口なのだ。
りんごと蜂蜜がたくさん入っていて、人参が入っていない。
「んがぁ、人参!」
「どうしたの、人参もちゃんと食べなさい。ミューちゃんに、笑われるわよ。」
「ミューちゃん、人参あげようか?」
「バシッ!」
ミューちゃんに、殴られた。
「カレーに入っている人参なんて、食べる訳無いでしょ。」
「gununu、ハニーフラッシュ!」
「何、やってんの。魔法で、人参は無くならないわよ。」
「ウゲェ、人参苦い!」
「どこ、行くの?」
「オエッ、ゲッ!」
「全く、吐くくらい嫌いなのかい。本当に、好き嫌い治らないね。だから、大きくならないんだよ。」
「小っさいのは、女王様譲りだ。もっと、小さかったからな。」
「えっ、もっと?」
「それでも、中身はすごく大人だったぞ。」
「どういう意味、長?」
「そのままじゃ、ユウナは赤ちゃんだろ。いつまでも、ママ~って。」
「ムゥ、だってママはボクの事一番に考えてくれるんだもん!ママがいなかったら、今のボクはいないんだよ!」
「ふぇ~ん、ユウナ~。」
「あらあら、麻里。あんたが泣いてたら、あかんでしょ。」
「ユウナ、おいで。さぁ、人参食べましょうね。」
「わっ、ママ嫌い!」
「お仕置きするわよ、ユウナ!」
「パパー、助けて。」
「俺も、折檻されるわ!」
「ムゥ、人参美味しくないよ。ミューちゃん、すごいね。」
「あら、ミューちゃんの人参は高級なフルーツキャロットよ。」
「何ですと、ちょっとちょうだい。甘~い、今度からこれ使ってよ。」
「勿体なくて、とても使えないわよ。」
「謎にミューちゃんの待遇が、ボクより良いのは何故?」
「おバカなユウナより、ミューちゃんは賢いからよ。」
ドヤ顔で、ふんぞり返って耳を立てるミュー。
前足を起用に振って、ユウナの頭を撫でている。
「そうそう、ユキが明日か明後日には産まれるって言ってたよ。」
「じゃあ、今晩の内に準備するかの。男共は、別館に行っておくれ。」
「えっ、オレもか?」
「慎吾、お前もついているだろう?男は不浄だから、同じ屋敷に入れぬのだ。ハクの事、頼んだぞ。お前ら、親友だろ。」
「おぅ、ユウナさびしかったら会いにおいで。」
「今生の別れじゃないのに、黄昏れるな。」




