サツマイモ。
「ユウナ、後どれくらい?」
「うんと、後三分の二くらいかなぁ。」
「まだ、三分の一かよ。お腹空いたし、喉渇いたな。」
「はい、焼き芋とミルク。」
「ユウナ、いつも持って歩いているのか?それにしても、ホッカホカだな。どうなってんだ、これ?」
「うん、トレーニングの時はいつもこれだよ。人がいる所では、使えないの。見つかると、攫われるんだって。」
オレ達はクロスカントリーの板で、ここまで滑って来た。
いわゆる、複合という競技のジャンプでは無い方だ。
オレは、複合でも大人に混じって県大会で表彰台に上がる実力がある。
それにしても、ユウナはすごいな。
運動神経が無いのに、オレより余裕で滑っている。
「ユウナ、これってかまくらじゃないよな。」
「うん、アイスウォールで小屋を作ってみた。」
「それにしても、明るいな。」
「壁に発行する様に、魔術をかけているから。寒くない、慎吾?」
「大丈夫だよ、こっちおいでユウナ。」
「フエッ、ウ~ン。チュッパ!」
慎吾の口から、甘いあんこの味がした。
俯いて、まっ赤になってしまった。
「嫌だったか、ユウナ?」
「ううん、びっくりした。」
「さてと、どうするかなぁ。オレのせいで、行っている間に暗くなってしまうな。」
「慎吾の、せいじゃないよ。冬は、日が短いもの。一応泊まれるけど、皆が心配するから帰ろう。ユキの様子も、見ていたいし。明日落ち着いてたら、ミミを迎えに行こうね。」
「そうだな、ユウナは優しいな。なんで、オレなんかと一緒になろうと思ったんだ。」
スキーを履きながら、ユウナがモジモジする。
「慎吾は、かっこ良くて優しいもの。でも、皆に優しいのは嫌!」
「ははは、気を付けるとしか言えないな。オレの一番で唯一はユウナだからな。」
「文太、首都の様子はどうじゃ?」
「警視庁からの報告だと、公安は動いていないそうです。どっちに与するのか、流動的ですな。皇宮警察は、今はバタバタしていますがどっちみち何らかの手を打ってくるでしょう。」
「ねぇ、警視庁ってユウナが師範代している所よね。私達の、味方なの?」
「何、言ってる。お前の両親が、薩摩にいた事は話したよな。警視庁の前身は、薩摩藩が作ったんだ。だから、警視庁は全面的にこっちの味方だ。」
「確か、琉球の王族だっけ。尚氏とか、何とか?」
「あれは、こっちで言う所の征夷大将軍みたいな者だな。本来の王族は、シャーマンとして国を統べていた者達だ。もちろん、みんなエルフだけどな。それで、ペリー達がやって来る頃になって琉球でクーデターが起きた。身の安全を護る為に、薩摩が麻里の両親を本土に連れて行ったんだ。そして、戊辰戦争で幕府を倒す原動力はお前さんの両親達だ。」
「それで、何で秋田にいるの?」
「戊辰戦争で、奥羽列藩同盟と言う幕府側の組織が出来た。秋田藩は、周囲に与せず新政府側として孤独な戦いをしていた。薩摩も、会津までは侵攻したがそこで足止めを食らってな。お前の両親のハイエルフを秋田藩に、派遣したんだ。ほら、県知事の佐竹さんっているだろう。あの人は、その時の殿様の分家だ。だから、未だにわし等に良くしてくれる。その縁で、阿仁の銅山の裏金脈を褒美にもらったんだ。」
「麻里ちゃんが産まれた頃は、金山無くなっちゃったもんね。」
「私も、免許警視庁の人にお願いすればよかった。」
「そこじゃないだろう!」
「だって、ユウナばっかりズルくない!」
「ユウナは、別の事で優遇されただけだから。」
「まだまだ、娘っ子はかわいいのう。」
「長、私は母親よ!」
「そうじゃな。文太よ、皇宮警察はどのくらい掴んでおるかの?」
「全てでは無いにしろ、ユウナの事は知れているはず。手を出して来ないのは、都を奪われるかもと思っているからでしょう。」
「都は、八瀬童子と陰陽師が護っておるはずでは?」
「先日こちらに来た、葛城の土蜘蛛。それに、大江山の鬼達。後は、明石の入道も都を窺っています。連携は取っていませんが、ユウナが関わればすぐ一体化する。」
「そうだな、都を取られれば身も蓋もないか。やはり、あ奴らと話し合ってみるべきかな?」
「いや、逆に刺激するのは悪手かと思う。ユウナが覚醒しているのなら、いざ知らず。今は、大人しく籠もっていた方がいいだろう。ただ、黙っているのもなんだ。一度、ユウナを連れて上京してみるつもりだ。」
「そうか、お前ら夫婦で行くのか?」
「ああ、そうする。麻里、車取りに行かないとな。」
「あっ、そうだった。後、色んな手続きや荷物も引き取らないと。」
「本当は、広面のマンションが使える様になってからと思っていたが。」
「敏彦に、連絡しておこう。」




