お仕置きだべー。
妻も娘も、ついこの間まで高校生だったのだ。
今どき高校生と言えば、まだまだ子供。
改めて妻を見ると、確かにあどけない。
いつも娘といるから、大人だと思っていた。
それは、こちらの身勝手だ。
俺は、娘の面倒を妻に押し付けてばかりで何もしていなかった。
父親として、失格だな。
嗚咽が、聞こえなくなった。
二人で見に行くと、洗面所の壁に顔をぶつけて眠りこけている。
妻の顔に、赤みが指す。
そのまま娘を抱き上げて、ソファに連れて行く妻。
「貴方、温めたタオル持ってきて。」
腫れた目の周りを丁寧に拭う、妻。
ポタリポタリと娘の顔に、妻の涙が落ちる。
俺は隣に座りタオルを妻から奪い取り、妻の顔に当てる。
「私、どうしたらいいの?ねぇ、やっぱり無理よ。私なんかじゃ、ユウナの母親になんかなれないのよ!」
お前以外、誰がいる?
「精一杯やっているだろう、麻里。これからも、先は長いんだ。焦らなくていい、ユウナの母親はお前しかいないんだ。」
「ヒィッ、ママ!」
おい、ユウナ。
怖がるなよ、お前の母親だぞ。
麻里も、眉間にしわ寄せないで。
「ママ、おっぱい!」
うちの娘は、案外バカだった。
「もう!」
上着を脱いで、娘の口を宛がう。
いいなぁ、あれ。
「ゲホッ、オイチイ!」
又、スヤスヤ眠り出した。
「はぁ、布団敷いて貴方!」
「敷いたぞ、麻里。」
「川の字で寝るから、もう一枚敷いてよ。」
俺がもう一枚敷いている間に、二人はとっとと床についた。
「ミューちゃんも、いらっしゃい。」
川の字とは言っても、俺だけ別の布団。
ハブられてます、俺。
麻里、今度は丈夫な男の子産んでくれよ。
「何よ。」
「いや、何もない。」
自然が、一番だ。
無理矢理、親子にならなくていい。
なるように、なる。
「私、考え違いしてたわ。」
「ほう、何だ?」
「この子見た目は幼児でも、少しは大人だと思っていたのよ。ちょっとノーベル級に、頭が良くて。ちょっと剣道の、全日本王者で。ちょっと魔術が、覇王級で。だいぶ、美少女だけど。」
聞いている限り、うちの娘はあらためて凄いな。
「で?」
「考えてみたら、何も知らないただのクソガキなのよ。」
「落差が、激しいな。どうするんだ、この先。」
「どうもしないわよ、悪い事したら叱って良い事したらほめてあげるだけよ。」
「簡単だな、案外。」
「どうかしら?」
翌朝、すごい勢いで妻が怒っていた。
「あ~ん、ぶたないで。ごめんなさい、あ~ん!」
「どうした、麻里?」
布団が、染みになってビショビショだった。
「怒っている理由、わかる?」
「ボクが、オネショしたからでしょ?わざとじゃないの。」
「夜中起きた時、トイレに行こうって言ったでしょ。面倒くさがって、そのまま寝たじゃない。」
「だって、身体が痛いし…。」
「ママのせいにするな!」
「ママは、いつも怒ってばっかり。ボク、そんなに悪い子なの?」
「悪いわよ、昨日だってそうでしょ。」
「あれは、ママを傷つけたくなかったんだもん!」
「それは、わかっているわ。そこじゃないの。」
「何?」
「ママに向かって、くそババァって言ったわよね!いたいけな美少女を捕まえて!」
「ヒィッ、そこ?」
何やら、漫才でも始まったのだろうか?
「あんた、バカ娘をきれいにしてきて。こんなばっちかったら、折檻もできないわ。」
「いや、イヤー!お仕置きは、イヤー!」
シャワーできれいにして、ウサギの着ぐるみを着せる。
ミューが、仁王立ちで娘を見ている。
仲間だと思っているのか、腕を曲げてこいこいをしている。
「ミューちゃん、何?」
しゃがんだうさ帽子を直して、あげている。
仲の良い、姉妹だな。
俺は、リビングの端っこに布団を干す。
向こうから、ギャンギャン声がする。
「イヤー、ミューちゃん助けて!来るな、ア~ン、ウワ~ン!」
妻のお仕置きが、始まったらしい。
納屋で、一服してこよう。
変に、介入するとややこしくなる。
帰って来ると、お尻をまっ赤にしたウサギがいた。
わんわん、泣いている。
しこたま、叩かれたな。
妻も、泣いている。
何で?
俺は、黙って二人を抱きしめた。
「そろそろ、実家に顔出そうか?麻里、大丈夫か?」
「うん、準備するわね。」
「ママ、行かないで!ユウナ、いい子にするから。」
「どこにも、行かないわよ。ミューちゃんも、連れて行くんでしょ?準備、しなさい。」
「うん、痛っ!パパ、お尻見て。」
「麻里、ヒールしてやれ。すぐ、治るだろう。」
「お仕置きの意味が、無くなるでしょ。しばらく、そのままにしなさい。」
「ア~ン、パパ!」
「しょうがないだろ、ママがあぁ言ってるのだから。」
「うひょー、くすぐったい!ミューちゃん、ありがとう。」
ミューがユウナのお尻を舐め舐めしていた。
「ママ、怖いね。」
言われたミューも、コクコク頷いている。
本当に、子どもなんだな。
良くやっているよ、妻は。




