表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/235

ボクの、母ちゃん。

 まだ年の瀬だが、里は賑やかだ。


 子供達がはしゃぎ回り、大人達は呑み回す。


 街に出て行った種族も、暗くなる頃には集うとの事。


 ダムが出来た際に、追い出された者はかなりいる。


 近隣の街ならいいが、都会へと出て行った家族もいる。


 それで、いいと思う。


 愛着の無い者には、ここは暮らして行きにくい所だ。


 私もユウナと上京した時には、都会の喧噪が楽しかった。


 今でも、家族水入らず向こうで暮らすのも悪くないと思う。


 子育てだって、充実した支援があるし。


 昨今の物流で、美味しい物も集まって来る。


 ここにいる人達は、出て行けないか好き好んで残っている者達だ。


 「ユウナのママ、お汁粉。」


 「ありがとう、嘉子ちゃん。」


 ユウナの幼なじみの嘉子ちゃんが、お汁粉を持ってきてくれた。


 今は、中学生かな。大人びてて、落ち着いている。


 いつも、ユウナのお世話を焼いてくれる優しい女の子だ。


 たぶん、ユウナの事が好きだったっぽい。


 「ユウナ、来年から中学に通うの?」


 「嘉子ちゃん、今何年生?」


 「1年生、森中に入るの?」


 「ううん、通うとしたら秋田市内ね。たぶん、行かないと思うわ。」


 「そうなんだ、一度行ってるもんね。今さら、行かないか?」


 「違うのよ、私に赤ちゃんが出来たからそばにいるつもりなのよ。」


 「おめでとうございます、ユウナのママ。」


 「嘉子ちゃん、麻里でいいわよ。ユウナと仲良くしてくれて、ありがとうね。」


 「いいえ、ユウナのママ。あっ!私、ユキの所に行ってくる。」


 可愛いな、私にもあんな頃があった。


 厭だっ、すっかりオバさん化しているわ。


 遠くで、嘉子ちゃんがユウナと由香ちゃんを誘っている。


 皆で、ユキの所に行くらしい。


 ユキは、年明けの七草の頃に出産する様子。


 大体、2カ月ちょっとで産まれる。


 うらやましいな、まだ悪阻は無いけど。


 まだまだ、先だな。


 恐らく、里帰り出産だな。


 実家では無く、圭子さんのいるここに居させてもらう事になりそう。


 冷めてきたお汁粉を持っていると、下からクリクリッと二つの瞬きが見上げている。


 「ユウナ、みんなと遊ばないの?」


 「…。」


 「おいで。」


 抱っこされながら、ずっと見上げてくる。


 「お母さん。」


 「なーに?」


 「どこにも、行かない?」


 実の母に、置いて行かれた事思い出したのかな。


 彼女も、置いて行った訳では無い。


 帰れなかった、この世にいなかったから。


 約束は、出来ない。


 もちろん、一人になんかさせたくない。


 「ユウナ、離れないでね。」


 「わ~ん、母ちゃん!母ちゃん!母ちゃん!」


 ギャン泣きする、我が子。


 何で、こんな小っちゃい子を置いて行ったんだろう?


 元々、肉親の情が薄い。


 旦那に保護されるまでは、他からの暴力や誹りで生傷だらけ。


 子供だから、食うや食わずのその日暮らしだったのだろう?


 たまに、人を避ける事がある。


 無意識に、怖がっている。


 私に子供が出来たから、無意識に捨てられると思っている。


 どうしようも、無い。


 私がどう思おうが、ユウナがどう感じるかだ。


 言葉で言い聞かせる訳には、いかない。


 私は、たった一人のこの子の母親なのだ。


 わかってね、あなたが必要なの。母ちゃんも!


 いつもなら、授乳させれば落ち着く。


 今回は、そんな誤魔化しは効きそうに無い。


 泣き止んでは、いる。


 愚図っては、いるけれど。


 焦っても、どうしようもない。


 ずっと、抱いていよう。


 きれいな目、モチモチのほっぺた。


 離れるくらいなら、食べちゃいたい!


 「ハムッ!」


 「ママ、痛い!」


 「我慢、しなさい!」


 「なんでよ、ボクもママを!えーん、ずるいよ。」


 短い手足をバタバタさせて、駄々っ子になった。


 「ユウナ、正直に言いなさい。ママを置いて行こうと、したでしょ?」


 「…、違うよ。」


 「ママだけじゃない、ここに居る皆の前から消えようとしているんでしょ?」


 「違うよ、ママの馬鹿!違うもん!違うもん!」


 「どうした、ママに又怒られたのか?」


 「あっ、パパ。」


 「ユウナが、早くお嫁に行きたいんだって。」


 「ダメだっ、まだ子供なんだから!もう、ずっとお嫁なんかに行かなくていいから。」


 「ママっ!」


 「だから、ダメだって言ったでしょう。パパが、落ち込んじゃうわよ。」


 「全く、そんなに慎吾がいいのか?じゃあ、慎吾をもらってくるか。」


 「父さん母さんに、一生恨まれるわよ。」


 「そうだな、だからもう少し待ちなさいユウナ。」


 「はぁ…、ママ。ボクの、お母さん。」


 


 


 



 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ