七日市の一本坂。
「じいじ、先にモンブラン寄ってよ。」
ママの実家に寄って服を取りに行ってからの方が、無駄な行程が無い。
「ユウナ、先に食べたいのか?怒られるぞ。」
「お兄ちゃんじゃあるまいし、ボクはそんな意地汚くないよ。」
先から、後ろの車からずっと変な気配を感じていた。
銀色の、何の変哲もないバン。
ボクは、そっとセーラーマーズの束帯にオリハルコンの杖を挿す。
旧国道の一本坂に差し掛かると、急に後ろのバンが追い越しをかけてきた。
「何だ、こんな所で!」
そして、車を横にして前方を塞いだ。
「みんなは、車の中から出ないで!」
バンから、山伏の格好をした男達が数人出てくる。
山伏なのに、似合わぬマシンガンを皆持っている。
「どうやら、サンタさんじゃなさそうね。貴方達、葛城の土蜘蛛でしょ?」
「ほう、我らを知っているのか?せっかく、八瀬の童子に化けておったのに。」
「ボクに敵う訳無いのに、何故つけて来たの?」
「王女様、間もなく代替わりが起こります。我ら土蜘蛛や安曇の一族は、それに合わせて蜂起する所存。我等には、頭が必要なんです。王女様、貴女を何としてでも連れて帰りたい。我々と、御同道願えないでしょうか?」
「ダメ、ユウナは渡さないわ!」
みんなが、ボクの前に立ちはだかった。
「イクママ、危ないよ。」
「何、言ってるんだ。孫が誘拐されそうなのに、黙ってみておるじいじがいるか?」
「ユウナ、俺が守ってやるからな!」
「お兄ちゃん、かっこいい!」
「あのー、すいません。」
銃をしまって、土下座している土蜘蛛の人達。
「何、何なの!ユウナは、私のかわいい孫なのよ!」
「いや、そうでは無くて。いきなり、銃を突きつけてしまって。都の者が、手を伸ばしている可能性もあるかと。我々は、奈良の修験者です。王女様の母君の、配下でした。母君を守れなかった悔しさをずっと抱えて、閉塞しておりました。都の者が王女様を狙っていると知って、いても立ってもおられず。」
「みんな、大丈夫だから。話は、わかった。其方等の言うことも、理解は出来る。」
「では、我等と共に!」
「ボクは、女王になる気は無い。そして、都の者とも敵対する気は無い。其方等が、王国の復活を望むのは勝手だ。だからと言って、こちらを巻き込むな。ボクが動けば、数多の者が死ぬ。結果、王国が出来てもそれはただの欺瞞だ。なら、今の国家体制の方がマシだ。恐らく、我等の様な弱者は増え続けるだろう。それでも、平和でありたい。子供が、夢見る世でありたい。其方等も、戦う暇があったら世を慮ってやってくれ。こちらから、九尾弧を遣わす。何かあれば、ボクも相談に乗る。今日は、クリスマスだ。異国の偽神でも、子供には楽しいイベントだ。一緒に、来るか?皆も、喜ぶぞ。」
「いえ、このまま帰って皆に話してみます。すいません、ただの幼児と思って侮っていました。申し訳ありません、鬼族の忠告通りでした。」
「あぁ、役小角の眷族か?ボクのパパの、おじいちゃんだよね。その内、パパも遊びに行くかも。」
「えっ、小角様の孫がパパ?王女様の、お父様なんですか?」
「そう、ママはハイエルフの聖女様だよ。ちなみに、そこにいるじいじとばあばはママの両親だからね。」
「はっ、大変な粗相をしてしまいました。祖父母様、これ三輪そうめんと奈良漬けでございます。どうか、お納めくださりませ。」
「これは、ご丁寧に。お返しと言っては何ですが、黒霧島です。一本しかありませんが、宿で楽しんでください。」
「それでは、我等はこれで。九尾弧様に、よろしくお伝えください。」
「じゃあね、気をつけて帰ってね。」
「何だったの、あれ?」
「イクママ、これからどんどん増えるよ。ああいう輩。」
「ユウナ、何か大人みたいだったぞ。」
「うん、そうだね。実は、ボクはおばあちゃんなんだよ。」
「ヒエ~、妖怪子供ばあちゃんだ!」
「お兄ちゃん、酷い!」
「ハハハ、慎吾。ユウナは、子供なのに大学の先生になるくらい賢いんだ。お前も頑張らないと、由香ちゃんに見捨てられるぞ。」
「比較する対象が、間違ってるよ。」
「お兄ちゃん、運動神経抜群じゃん!」
「そうだな、ユウナは自転車も乗れないもんな。今度、教えてやるからな。」
「うん、お願い。じゃあ、モンブラン行こう。」
モンブランに、着いた。
「あらぁ、ユウナちゃん小っちゃくなったねぇ。」
何か、違う。
普通は、大きくなったねだよ。
「ボクの事、わかるの?」
「高校生の頃、いつも生シュークリーム買いに来てたでしょ。今日は、お姉ちゃんと一緒じゃないの?」
「うん、今日はママの家族と来たの。」
「娘が、いつもお世話になってて。」
「ユウナちゃん、ママって?」
「そう、お姉ちゃんねママになってくれたの。パパと、結婚してくれたの。だから、おじいちゃんとおばあちゃんとお兄ちゃんなの。」
「それは、よかったね。生シュークリーム:いっぱいオマケしてあげるわね。」
「やったぁ、お兄ちゃんにもあげるね。」
「おぅ、ユウナはいい子だな。」
注文していたホールケーキももらい、ママの実家に向かう。
「イクママ、又これ着るの?」
「大きくなったら、着れなくなるからね。」
ママの小さい頃の着物、派手であまり着たくない。
ママみたいにキレイな女の子には、似合っただろう。
キレイでないボクには、あまり似合わない。
セーラーマーズのコスプレしている自分が、言うのもなんだが。




