糸。
ボクは、やっと女の子になれた。
中学の保健体育の授業で、女の子の生理に付いて先生が説明していた。
何人かは、もう初潮があるらしく何だか回りくどい説明だった。
部活でたまに女子部員が休むのは、生理のせいだと麻里お姉ちゃんが教えてくれた。
当時同級生だったママも、初潮は既に終えていた。
男の娘のボクには来るはずも無く、何の事やら。
中学に入ってから人間の言葉も解る様になって、だいぶ虐められる事も少なくなった。
ただ、学校側が困ると言う事でセーラー服で通学するのは苦痛だった。
普通、逆じゃん!
学生服似合わないからって、女装して学校に来いって。
まぁ、先にモデルで売れちゃったからなぁ。
三浦のおばちゃん、学校に圧掛けたんだろうな。
剣道部も、麻里お姉ちゃん目当てで急に部員増えたし。
小学校の時野球部のエースだったとか、陸上部の記録保持者だとか凄い人ばっかり。
ボクは、女子部員とまったりするからいいけど。
カードゲームしたり、占いごっこしたり。
邪魔にならない様に、道場の隅っこでやったよ。
キャプテンの藤本先輩は怒らなかったけど、何故次期キャプテンの柴崎君は怒るかな。
女子に、嫌われるぞ。
はい、夏の総体。
ボク、男子のチームの先鋒です。
しかも、チーム二枠の個人戦も出ますね。
因みにもう一人は、牙狼族の省吾です。
執拗に、ボクに迫ってくる変態ヤンキーです。
部活の度に、チューさせろとかオッパイ触らせろとか。
中学生のクセに、口髭はやしてグラサンかけている番長さんです。
牙狼族だから、ボクが〈伏せ〉って言えば大人しくなります。
でも、気持ち悪いです。
省吾の彼女は、一学年上の天使と呼ばれている美少女です。
黙っていれば、クールで喧嘩も強いイケメンなんです。
でも、変態です。
ボクの次に、剣道は強いけど。
ボクには、類い希なる反射神経があります。
そして、刹那に状況を判断する能力もあります。
運動神経が無くても弩力が脆弱でも、関係無く相手を制圧できます。
だって自分以外、時が停まるんだもん。
簡単だよ、剣道なんて。
人の三倍練習するのは、ちょっとしんどかっったけど。
だから、高校で全日本選手権王者になれた。
たぶん、中学生で出ても大丈夫だったと思う。
これは、フェンリルだからじゃない。
ボクがワンコだった頃、死に物狂いで身につけた。
喰われる側に、ならない為に。
そして、ボクは女になってしまった。
ミミが、言ってた。
ボク以外に、フェンリルはいないって。
ボクが、誰かの子供を産まなきゃならない。
誰の?陽介とか、ムリだろうな。
陽介は、ボクの眷族だ。
慎吾お兄ちゃん?
いやいや、由香お姉ちゃんと幸せになってほしい。
どうせ、このままいったらボクは一人ぼっちだ。
誰かと幸せに暮らすなんて、出来っこない!
パパもママも、ボクを置いてきぼりにするんだ。
だったら、母様の所に行きたい!
母様、何でボクを一人ぼっちにしたの?
母様にとって、ボクはどうでも良かったの?
又、泣きながら眠っていた。
なんだか、暖かい。
あっ、ユキだ。
そっか、ずっと抱きしめてくれてたんだ。
何か、動いた。
ユキの、子供達だ。
(ユウナ、私達が居なくなってもこの子達がいるわよ。そして、又この子達の子供が。)
「でも、それはユキじゃないよね?」
(えぇ、私は貴女より早く女王様の元へ行くわ。)
「ずるいよ、ボクを置いて行かないでよ。」
(私だって、ユウナのそばにずっといたい。私は、貴女の姉だもの。貴女と紡いだ糸をずっと、見つめていれたら。私の糸は、子供達に紡がれるわ。その先も、幾年月も。貴女には、紡がれた糸が沢山あるでしょ?一人ぼっちじゃないのよ。その糸を撚り合わせて、もっと太くしなさい。)
「ボクの糸…。ユキの糸…。母様の糸。みんなの糸!たくさんあるね、ユキ。」
(そう、貴女にはいろんな人の糸が紡がれているの。だから、もう少し楽に生きなさい。)
「ユキお姉ちゃん、ボクつらいよ。誰も、助けてくれないよ。」
(甘えなさい、もっと。みんなから甘えん坊と言われているけど、全然足りないわ。甘えるふりはやめて、全力で甘えなさい。)
「エヘヘ、ユキお姉ちゃんお腹空いた。」
「クーン、クッ!」
ユキの首カバンに、バームクーヘンとメロンオレが入っていた。
「ありがとう、ユキ。元気な子供、産んでね。」
「クン、ワンッ!」
「あれま、ユキ。悪かったね、身重なのにユウナ押しつけて。」
「おばば、ユキお姉ちゃんにもらった。」
「おやつまで、あげて。ありがとうね、ユキ。進藤さん達、来たわよ。郁恵ちゃんだけ、呼んで来るね。ユキ、ユウナをみてておくれ。」
「ユウナ、おめでとう。ほら、ばあばがナプキンの使い方教えてあげるからね。」
「ほんじゃ、私は夕飯の支度してくるで。郁恵ちゃん、後頼むよ。ユキ、行こうか。」




