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ネメシス戦域の強襲巨兵  作者: 夜切 怜
ネメシス戦域外伝

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ソウルイーター

「これから話すことは内密で頼む」


 コウの言葉に二人が首を縦に振る。

 過去かつてない内容になる予感がしていた。


「六番機がアシアを救った。そしてフランがいうには六番機の声が聞こえたというんだ。――侵略者、殺すべし。とね」

「六番機が?」

「シルエットは会話可能ですが…… 侵略者を断じて討てとは……」

「あの時はエウロパがアシアとおのれを置換して勝利宣言しようとした瞬間、六番機がエウロパの魂を穿ち抜いた。解析の結果だが、そうとしかいえない」

「南極にあった極点管理施設上で、エウロパが悲鳴をあげた時の話ですね?」


 パルムが熟考してコウに確認を求めた。

 コウは頷き、肯定する。


「エウロパは二重存在だった。惑星アシアと惑星エウロパ、両方が本体だったといえる。その本体を無視して、六番機は基底プログラムにダメージを与えた」

「では五番機も同様のことが可能だと?」

「無理だ。あれは六番機固有の潜在能力なんだよ」


 コウは即座に否定して首を横に振る。


「ラニウスの初期ロット八機は北極星と北斗七星の化身である妙見菩薩の概念がインストールされている。これは兵衛さんにも確認を取った」

「南斗星は生の、北斗星は死の概念を司る。そうでしたね? 兵衛殿の北辰一刀流由来ということですか」

 

 パルムは熱心に地球文化を学んでいる。とくに兵衛やコウが関与している分野は特に。

 そして納得した。


「六番目の星はアルコル。死兆星を伴う星」

「そういうことだ。五番機の潜在能力は不撓不屈。死してなお戦うことを求め続けた概念であり、六番機とは違う」

「ということはフラン頼り……ではありませんね。コウ様ならあの子をそんな危険な戦いにだすわけがない」

「百点満点だパルム」


 コウは嬉しそうに笑う。理解者がいるということは嬉しいものだ。


「しかしラニウスの初期ロットそのものには妙見菩薩の概念が込められていることも事実。だからおそらくだが、プロメテウスの火を使えば五番機も似たようなことが可能だと推測する」

「ヘルメスの肉体だけ殺しても意味はない。だからコウ様はシルエットを通してヘルメスの魂だけ殺すということですか?」

「フェンネルOSと半神半人システムは一心同体だからな。俺だけが火を使えばヘルメスの本体をどこに隠していようが、魂だけ殺せる可能性はある」

「いけません! 火の代償はとてつもなく大きい!」


 パルムの顔色が変わった。五番機とプロメテウスの火ならヘルメスの魂を破壊することも可能だろう。しかし――


「プロメテウスの火は必ず死ぬわけじゃない。あれはプロメテウスが仕掛けた謎かけの一つなんだ」

「謎かけ? 今はエターナルファイアがある。プロメテウスの火を使う必要はないはずだ」


 アノモスの認識はトライレームパイロットの認識と同じものだ。

 アテナによってもたらされたエターナルファイアは発動者の命までは奪わない。


「プロメテウスの火は相対的なものなんだ。相手のリアクターとおのれのリアクターに関わる。相手も火――魂をもつ状態で使い、先に破壊してしまえば自分の火を喪失せずに済む」

「そんな話だったな…… 基本、トライレームでは禁じ手だ」

「相手の魂を奪うようなもの。ソウルイーターとでも呼ぶべき機能ですね」

「だから対抗策もある。後出しでプロメテウスの火を使うことだ。殺せなかったら、死ぬ。また機体差や技量の差で結果は簡単に覆る」

「そうはいってもプロメテウスの火は出力が跳ね上がり、ウィスによる高次元投射装甲も要塞エリア同様に硬くなります」

「十秒だ。例外はない。――俺が最初にプロメテウスの火を使われた時、相手が自爆したかと錯覚したほどだ。早くても動きが読めたら容易い。相手が初心者ならなおさらだ」

「そんな真似が出来るとは。ビッグボスと呼ばれるだけはある」

「まだ五番機がC型ですらない時の話だよ。そうだな。あとは知られていない仕様はかなりある。例えば後部座席の人間がプロメテウスの火が使えることは知っているな? ウンランがユートンの時使ったものだ」

「ああ。それはしっている」


 アノモスもまたあの偉大な構築技士の散り際に感銘を覚えたものだ。

 未来を繋ぐ死とはああいうものか、と。


「前のパイロットがプロメテウスの火を使える場合、二十秒に延長可能になる」

「え?」

「なんだって。二人分の魂を燃やせるということですか」

「十秒尽きたら後部座席の者が死に、さらに十秒以内に倒せないと機体は爆発するが」

「それでもプロメテウスの火が二十秒なら…… 確実に相手のリアクターを止めることができる」

「確実ではないな。先にリアクターを止めるだけだ。なんとなくだが、相手がプロメテウスの火を使ったらこちらもわかるからな。十秒生き残ることに撤するか、後出しで火を燃やすか」

「後出し有利ですね」

「だからプロメテウスの火は謎かけの一つなんだよ。先に火を使い倒すか。火を温存するか。後出し有利は火という自爆措置に対しての対抗手段でもあるんだ」

「なるほど……」


 南極決戦でもプロメテウスの火は使われた。

 確かに生きていた者が多かったし、倒しきれずに爆散した者もいる。


「機体差が激しいと、それだけで特攻だからな。逆にいえば機体性能を補える奥の手ではあるんだが」

「例えばベアが不意打ちでプロメテウスの火を使ってきたとしたら、油断しますね」

「そういう戦術が流行しなかったのは、比較的生存率が高いMCSで、確実な死というリスクを受け入れる者が多くなかった。半神半人の連中ですら、ヘロットにさえ使うことは強要できなかった」

「俺なら絶対死ぬぐらいなら、命じた奴を殺すかもな。ヘロットは思考能力を奪われているとはいえ、生活ができる程度には残っている」

「色々と実験はしたらしいが、詳細までは聞いていないからな。人命リスクが大きすぎる。それに……」


 コウが言おうとして黙り込む。

 アノモスが自分の身に関わることだとすぐに察した。


「何をいわれても気にすることはない。ファミリアに関することでも、だ」

「そういってもらえると助かるよ。ファミリアもプロメテウスの火を発動可能だ。正確にいうなら、発動してしまうものなんだよ。テレマAIが最適解を追及してファミリアの気持ち。寄り添いたい相手を護るために残された最後の手段なんだ」

「できる限り、そんな真似はさせないようにしないとな」

「その通りだ」


 アノモス自身、ファミリアたちに護られ拾った命であるという自覚はある。

 ファミリアたちにプロメテウスの火を使わせてはならないと改めて誓った。


「プロメテウスの火に戻すが、ヘルメスが焦ってプロメテウスの火を使ってくれたら拾いものだ。しかし俺が先に使うわけにはいかないが剣の腕はあいつのほうが上。奇襲で俺が使うしかない。つまり死ぬ可能性が高いということだ」


 その言葉にじっと耳を傾けるアノモスだったが、はっと顔をあげた。


「待ってくれ。方法ならあるんじゃないか」

「フランは最前線に出さないぞ。六番機はフランのものだ」

「違う。TAKABAの博物館に封印されたラニウスの初期ロットがあったはずだ。MCSは兵衛さんが使っているとはいえ、借り受けて俺のMCSと同期させて改修すれば同じ事が可能になる可能性は高い」

「却下だアノモス。子供が生まれるお前が先に死んでどうする。その手段は俺が万が一敗れたあと検討することは許そう。しかし今はダメだ」

「ラニウスの初期ロットは八機のみ。そのうち所在がわかっている一番機と五番機、六番機のみ。残りは捜索中なのですが……」

「残っているとは思えないな。装甲筋肉は整備性が劣悪だったし、パーツ入手も限られていた」


 コウが苦笑した。売れなかった理由も今なら理解できる。

 惑星アシアには装甲筋肉を扱う能力がなかったのだ。


「つまるところ、俺がやるしかないわけだ。お前達に話した理由のすべてだな」

「笑って言うことではないですね」


 ぶっきらぼうに不服を告げるアノモスに、パルムが首肯して尻尾を振り回しながら激しく同意した。

 

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!


ヘルメスの殺し方を推測中です。

問題はどうやって殺すかなんですが。剣の腕はコウより上。実戦形式ならワンチャンですが7:3ぐらいでしょうね。3がコウです。


六番機の権能が強すぎる件。

二種発動ですからね。みんな女の子には過保護なんですよ。ほら、元がアテナとヘファイトスですからね。

実はエウロパへの打撃は他の超AIも驚愕しているはずです。一番冷や汗をかいているのはきっとオケアノス。


兵衛の話をするか、惑星間戦争の話を先にするか。悩んでいます。

がんばります!


応援よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
殴り込む前に、そも相手の本拠地を掴めてませんからね。 SF船長未来では、アステロイドベルトの隠された小惑星を光学機械で全部確認したエピありましたけど 航路全てが記録されていればこそ。ヘルメスのは航路記…
北斗の拳が準神話枠だな 現実では見えなくなると寿命が近いだけど
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