仲間と認めてもらうには。
休日で油断していました。
続きをどうぞ。
次の日、時間通り10時に隊長室に行くとラメールが昨日よりも多い資料を片付けていた。
「ん、ああ、来た?じゃあ、行こう。」
彼女は昨日と同じように問答無用で別の場所へ向かっていく。昨日はトレーニングルームに行ったが今日は反対側のミーティングルームに向かっている。
ミーティングルームは隊ごとに一部屋当たっており、Ω隊は奥の方にあるためあまり中を覗く機会はない。だから、ミーティングルームで何が行われているのかもわからない。普通は月1の集会や出動の前の連絡、作戦作りに使われているはずなのだが噂によると第2のトレーニングルームになっているだとか、賭博の会場になっているだとか、喧嘩ばかりの無法地帯だとか、そもそも作戦なんて必要ないから使わないなどと言われている。
だが、こうして向かっていることから使われていないという説は違うようだ。
そうこう考えている内にプリムール隊のミーティングルームの前に着いた。
中の様子は伺えない。
ラメールは短くノックを2回した後、扉を開けた。
中はとても騒がしく、屈強な男たちが談笑しており、こちらに全く気がつかない。
ラメールは部屋の前方にある台に荷物を置き、俺に隣に来るように合図を送った。
「静かに。」
決して大きくないが重たく響く声を出し、一瞬にして周りは静まった。
「今回集まってもらったのは新メンバーの紹介と今後の予定についてだ。」
ラメールはいつもとは違う喋り方であり、真面目モードなのかもしれない。
「まず新メンバーの紹介だが、今日から仲間になるキラ・マサトだ。はい、自己紹介して。」
え、いきなり振られるのか?緊張してたどたどしく言葉を紡いでいく。
「え、ええっと。お、俺の名前は吉良雅人です。16歳で前は機動部隊α−4のオーバーチュア隊に所属してい
ました。武器はアサルトライフルの瑠璃を使っています。よ、よろしくお願いします。」
と言ってお辞儀をすると、どこからともなく
「オーバーチュア隊?それって前回俺たちがMa討伐の時に全滅したっていうあの無能な隊か?」
「全滅したならなんで生きているんだ?」
「いや、確か1人だけ生還者がいたって聞いたような…。」
と所々から声が聞こえた。
すると突然1人が立ち上がって
「なあ、Maが倒せない隊のメンバーが加わったところで何になるんだ、隊長サン?」
と言った。いかにもガラが悪く強そうには見えない。だがΩ隊のメンバーなのだからそれなりの実力はあるのだろう。
「そうだ!ただの悪運の強いやつだったら足手まといだ。」
という野次も飛び、再び騒ぎ始めた。
どうしたらいいんだ、これ。口で言い返したいのは山々なのだが実力は彼らに勝てないのは目に見えている。
その騒ぎを見ていたラメールは
「静かに。」
と先ほどと同じように声を出し、場を静まらせた。
「そんなに文句があるなら、戦ってみればいいじゃない。トレーニングルームは大きめのやつ取ってあるから。」
と言った。
男たちは騒ぎながら一斉に立ち上がり、扉から出て廊下を走っていった。
ええ…、全然付いていけないよ。
「大丈夫、マサト?昨日のようにやればいいのよ。」
「それって水鉄砲のやつか?」
「そ。一発当たったらそこで終わりのやつ。あと瑠璃に似たやつだと複数を相手するには辛いだろうから私の貸してあげるわ。昨日の動きを見ていたら大体戦い方は分かるでしょ?」
いや、わからなくはないけど1対多数を本当にやるつもりなのか…。
気が重いまま歩いていき、昨日と同じトレーニングルームに入った。
わかってはいたが中には男たちがそれぞれの水鉄砲を持って待っていた。
大柄の男たち全員が水鉄砲を構えているなんてシュールすぎる。
「ルールはいつもと同じで、一発当たったら終わり。いっておくけど私に昨日この子一発当ててるからね。さ、構えて。」
と言って俺に昨日ラメールが使っていた水鉄砲を渡してきた。周りが俺がラメールに一発当てたからという言葉に戸惑いが見える。
「じゃあ、頑張ってね。」
といって肩を叩かれた。結構痛いんだけど。
「はい、カウントがゼロになったら始めまーす。私に当てたら吹っ飛ばしてあげるから。
3
2
1
スタート!」
一斉に男達は俺に向けてインクの雨を浴びせてきた。俺は横に走りながら避けつつ、水鉄砲で次々と相手に当てていく。当てていくのだが…
あれ、なんか体が軽くなったような…。それに心なしか相手の動きが遅く見えるようになって初めて扱う型の銃のはずなのにかなり命中する。昨日のラメールと同じような動きを真似て見るとさらに命中して面白い。
「おい!全然当たんねえぞ、こいつ!」
数分すると近距離系の武器を大体倒し終えたが、射程距離が相手の方が長くこちらの攻撃が当たらない。
遠距離系の武器の長所は遠くから敵に当てられること。
なら欠点は?
答えは『近くの敵には通用しにくく、連射できない。』だ。
遠距離系の武器は遠くの敵に強い一撃を当てるため、そして敵を近づけさせないために使われている。
俺は男達に急接近し、連射しながらくるりと一周した。
それだけでどんどん敵が倒れていく。
相手が俺に球を撃っても軌道が見えるので簡単に避けられる。
そして多分5分くらい経った頃、全員に球を命中させ、対する俺は一度も被弾していない。
「そこまで!マサト、中々よかったわよ。」
ラメールは俺に微笑みかけながら言った。彼女の足元には何人か転がっている。気絶しているようだ。
うん、本当に間違って当てなくてよかった。
「これでみんなマサトの力を認めたわね。」
とラメールが言うと周りの男たちは起き上がり、
「ああ、すげーよ。全然当たんなかったもん。」
「ほんとだよ。舐めてかかってすまなかったな。」
と言ってきた。さっきとは正反対の反応に俺は戸惑いながらも
「あ、ありがとう。」
と礼を言った。そこにラメールが
「だが、自分の実力を見誤ると死に繋がるからね。精々特訓に励むといいわ。」
と言って肩をポンと軽く叩いた。
その瞬間、先ほどの撃ち合いの疲れが襲ってきた。
さっきまで感じなかったはずなのに…。
「さて、じゃあ今後の連絡よ。この隊が本部の命令から自由に動ける期限はあと1ヶ月。
そろそろ余裕がなくなってきたところなんだけど、シエルの居場所がわかったわ。」
その言葉にスキンヘッドの男が反応する。
「おいおい隊長、それ先月も言ってなかったか?」
「今回は絶対に場所は変わらないわ。シエルが捕まっているのは敵の本拠地、月の横にある小さな宇宙ステーション。そこにシエルはいるわ。」
「へえ、裏付けは済んでるのか?」
「彼女の生命反応があった、でいいかしら?」
「上出来だ。なら期限はいつだ。」
「1ヶ月後。自由に動ける期限ギリギリまで強化トレーニングを怠らないようにして、そこから最高の状態で行くわ。」
「OK。じゃあ早速始めないとな。」
と男達が動き始めたところにラメールは
「そのまえにこの部屋の片付けしてね。あなた達が負けたんだから。マサト、行くわよ。」
と言って俺を引っ張って部屋を後にした。
部屋の扉を閉めるとラメールは
「マサト、あなたも疲れてるでしょう。さっさと部屋でゆっくり寝なさい。明日から厳しいメニュー組むんだからね。」
と言って俺の腕を離し、隊長室に戻っていった。
俺はふらふらになりながらもなんとか部屋に戻り、ベットに倒れこんだ。
限界をもうとっくに超えていたのか横になった瞬間、俺の意識はどこかへ飛んで行った。
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