決して遊びではない。
スプラ◯ゥーン?いいえ、トレーニングです。
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その後も必死にリハビリを行い、丁度目覚めてから1ヶ月が経った。
今回の主治医もワルテ先生であり、前回よりも治りが早いと驚いていた。
たしかに前回の方がまだ重症だったが1ヶ月ほどで完治と言われた。
今回も約1ヶ月で完治するとは自分でも驚いた。
さて、俺は今どこに向かっているかというと、とある隊長の部屋だ。
1ヶ月前の返事をしに来たのだ。
扉の前までやって来たものの、流石に緊張する。
だが、ここでうじうじしていても始まらない。
意を決してノックした。
「入っていいよ。」
中から小さな返事が聞こえた。
扉を開けて入ると、正面にある机に沢山の書類が散らかっている。そしてそこで椅子に座ってひたすらなにかを書いているラメールがいた。
背後に窓があるせいで逆光になって表情が見えない。
「報告書ならいつもの机の籠に置いといて。」
とそっけない言葉を投げかけられた。だが報告書なんて聞いていない。まさか隊の異動には何かしらの書類が必要なのだろうか。
いつまでたっても動かない俺に対して疑問を持ったのか頭をあげ、ようやく部屋を訪れた客が俺だと気がついたようだ。
「ああ、マサトか。ごめんね、資料作りがなかなか終わらなくてね。」
「あ、そうなんですか。」
「で、今日はなんの用で来たんだい?」
俺は覚悟を決めていた事を言おうとした。だがさっきより緊張してうまく話せない。これを言ってしまったらもう一度戦場に向かうことになる。Maみたいなやつがたくさんいるかもしれない。怖い、とても怖い。もう一度戦ったら今度こそ死ぬかもしれない。
だけど、ここで言わないとシエルを助けられない。
ちらりとラメールの顔を見る。彼女は優しそうな顔でこちらの答えを待っていた。しかし、彼女の瞳は紅く輝いており、こちらの答えを急かしているようにも見えた。
「お、俺は戦いたい、シエルを助けたいです。だから、隊に入れてください。お願いします!」
緊張のせいか敬語になっていた。
彼女はふっと軽く笑って、
「その答えを待っていたよ。」
と言った。
「わかっていると思うけどわたし達はΩの数字を持っている。その意味がわかるよね?」
Ωは「終わり」を意味する。これは最後、つまり最終防衛ラインを守るいわば最後の砦のような存在であり、滅多に戦場には出ないもののその実力はほかの隊員との力は桁違いだと言われている。ちなみに俺が今まで所属していたαをもつ隊は「始まり」つまり最前線を表している。
「ああ。そしてそれだけ戦力がないと敵の本拠地が攻略できないということだよな?」
「そう。私が隊長ってこともあるけど、Ω隊が行かないとまず勝ち目は薄いでしょうね。もしかしたら『機械仕掛けの神』———Maなんかが沢山いるかもしれないから被害は免れないでしょう。ねえ、もう身体は大丈夫かしら?」
「ああ、リハビリも大方したし、動き回っても大丈夫だよ。」
「なら、早速行きましょう。」
そう言って彼女は席から立ち上がり、部屋から出て行こうとした。
「え、行くってどこに?」
「決まっているでしょう。トレーニングルームよ。」
ラメールは俺が部屋から出るように促し、俺がよくわからないまま部屋から出ると鍵を締め、トレーニングルームのある西側に向かって歩き出した。俺は黙って従うしかなく、その後ろを歩いて付いていくことにした。
道中でラメールはこちらを振り向き、質問を投げかけて来た。
「マサトはシエルのことが好きなの?」
「え、どうして?」
「だって、シエルを助けたいってずっと言っているから。やっぱり好きな子のためになら、なんでもしてやるみたいなことかなって。」
予想しなかった質問に思わず動揺してしまった。
「べべ、別に好きとかそういうわけじゃ…。」
彼女はニヤニヤしながら質問を続けてきた。
「ふーん?じゃあなんで?」
「…あの時、ネルにシエルを助けろって言われたんだ。なのに俺はネルとの約束を守ることが出来なかったんだ。だから、今度こそ必ず助けなきゃなんだ。」
いつのまにか俺は拳を握りしめていて、手の先が冷たい。
ラメールはつまらなさそうな顔をして
「なーんだ。結構まともな理由だったな。面白くない。」
と言った。そしてそのあと笑顔で
「ちゃんとした目的があるならきっと出来るわ。だからまずは修行ね!」
と言ってトレーニングルームに走っていった。
「え、ちょっと待ってよ!」
俺は追いかけるしかなかった。
「さて、まずはこれを使って。」
「…なにこれ。」
渡されたのはインクの入った水鉄砲だった。なんとなくいつも使っている瑠璃に形状が似ている気がする。
「これで5分間撃ち合いをしてどちらが汚れないかを競うの。」
「え、でも、トレーニングルームを汚してしまうんじゃ…。」
「いいの、後で掃除すればいいだけだし。じゃあ、行くよ!」
言うが速いか彼女は水鉄砲を撃って来た。俺は慌てて間一髪左に避けることで避けることが出来た。
「お、いいじゃない。その調子で避けて、こちらに撃ってきなさいよ。」
と言ってくるが彼女の手は止まらない。それに撃ってくる球が全て避けなければ心臓に命中していると思えるほどの正確さがあった。それに避けても手足などに当たってしまう。
この状態で撃ち返せとか無理に決まっているだろう!
止まったらそこで必ず当てられるから止まるわけにはいかない。だが止まらないと当てることも難しいだろう。だからといって動きながら撃つと楽々と避けられてしまう。
「撃ち返してこないと勝てないわよー。」
呑気なラメールの声が聞こえる。
彼女は連射出来るタイプの水鉄砲でこちらに隙を与えてこない。なら俺の持っているこれも何かしらのことが出来るんじゃないか?例えば、瑠璃はアサルトライフルの中でも射程が大きい。
試しに大きく部屋の隅に後退し、構えた。ラメールははっとして距離を詰めてきた。おそらく彼女は射程の不利に気がついていたのだろう。
だが好都合だ。むしろ近づいて来てくれた方が当てやすい!
引き金を引く。
撃ち出された水の球はラメールの身体に向かっていった。
確実に当たっただろう。
だが次の瞬間、避けられて水の球は彼女の背後で弾けた。
「危っな…。」
彼女はそう呟いてもう一度構え、撃って来た。
俺は再び避けて反対側の壁に行き、再び撃つための準備をしようとした。
だが。
ピーッ!!
虚しく5分の合図が鳴る。
結果は俺が手足など至る所にインクがついており、ラメールも少しインクが付いているが当てていないため、おそらく地面に溜まっていたところを勢いよく踏んで跳ねたのだろう。
つまり、俺の負けだ。
「最後は本当に危なかったわ…。初めての武器でもこんなに適応できるなんて思ってもいなかった。」
「いつも使っている瑠璃に似ていたんだ。だから射程を活かすこと以外考えられなかった。」
「そうね、瑠璃は普通のアサルトライフルの基本向上の上に射程を伸ばしたものだったわね。ま、私もいつも通りの武器じゃないと負けそうだったし。」
いつもの武器というのは彼女が戦闘で使っている物だろう。
水鉄砲は小柄で連射性能があったから実戦で使用しているのもそれに近いものなのだろう。
「さて、じゃあ掃除しましょうか。」
彼女は部屋の隅にあったボタンを押した。
すると地面が傾き、危うく転びそうになった。
「気を付けなさいよ。はい、じゃあこれで下に排水溝があるからそこに流してね。」
と言ってモップを渡して来た。
水流すからねーという声が聞こえて来たが気にしない、気にしない。
水で浮いて来たインクはモップで軽くこするだけでするすると溶け、下に落ちていく。
ラメールもモップでインクを落としていき、10分ほどで終わった。
途中から腰が痛くなったが、いい運動にもなった。
「まさかトレーニングルームにこんな機能があったなんて知らなかった。」
「でしょうね、ここはΩ専用の部屋ということで通してるし。」
大きく伸びをすると部屋を戻したラメールが声をかけて来た。
「あ、そうだ。明日、隊のみんなに挨拶してもらうから朝の10時に私の隊長室に来て。」「わかった。今日は終わりか?」
「ええ、流石に動きすぎだから体、休めなさいよ。じゃお疲れ様。」
「うん、お疲れ。」
部屋を出て、廊下を歩き部屋を目指す。さっきの掃除でインクは取れているものの全身がビチョビチョで寒い。部屋のシャワーを浴びて温まってから休もう。
にしてもなぜさっき当たらなかったんだ?あの距離で普通は避けられないはずなのに。
やはり隊長と呼ばれるほどの実力なのだろうか。
質問、意見、文句等あればメッセージでもなんでもいいのでください。




