目覚めたら仲間がいなかった。
順番間違えた〜。
最近忙しくてごめんなさい。
結局守りきれなかった。
『自分はいつも助けてもらうくせにいざと助けようとすると助けられない卑怯者。』
仲間を助けるために戻ったはずなのに。
わかってるよ、俺は無力なんだって。
『自分の力不足ばかり呪って、結局命を賭けることに躊躇してしまう臆病者。』
口ではなんとでも言えるくせに結局は自分は死なず、シエルを助けられなかった。
仲間と死ぬことすら許されない。
『なら、取り返せばいいじゃない。』
取り返すって何を?
『失態の多くを、そしてシエルを。』
俺は無力なんだ。そんなこと、できるはずもない。
『味方がいる。協力してくれる仲間が必ずいる。』
味方?仲間?ネルもシエルもおそらく隊長たちも死んだ。
いない、いるはずないんだ。
『さあ?そこは探すしかないわ。』
待って、どこに行くの?君は一体誰なんだ。
俺を1人にしないで。
『いいから、さっさと起きなさい。じゃないと助けられるものも助けられないわ。』
目覚めると白い世界。目に入ってきた光が痛い。
思わず一度目を閉じて覚悟を決めてゆっくりとまぶたをあげる。
再び目に飛び込んできた世界は見たことのある白い天井が最初に見えた。
どうやらベッドで寝かされているようだ。
次に少し目を動かして右のほうを見た。やはり、窓があった。
窓の外は雲が空を覆っていた。水滴がついているから雨が降ったのだろうだ。
「…はぁ……。」
生き残ってしまった。
助けることができなかった。
少し体を動かそうとすると全身が痛い。特に腹が熱を持っている。
腹に手を持っていくと包帯が巻かれているのがわかった。
無力。自分の非力さを呪いたくなる。
「結局、何もできなかった。」
なにもできるわけがなかった。相手はMaだ、勝てるはずがないんだ。
そんな勝ち目のない戦いを挑んだ俺はバカだ。
とあの時のことを考えているとふと思った。
今日は何日だ?俺は何日寝ていたんだ。
その時、病室と廊下を繋ぐであろう扉が空いた音が聞こえた。随分と乱暴な開け方だ。
誰が入ってきたのかここからだとわからない。
期待と不安を募らせつつ入ってきた人物が目の前に来るのを待った。まさかシエルかネルか?
そして足音はこちらに近づき、カーテンを一気に開けた。
「あら、起きていたのね。さすがは『不屈の瑠璃』の持ち主ってところかしら。」
知らない赤毛の女がそこにいた。
「ん。お前、誰だよとでも言いたい顔してるね。」
「あ、いや。」
顔に出ていたのか、戸惑いを隠せない。
「まあ、良いわ。初対面だし仕方ないか。」
そう言って彼女はベットのとなりにあった椅子に腰掛けて、
「私の名はラメール・ニューライト・クレアクト。ラメールとでも呼んで頂戴な。」
と名乗った。突然の展開についていけない。
「ええと、とりあえず質問させてくれ。ラメールは一体何者なんだ?」
「私は機動部隊Ω−2、通称プリムール隊隊長で、1週間前のMa討伐のリーダーよ。」
彼女は淡々と言うがサラッと衝撃的な事を言った。
「え、今…Ma討伐って言った…か?」
「ええ、言ったわ。数人死んで、多くの隊員が怪我を負ったけどね。」
嘘だ、あんな強い相手を倒しただと…!?
「それって本当なのか?」
「そうよ、今はもうあれはただの金属の塊になっているわ。今頃は解体作業でもやってる頃合いじゃないかしら?」
よかった、じゃあシエルは無事なんだ。本当に良かった。会えたら、まず守れなくてごめんって謝って、それから…あ、もしかしたら俺が助けられたってことはネルも生きているかもしれない。だったら、3人で何か食べに行きたいな。
「それじゃあ、シエルはどこにいるの?」
シエルはMaに連れ去られた。ならば彼女はおそらくシエルの居場所を知っているだろう。シエルから会いに来ないってことは彼女もどこか怪我をして別の部屋にいるのかもしれない。
だが、ラメールは眉をひそめて、予想外の言葉を発した。
「え?シエルのことは知らないわよ?というかあなたがシエルの居場所を知っているんじゃないの?」
え。
嘘だ、だって確かにあの化け物がシエルを攫ってったはずなんだ。なのにMaが倒されてもシエルが行方不明てどういうことなんだ?
「ちょっと、詳しく話して。シエルはどこに行ったの?」
ラメールが俺の肩を掴んできた。顔が真剣で怖い。
「え、俺はシエルを助けようとしたら奴…Maに負けて、シエルが奴に自分が身代わりになるからマサトの命は奪わないでって言って。それで奴に連れてかれたんだ。」
「…シエルがMaに連れていかれたのにも関わらずMaが倒されてもシエルがいないのはおかしい…ってこと?」
俺は頷くことしかできなかった。あの時のことを思い出すだけでなにもできなかった自分に対しての怒りと情けなさが込み上がってくる。
「そう、なの、ね。本当、なのね。」
彼女は何故が口元が笑っていた。
「はは、結局『機械仕掛けの神』を倒すのは間に合わなかったってことね。ふふ、ふふふふ。」
彼女は笑っていた。だがその笑いは自虐的な意味が込められているのが見て取れた。
というか「機械仕掛けの神」ってなんだ?
そして一頻り笑って、こちらに向き直した。
「わかったわ、貴方に私の持つ情報を提供する。その代わり、うちの隊に入って欲しいわ。」
「え、いきなり言われても困る。しかも隊を異動することなんて…。」
「異動も何もないわ。あなたは今無所属なのよ。」
「…え?それって…どういう意味だ。」
「…あなたの所属するオーバーチュア隊は壊滅、貴方以外の戦闘隊員はシエル以外は全員死亡が確認されたわ。それから支援部隊も隊長含めた数名が死んで、生き残った人も多くが重体あるいは重傷を負っている。」
「え、てことはネルも…死んだのか?」
自分の心のどこかでは生きていると信じていたのに気がついた。あの状況であの出血だ。生きてるはずもないとわかっていたはずなのに。
「ネル?…ああ、ネルソン=アルノルトの事ね。彼は確か複雑骨折に内臓破裂で即死だった気がするわ。」
「…そうか。」
ネルも隊長もみんな、みんな死んだのか。
「そうそう、ネルソンといえばあなたに渡しておきたいものがあるの。はい、これ。」
そう言ってラメールはポケットから見覚えのあるものを渡してきた。
受け取るとそれはかつてシエルからプレゼントされた深い緑色のペンダントだった。
「彼の遺品の1つよ。あなたが寝ている時に似ているものを持っているのを見たから引き取っておいたの。」
「…ありがとう。」
ネルのことを考えて涙が出そうになったが今はそんな場合じゃない。ラメールに聞きたいことを聞いておかなければ後悔するだろう。
俺はネルのペンダントをつけた。
自分のペンダントに重なり、わずかに光った気がする。
俺はラメールに向き直り、質問を続けた。
質問、意見、文句等あればメッセージでもなんでもいいのでください




