雲行きは怪しく
あ、昨日投稿するの忘れてました。
謝罪も兼ねて今日は2話投稿します。
しばらくして前方にキャンプ地が見えた。あれが部隊の休憩所だろう。1番手前のテントから100メートルほどは離れた場所に車は止まり、荷物を持って降りた。ジャンルカは車に乗ったまま、
「じゃあ、お気をつけて。シエルをよろしくお願いします。」
と言った。
「ええ、もちろん。そちらもお気をつけて。」
彼は手を振って走り去っていった。
「…さて。」
俺はキャンプ地に向けて歩き出した。
空は抜けるような青空。周りには何もない荒野だ。昔はもう少し先に町があったが今では廃墟でありアーティファクトたちの住処となっているため戦場となっている。彼らは酸素をエネルギーに変換し、その他土や水、太陽光もエネルギーに変えるため、充電切れなどは基本起こさない。だからその動力源であるコアを破壊することで彼らの働きを止めることができるのだ。
「マサトー!」
前方から野太い声が聞こえてきた。見るとそれなりに大柄な人のようだ。おそらく隊長だろう。
駆け寄ってみるとやはり隊長だ。
「マサト。もう怪我の方は大丈夫なのか?」
「ええ、すっかり良くなりましたよ。」
「そうか、だが今日は後方支援に入ってもらうんだったな。ええとミニス!」
隊長は誰かの名前を呼ぶとテントの中から女の人が出てきた。
「なに?ツヴァイ隊長。」
「今日1日後方支援に入るキラ=マサトだ。」
するとミニスと呼ばれた女性はこちらを見た。
「ああ、あなたがマサト君ね。私は機動部隊α−4、オーバーチュア直属後方支援部隊隊長ミニスよ。さっそくだけど仕事頼んでもいいかしら。」
「え、あ、はい。」
いきなり仕事が回ってくるとは思ってもいなかった。
「じゃあまずは今休憩している隊員に水を配ってきてね。医療セットも一緒に持っていって。ついでに応急処置するためにね。水と医療セットはそこのテントの中に置いてあるから。」
といってミニスさんはどこかへ行ってしまった。
ええと、とりあえず水と医療セットを持っていつも休憩しているところに行けばいいんだな。
いつもはトレーの上のコップに水が入っている状態で渡されるからそれを用意してっと。
休憩スペースに向かうと何人かの隊員が座り込んで話していた。同じ隊だが誰とも話したことがなく緊張する。
「お、お疲れ様です。」
「おう!お疲れ様、ってマサトじゃん!」
「へ?」
今まで話したことのない人に名前で呼ばれて、しかもタメ口で話されたら流石に誰だって困惑するだろう。
「お前やっと復活したのか。よかったな。」
「アルノルトが寂しそうだったぞ。」
「お前のあだ名知っているか?今ドジっ子って呼ばれているんだぞ。」
最後のは聞かなかったことにして、正直自分の話題が出てくるとは思ってもいなかった。どう返したらいいのかわからないし、俺の名前が知られていても俺は彼らの名前を知らない。
「ええと…」
「お、噂をすればアルノルトとエドモンドだぞ!行ってこいよ。」
と言われるなり、背中を押された。 転びかけたがなんとか体勢を立て直せた。
ええ、勢いについていけない。よく考えたら隊長以外に話したことのある隊員ってネルとシエルだけなんじゃないか…?
と、考えながら顔を上げると前から走ってくる2人の人影が見えた。
「マサトー!」
シエルの声が聞こえた。多分あの小さい方がそうだろう。
2人は駆け寄ってくるなり、抱きついてきた。
「おかえり!」
「これで完全復活だな!」
「う、うん。2人とも離れて。苦しい…。」
ああ、ごめんと言って2人は離れたがそれにしても今日は驚きの連続だ。
「今日は支援の方に回るって言ってたよね。」
「ああ、はい。2人の分の水。」
俺は用意していたコップに水を入れて渡す。
「お、サンキュ。」
というなり飲み干すネルと
「ありがとう。」
と言って少しずつ飲んでいくシエル。
その対照的な飲み方に思わず笑ってしまう。
「なんで笑うんだよー。」
と口を尖らせるネル。
「いやっ…だって…くく。2人とも飲み方が…あまりに…ふふ…対照的過ぎて…あっはは!」
2人は互いの顔を見合わせていたが、俺の笑いにつられたのか気がつくと3人で笑っていた。
「そういえばマサト。明日から戦闘に出るのよね?」
「うん、そうだよ。」
「無茶はしないでね。」
「当たり前だよ。もう1ヶ月近くも戦えないなんて嫌だからね。」
「そう言ってまたやらかすんだから。ま、そん時は俺が助けてやるからな!」
「大丈夫だよ。そう言ってるネルが油断して助けを求めることになるから俺も助けに行くよ。」
「私もきちんと2人を助けに行くよ!私のこと忘れてないよね。」
「忘れてるわけないだろ?必ず助けに行くよ。」
と久し振りに3日ぶりに会えた反動なのか、たくさん話をした。
そろそろ、他の人に水を入れないとと思い、ネル達も休憩を終えて再びポイント攻略に向かおうと立ち上がった瞬間だった。
警告音が周りに響きわたる。
すぐに無線で連絡が入ってきた。
「南東数キロ先に『Ma』と思われる生命体が現れました。繰り替えします。南東数キロ先に『Ma』と思われ…」
身体が恐怖に駆られているのがわかる。
「嘘…。」
「なんでこんな所に…。」
そうだ。なんでこんな所に『Ma』が現れたのかわからない。あるとするならばこの隊の殲滅、そしてその先の基地だろう。今、1番近い基地は朝までいたパリ支部の基地だ。規模はそこそこ大きいため、ここを壊されると不利になるだろう。
「休憩中の隊員!」
隊長の声だ。おそらく指示を下しにきたのだろう。
撤退か、続行か。
「戦闘を…続行する!」
ネルがすぐさまその発言に異を唱えた。
「おい、隊長!今の俺達の実力を分かって言ってるのか?いくら最前線の兵士でもあの『Ma』を倒せないぜ。幾多の隊があの化け物に虐殺されたと思ってるんだ!」
「ああ、その意見は一理ある。だが、ここで食い止めなければ基地は崩壊する。援軍が到着するまで我々が食い止めなければならないのだ。」
「…。」
ネルは納得がいかないようだ。隊の命をかけてこれ以上の進軍を食い止めるか、敵前逃亡をして基地がやられるのをただ見ているだけか。
「…了解。」
もちろん、基地をやられるわけには行かない。
他の隊員も準備をし始めた。
「後方支援部隊は撤退しろ。機動部隊だけで行く。」
「待ってください!俺も行かせてください。」
後方支援部隊は撤退して、機動部隊だけで行くってことはネルやシエルは行って俺だけ逃げるってことだ。さっき助けるって誓ったはずだ。
「マサト、お前は退け。怪我から復帰したばかりなんだから無理するなって言っただろ。」
「ネル、俺はそれでも行くよ。絶対敵う相手じゃない。だから、『自分には無理だ』と判断したら仲間を呼ぶんだってネルが言ったじゃん。」
「っ…!」
すると俺達の話を聞いていた隊長は
「…わかった。マサト、お前がそんなに行きたいなら行ってこい。ネルにもシエルにもお前にも死なれちゃ困るからな。」
「あ、ありがとうございます!」
俺は傍に用意していた瑠璃を手にし、残弾や手榴弾などを確認する。もちろん使っていないため数は十分にある。ネルやシエルも同じように確認をしている。
俺たちは互いの顔を見合って頷いた。
「さあ、行くか!」
さっきまで青空が見えていた空は雲に覆われていた。
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