戦場への帰還
今日から学校です。
辛い。
目覚めてから約3週間後。
ワルテ先生に3日に一度の検診が行われた。
ネル達は3日前に戦場に向かったので会えていない。
「うん、この分なら2、3日後に戦場で戦ってもいいね。怪我の治りもいいし、リハビリの成果も出てる。」
「本当ですか!ありがとうございます。」
よかった、これでもう一度ネル達と戦える。交代で戦場から帰ってきた時にしか会えなくて寂しかったし、もし俺がいない間に2人が怪我をしていたら後悔していただろう。
「ただ、初日くらいは後方支援にいた方がいいかもね。傷口が開いても困るし、戦場に慣れる方が先になるかもね。」
「わかりました。こんなにすぐに治るなんて嬉しいです。先生の治療のおかげです。」
「いやいや、わたしはいつも通りの事しかやって無いよ。
このご時世、物資の不足と今まで機械に頼り切りだったせいで患者にあった薬の提供なんて早々出来ないからね。それよりも君の頑張りのおかげだと思うよ。リハビリもよく頑張っていたのを見ていたからね。
大体の兵士さん達は戦場にもう戻りたくない、怪我したくないって言う人が多いけど君は違った。私の予想だが君は戦うことに目標を持っているんだろう?」
「はい。俺は今回の怪我で動けなかった時に仲間に助けてもらったんです。
だから、今度は俺が仲間を助けなきゃって思ったんです。一刻も早く戦場に戻って仲間と戦いたいんです。」
「うん、その調子でいいよ。帰りたい場所、目指すべき場所、大切な人がいる—————強い想いは身体を治すって言うくらいだしね。
さ、これで検診は終わりだ。今日のうちに物をまとめておいた方がいいよ。明日、戦場に向かう車をうちの弟子に頼んで出すから。あ、あの子は地元の言語しか使って来なかったから話し方が変かもしれないけど気にしないでね。」
「何から何までありがとうございます。」
「いいんだよ。私たちには戦うことなんてできないし、これが仕事だ。私たちの命を守るために君たちが戦っているんだから、私たちも君たちを全力でサポートしないとね。」
ワルテ先生の治療を受けられて本当に良かった。検診室の扉を閉めた時、本当にそう思った。
「もしもし、ああ私だ。明日『暁の子』は戻る。だからそろそろあっちの計画も進めていい頃じゃないか?そうすれば多少は犠牲はあるかもだけど『天児』も手に入る、もう1人の方…『紅色の女』もどうせだからこの機会に処分した方がいい。奴もこちらの基地を嗅ぎつけている頃だろうからそろそろチャンスがなくなってくる。…ああ、うん、こちらは大丈夫だ。それじゃ、また。」
「ふあぁ。」
昨日は結局荷物をまとめたり、自分の部屋を片付けたりしていたからいつもよりも遅く寝てしまった。戦場にいた頃は3、4時間とかそんなに寝なくても大丈夫だったのにな。軽く伸びをして荷物を持って外に出る。荷物といっても弾薬と少量の救急セット、2食分の軽い食料、あとは愛銃の瑠璃だ。リハビリに何度か外に出て運動したが、自由に動けるのは久しぶりだ。
外では一台の車と1人の男が玄関先で立っていた。おそらくあの人が先生の弟子なのだろう。
「あなたがMr.キラですか?」
「はい、そうです。あなたが先生の言っていたお弟子さんですね。あとMr.キラって呼ぶのではなくマサトって呼んでください。」
「わかりました。私の名前はジャンルカ=ゲッダと申します。では早速行きましょう。荷物は後ろの荷台に乗せましょう。」
彼は荷物を後ろに軽々と乗せ、俺に助手席に乗るように促した。
俺が助手席に乗ると彼も運転席に乗り込んだ。
「ジャンルカさん。確かここから3時間あるフォンテーヌブローに行くんですよね。」
フォンテーヌブローとは旧フランスの郊外にある今ネルたちが戦っている場所であり、俺が怪我をした戦場にほど近い場所となっている。
「そうですよ。眠たかったら寝ててもいいですからね。」
「いえ、寝ると体が鈍ってしまうので。」
「ああ、確かにそうですね。ワルテ先生も言ってました。『寝起きで手術をするなら私のように15年は経験を詰め!』って。僕自身は寝起きはいい方なんですがワルテ先生は寝起き10分は使い物にならないらしいですがね。」
へえ、あのワルテ先生がか。寝起きでぐったりしている先生のことを少し笑えてしまう。
「ああ、そうです。マサト、あなたはオーバーチュア隊のメンバーでしたよね。」
「そうですよ。それが何か?」
「最前線で戦っている人ってやっぱり怪我をすることが多いんですか?」
「…うーん、他の隊は最前線だとそれなりに多く出てるらしいんですけどうちの隊はあまりいないですね。うちの隊と組んでる支援部隊が優秀ってのもありますけど、うちの隊のメンバーはやはり一人一人が強いからですかね。俺みたいなへっぽこなやつもほとんどいないし。」
「…怖くはないんですか?」
「え?」
思いがけない質問に一瞬戸惑ってしまった。ジャンルカも察したらしく、
「ああ、気にしないでください。」
と言った。慌てて別の話題でも話そうとしたのだろう、彼の口が開きかけたが、俺は
「いや、答えさせてください。」
と遮った。
「確かにすごく怖かった。今も本当は怖いです。大きな怪我なんてここ最近してなかったし、前回もなんとかなったから今回も大丈夫だろうと思って油断していたんです。もう二度とあんな怪我なんてしたくないし、仲間をに頼って傷ついてもらいたくはなかったんです。でも、もし逃げてしまって大切な仲間を守れなかったらって考えたんです。自分の慢心や油断で結果的に仲間を助けられなかったらって…。だから俺は仲間を助けたいから、いや助けなきゃいけないから俺は再び戦場に立つんです。」
「それは…素敵なことですね。仲間を守るために自ら危険なことに踏み込めるなんて。」
彼は一瞬押し黙ったがすぐに言葉を紡いだ。
「実は僕、最初の頃に軍事課に入れられかけたんです。僕自身はたとえ敵でも機械を壊したくなかったし、間違って人に攻撃したらどうしようってそんなことばかり考えていて。結局才能がなかったので医療課に入れてもらえましたけど、もう銃は持ちたくないです。仲間を守るなんて勇気、僕にはないですし」
「そんなことないですよ。」
再び俺は彼の言葉を遮った。
「あなたは患者さんのことをよく考えているはずです。自分のことよりも長い時間を使っているはずです。それって俺たちが前線で仲間を守る以上大変なことだと思います。」
とここまで言って柄にもないことを話しすぎたとようやく気がついた。
「すいません、医者や看護師の仕事をろくに知らずに大変だとか語ってしまって。」
ジャンルカはそれに対し、笑って返してくれた。
「いえ、むしろ元気が出ましたよ。ありがとうございます。
彼女…シエルの方がよっぽど辛いはずですから。」
「え、シエルのこと知ってるんですか?」
「はい、シエルとは医療課1年目の時に同じ基地で研修していました。彼女はどうやら最初から希望が通って医療課に入ってきたらしいのですがこの間の戦闘訓練———私たちも最低限の戦いはできるようにならないとですからね。その時に銃を扱う才能を見出されて軍事課に異動したんです。後方支援部隊にたった3ヶ月だけ、あとは最前線に送り出されました。彼女自身は戦いたくないって言っていたのに。だからシエルを助けてほしいです。」
ああ、なるほど。だからシエルはワルテ先生と顔見知りだったようだ。合点がいった。
あの時、彼女は戦いたくないのにも関わらず俺を助けるために戦ってくれた。だからこそ今度は俺が彼女を助けなくてはならない。
「シエルは戦いたくない。だけど戦わなくてはいけない。だったら俺が代わりに彼女の分まで戦って助けて、戦争を終わらせてあげないと。それがシエルのためであり、みんなのためになるのだからやりますよ。」
「よかった。シエル、最前線に行ってから一度も会ってなくて。でもマサトのところには来ていたらしいからすれ違っていたのかもしれないですね。」
時間ズラそうか迷ってるんですけど多分このままでいくと思います。
やるとしたら次のシリーズからかな。
質問、意見、文句等あればメッセージでもコメントでもいいのでください。
あとユニーク100人行きました。ありがとうございます。




