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アンチコメント・ラブソング  作者: 瀧ことは
M08 配信者《ウラオモテヤマネコ》は、渋谷スクランブル交差点で

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17/23

M08《1》「今日、キラキラしてない?」

なんと!

Xにて、コミカライズが開始されました!

「アンラブ」で、検索してみてください♪

https://x.com/ant_loves_x

 日曜日のお茶の時間に、渋谷駅前で待ち合わせ。


(いや、変な感じ……)


 佇む寧子は落ち着かず、そう思わずにはいられなかった。

 隣人である、萬里とは、それなりに、仲良くなったつもりでいて、一緒に出かけるくらいは全然構わない。構わないけれど、これは、本当に、デート……?


(てか、絶対なんかの付き添い、だと思ったんだけどなぁ……)


 そもそも、せっかく隣に住んでいるのだ。出かけるなら一緒に家から出ればいいものの、指定されたのはこんな、待ち合わせの定番の時間と場所で。


(まさか、ほんとのほんとに、デート、なの……?)


 寧子にとって、萬里はやっぱり大事ないちリスナーで、それより先にちょっと変わった隣人で。憎からずは思っているけれど。


(うう、本当に正解が、わからない……)


 デートといわれたから、悩んだ結果、デートらしい服を着てきてしまった。いや、普通の、休日に出かける格好だ。どちらかというと元気な方向に寄せたのは、17才と街を歩くことを考えて。


(なんかこういうの、久しぶりだな)


 前の恋人とも、つきあいはじめてからは家でゲームしていることばかりが増えた。

 それはそれで、楽しい思い出でもあったけれど。

 そんなことを考えていたら、声をかけられた。


「すみません、今ひとりですか?」


(おお……)

 寧子は思う。世に言う、ナンパ。でも女がひとりで立ってれば、ただのよくあることで、こんなのはモテのうちにも入らない。ガチ無視定期だ。銭も投げずに返事をしてもらえると思うなよ。

 寧子が俯いたままでスマホから顔をあげないでいると。


「そのひと、ひとりじゃないんで」


 俺の連れです、という言葉が上から振ってきた。

 おやおや、絵に描いたようなロマンティックなシーンじゃない? と顔をあげて、寧子は目を丸くした。


(連れが、いる?)


 視線の先に立っていたのは確かに隣人の萬里だった。

 寧子は今日はキャップをかぶっていなかったが、萬里の方が黒いキャップを目深にかぶっている。耳にはロングのピアス。穴、あいてたんだ、と最初に思った。

 ぱっと見で、安くないとわかる、形のいいジャケットを着ている。それから、ちょっときらめいた顔。なんだ? と寧子は一瞬思った。なんだろう。きらきらしてる。いや、これはときめきのフィルターでは絶対なくて……。

 輪を掛けて寧子を困惑させたのは、その、今日は妙にきらきらした萬里の隣に、目つきが悪く金髪の、長身というよりガタイのいい男が立っていたことだった。

 萬里よりも、なんなら寧子よりもまだ年上に見える。幅の広いヘアバンド。まだ夏ではないのに半袖の腕には立派な筋肉が見えた。


 三白眼気味の目が、ぎろ、と寧子を見た。


(や、やんのか?)


 寧子は心の中だけで、ファイティングポーズをとる。ナンパ目的で声をかけてきた通行人も、萬里ではなくその後ろの男性のガタイにびびって退散してしまったようだ。

 明らかに変わった連れだが、萬里はその連れを寧子に紹介はしてくれなかった。


「じゃあ猶さん、またあとで」


 そうひとこと背後に告げると、金髪ガタイ氏は、無言のままでふらりとひとごみに消えてしまった。


(また、あとで……)


 男連れで現れ、終わったあとに「またあとで」するのはデートじゃあないんじゃないかなぁ~~~と思ったが、まあ、デート。もともと別に、そんなにマジなやつではないですし、寧子は考えることを、やめた。


 待ち合わせは時間通りで、待ったとか待たなかったとかそういう会話はしなかった。

 とりあえず寧子が踏み込む。


「バンリくんさぁ」


 覗き込むみたいにして、言った。「はい」と萬里は立ち尽くしたままに言う。


「今日、キラキラしてない?」

「あ……」


 一歩下がるようにして、萬里が顔を背けた。キャップを深めにかぶる。


「これは、仕事からそのまま来たから……」

「そういうキラキラになる仕事なんだ!?」


 さすがにツッコんでしまう。どういう仕事なんだ、一体。

 17才、もしや、もしや……?

 いや、もしやなんだよ、モデルとか、芸能人か? といぶかしげに顔をしかめていると、うつむいた。


「今日は特別で……。あの、この話続けた方がいい?」


 強く聞いたら、説明をする気はあるらしい。でも、話したくはなさそうだ。「うにゃ」と寧子は首を振る。「したくない話、無理に聞きたいわけじゃないもん」強がりではなく、本心だった。

 仕事の話、萬里がしたいのならば聞きたいけど、無理にとは思わない。


「したくないっていうか……あとで、説明する」


 と萬里は、いよいよおかしな返事をしてから、「時間ないから、行こう、ネネさん」と先に立って歩き出した。


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