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アンチコメント・ラブソング  作者: 瀧ことは
M06 炎上ゲーム配信者、隣人にデリバリーをする

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13/16

M06《1》「お待たせしました~デリバリーお届けですう」

 S2の紹介実況が終わると、寧子のゲーム実況はあまり奮わなかった。

 単純に、出がけの新機種はソフトの弾が少なく、実況しようと思うほどのものに出会えないという環境的な事情だ。

 初夏のウラオモテヤマネコ配信は、すっかり雑談ばかりとなってしまっていた。


「えっ今日からのハピーセット、メリーさんちゃんなわけ!?」


 金曜夜の雑談配信の最中、有名ファーストフード店のコラボおまけが発表された。

 コラボ先は寧子が小さい時から好きな、女児向け人気キャラクターだった。


「しかも、黒メリさんがあるやないかーーー!! わーん!!」


 小さなヤギにも似た羊のぬいぐるみには、レアキャラであり寧子の推しでもある黒メリさんもいた。


 これはやるしかない!

 と寧子が週末昼間からはじめたのは「ハピーセットランダム開封配信」だった。


 デリバリーで調達したハンバーガーセットを4種並べて、いざ、開封。


「うわーーーーー!! ランダム、死すべしっっっっっっっっっっっっ」


 好きなものは、大体出ない。それがランダム。


《乙》《あるある》《わかるよ》《全部食うの?》《さすがに太ネコになるのでは》


「誰か太ネコや。スタッフがおいしくいただきます~~」


《スタッフ?》


 冷めてしまうのでとっとと配信を終わり、スマホを取り出す。素早くメッセージ。


《助けてスタッフ~~!》

《くると思った》


 既読即返信。うん、見てると思ったよ。


《ポテトとハンバーガー食べよう。嫌い?》

《嫌いではないですが、食べようではないのでは?》

《別にお金をとらないよ?》

《払っても全然いいですけど、ベランダでいいですか?》

《いいよん》


「お待たせしました~デリバリーお届けですう」


 明るい休日、爽やかな風に吹かれながら、ベランダに出るとすでに隣人は待ち構えていた。


「どうも……」

「あら。なんか珍しいね。寝起き?」


 手渡しながら、いつもよりももっさりした様子に思わず言ってしまった。珍しく日中の配信だったのは、夜に大量のジャンクを食べるわけにもいかなかっただけだ。


 ふあ、と猫みたいにあくびをしながら、萬里は頭をかく。顔色はいいようで、それはよかった。

 行き倒れの隣人を電車で救出してから、数週間が経っていた。


「ネコさんの通知音で起きた……」

「はからずも寝起き配信をしてしまったってわけね。大丈夫? 食べられる?」

「うん。おなかすいた」


 あ、寝起きでジャンク食べられるタイプだ、と寧子は思って、

「飲み物なにがいい?」

 と聞いた。


「なんでもいい。余ってるのみんなもらってもいいよ。あ、でも炭酸ある?」

「あるある。よかったら飲んで」


 萬里が避難壁の隣に椅子を引き寄せて、そのまま食べ始めたので、あ、そういう感じ? と寧子は自分も台所の踏み台を持ってきて軽く腰をかけた。

 ベランダでの青空ランチは少しピクニックめいて、気持ちがあがる。


「バンリくん、ちゃんと食べてるー?」

「食べてます。今まさに」

「え、これ全部食べるの?」


 渡したのは種類違いとはいえ、ハンバーガーが三つにポテトがひとつだ。


「だってバーガーって、ひとつじゃ足りない」


 若いぜ、男子高校生。

 寧子は素直に感心をしてしまう。

 渡したたべものをもりもりとたくさん食べられるのは、小気味がよかった。


「ねーまた買ったら食べてくれる?」

「まだ買うんですか」

「黒メリさん出てないんだもーん」

「フリマサイトにもう出てますよ」

「ぜったいかわねー」


 出るまでチャレンジしつづけるのだ。

 食べてくれるスタッフがいるなら、課金のしがいもあるというものだ。

なかよし。この章も短めですので早めに2話がきます。

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