第07話 EP02-02 努力? 友情? 勝利?
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。『内地』では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。
訳あって、道場でレサリアに投げられまくって、軋む体を引き摺りながら帰路につく。『一対二の方が楽しそうだから』という意味不明な理由で、である。レサリアって、そういうとこあるよな。
「何なんだ、アイツは!?」
同じくレサリアに投げられまくった鴉羽が、同じく軋む体を引き摺りながら悪態をついた。
鴉羽 梨華は、黒髪のボーイッシュなショートヘアで、意識高そうな、大人びた感じの中二女子である。聖高潔騎士団所属の軍人で、ユーナ王女の件でオレを探るために、わざわざ転入してきたらしい。
「名前は『レサリア レッドローズ』。高名な赤薔薇騎士団の長『ロゼリア レッドローズ』の姪っ子で」
「そんなことは分かっている!」
律儀なオレの返答を、鴉羽が声を荒げて遮った。
余裕綽々だったのにボロ負けしたから御機嫌斜めだなぁ、と思いつつ、オレは律儀に続ける。
「そのロゼリアに、産まれる前から溺愛されて、直々に、寝物語に戦術論を聞かされ、歩く練習と同時に魔物との戦い方を教え込まれた。そういうバケモノだぜ。正規の騎士で戦場に出たことすらある」
「……最強の盾、赤薔薇騎士団長『ロゼリア レッドローズ』。二つ名は、『難攻不落』か」
グゥの音も出ないと悔しげに、鴉羽が呻いた。
「内地で勝つのは諦めた方がいいぜ。外地なら使える魔法次第だろ? 正々堂々と、戦場での活躍を競うのも好い」
オレとしては、これ以上は係わりたくないのだ。魔物を討伐して金を稼ぐために傭兵をしてるのだ。人と競っても何の得もないのだ。
「……よし! 新実!」
鴉羽が決意の呼びかけで、何故かオレの肩を掴む。
「特訓だ! 一緒に特訓するぞ!」
……何故だっ!?
オレは混乱した。
「え!? いや、どうして!?」
「一人より、二人の方が勝てる確率が高い。悔しいが、短期間の準備で、ジブン一人では勝てる見込みは薄い」
鴉羽の真顔の訴えに、もっと混乱した。
「え!? いや、だって、どこで!?」
「軍のトレーニング施設が近くにある。軍人なら誰でも何時でも無料で使える」
「え!? いや、オレ、軍人じゃないし。傭兵だし」
「フレンド登録してやる。それで使える」
鴉羽が問答無用でオレの肩を引く。
……オレは混乱した!
「ワタシも、一緒に付き合うわ」
帰路を同じくする美月が、期待にキラキラと輝く瞳で、鴉羽の手を握った。
鴉羽が見返して、困惑顔をした。
分かった。美月の魂胆が分かってしまった。否、最初から分かっていた。
美月は、『クラスメートの女友達』を諦めていた。
今や最強の騎士団の一つ『ゲシュペンスト』の名に尻込みし、クラスメートは美月を遠巻きにする。割と人見知り軍人の美月から、気後れした民間人に声をかけるのは、ハードルが高すぎる。
唯一の可能性、同等の騎士団『赤薔薇』のレサリアには、ライバル認定されてしまった。
ここで一度、可能性は潰えてしまった。はずだった。
しかし、経緯はどうあれ、再び可能性が芽生えた。
あの『魔城の前庭』で中央を担った聖高潔騎士団所属なら、ゲシュペンストだろうと赤薔薇だろうと特別視はしない。しかもエリート軍人でクラスメートで女子となれば、声をかけるのに何の気兼ねも発生しない。
そう、つまり、美月は、鴉羽となら『クラスメートの女友達』になれる、と結論した。一度は潰えた夢が蘇ったのだ。
「何故だ? ゲシュペンストには関係ないだろう?」
「さっ、三人の方が、勝てる確率が高いと思うの」
美月は割と人見知りだから、気兼ねが無くても緊張してる。緊張のあまり、変な主張を口走ってる。
困惑顔だった鴉羽が、驚いたように目を丸くした。
「………………………………よし! ゲシュペンストも因縁があるようだな! 気に入った、一緒に来い!」
何故か納得した。何故だ!?
◇
軍のトレーニング施設は、よくある二十四時間オープンの会員制トレーニングジムだった。そんなことより帰ってオンゲがしたかった。
トレーニングマシンが並ぶフロアの片隅の、白いマットが敷かれたスペースで組手をする。
軍の施設だけあって、ジャージもシューズもタオルも何もかも提供してくれる。ドリンクや軽食まで無料である。
赤いジャージの鴉羽と美月が、白いマットに素早く小刻みなステップを踏み、互いの服を掴もうと鋭い手捌きを応酬する。二人ともに動きが、目で追うのがやっと、くらいに激しい。
オレは黒いジャージで、二人を横目に見ながら、一人で受け身を練習する。そんなことより帰ってオンゲがしたい。
自信満々だった鴉羽が強いのは、予想できた。騎士の家系でエリート軍人なら、体術の訓練くらいしてるだろう。
美月が強いのは、予想外だった。鴉羽ほどではないが、動けてるし渡り合えてる。
美月は騎士団育ちだから、訓練を受けてても不思議じゃぁない。
でも、美月が騎士団で孫か娘か妹かってくらいに大事にされてて、戦場でもミニスカートで、隠密特化のアーティファクトを装備してるから、戦闘能力は低いと先入観があった。
あー、でも、華奢な美少女が生身で魔物に対抗できるわけないし、美月の使える魔法が探索専門の戦闘不向きだから、『外地』では戦えない、ってのも強ち勘違いではないか?
あくまで『対人では美月も強い』って、とこだな。
かく分析するオレは、『内地』じゃぁ、ごく普通の中二男子、完全なる戦力外だぜ!
「新実! 謎のキメ顔してないで、真面目に受け身の練習をしろ!」
鴉羽から指導が入った。
「了解っす!」
「せめて足手纏いにならない程度には、なってくれよ」
オレは鴉羽対レサリアの流れ弾に当たっただけなのに、酷い言われ様だ。
「しかし新実。戦場での活躍を聞き及んでいたが。そんな様で大丈夫か?」
鴉羽の当然の疑問に、オレはキメ顔で答える。
「大丈夫だ。問題ない」
外地なら、『心剣士』の魔法が使える。
「戦闘向きの『思い』には、多かれ少なかれ、パワーが欲しい、速く動きたい、傷を負いたくない、敵の動きを見極めたい、みたいなものが含まれてる。ソイツを活用して、底辺の地力を人並み以上まで上げられるんだぜ」
「ほぅ。それは、素晴らしいな」
鴉羽が納得顔で感心した。
「新実は、あれだが。フッ!」
鴉羽の力強い投げに、赤ジャージの美月が高く浮いた。ダァンッ、と派手な音で、白マットに叩きつけられた。
「ゲシュペンストの方は、戦力として申し分ない。次の登校日まで、毎日特訓するぞ。力を合わせ、必ずやレッドローズに勝とう」
鴉羽が満足顔で、白マットに仰向く美月に手を差し伸べた。
美月がキラキラと輝く瞳で、鴉羽の手を取る。
「うん。ワタシ、頑張るわ」
オレは、帰ってオンゲがしたかった。
けど、美月が鴉羽と友だちになりたいと努力するなら、協力するのも吝かではない。
心剣士と灰銀の魔女
第07話 EP02-02 努力? 友情? 勝利?/END
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