第06話 EP02-01 夏休みの転入生
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。『内地』では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。
「内地の夏って、どうしてこんなに暑いんだ? 比べて外地は、白いドレスが涼やかで、儚げで清楚でさ~」
オレは夏休みの登校日に、中学校の制服、半袖のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカーで、中学校の教室にいる。
「オレの方は、そんな感じだったぜ。美月の方はどうだった?」
ちょっと自慢話っぽくなってしまったか? 自席に猫背気味に座って、隣の席の美月に話を振った。
美月は、オレのクラスメートの心の友で軍人。内地では普通の中二女子だ。体は華奢で、肩までくらいの長さのピンク髪で、年相応に可愛くも、芯の強そうな凛々しい顔立ちで、声が澄んで高い。
今日は軍服ではなく、中学校の制服、白の半袖ブラウスに黒のプリーツスカートに黒のスニーカーである。
自席に姿勢正しく座る美月が、不満げな、睨むようなジト目でオレを見る。
分かる。羨ましいよなぁ。オレだけユーナ王女様に謁見してしまって、心の底から申し訳ない。
「ワタシの閲覧権限だと、それらしい情報は無かったわ」
美月の素っ気ない返答に、オレは頷く。
美月には、アーティファクトの情報を調べてもらってる。軍人でアーティファクト探索に係わる美月なら、軍の情報を閲覧できる。
もしかしたらアーティファクトと人間の合体の情報が、と思ったけど、そこまで甘くはなさそうだ。それも予想してたけど。
美月が素っ気なく続ける。
「昔から人間はアーティファクトを使っていて、類似した寓話の多さを考慮すると、前例が無かったとは思えないわ。時代時代の権力が秘匿し続けてきた、と考えるのが自然でしょうね」
さすがは優等生の美月だ。
「美月は、引き続きソッチの調査を頼む。コッチはオレが何とかする」
「……分かったわ」
自席に姿勢正しく座る美月が、不満げな、睨むようなジト目で答えた。
◇
「始業ベル鳴ったぞ! 早く着席しろ!」
担任のインテリメガネ、三十四歳独身男性、が、教壇に立つ。いつも、ちょっと高価そうな、ストライプのスーツを着てる。
「朝のホームルームを始める。突然だが、転入生を紹介する」
長身で痩せて目が細くて、生徒を細目で見おろすように見る、数学教師だ。身体的特徴が理由と分かっていても、生徒側はあまり好い気分はしないヤツだ。
「……?」
教室が騒つく。理由は、考えるまでもない。
転入生? 夏休みの登校日に?
「静まれ! 察しろ!」
雑に制止する担任の隣に、黒髪のボーイッシュなショートヘアで、意識高そうな、大人びた感じの少女が立つ。
オレは、どこかで見た気がする?
当然ながら、その少女の服は中学校の制服、白の半袖ブラウスに黒のプリーツスカートに黒のスニーカーである。
少女は無表情で、民間人を見る軍人っぽい目で、やや横柄な口調で口を開く。
「本日より、皆と学び舎を共にする、鴉羽 梨華。聖高潔騎士団所属の軍人だ。短い間だとは思うが、よろしく頼む」
「……っ!」
そのボーイッシュな声! 思い出した! オレが検査入院してた軍病院に、ユーナ王女を拘束しにきた一団の一人だ。お固い印象の軍服じゃなくて、すぐには分からなかった。
「夏休みだからって、羽目を外すな、問題を起こすな! 以上、解散!」
担任は、生徒の相手は極力避けたい、と隠さず顔と態度に出す、大体こんな感じの教師だ。
「起立! 礼!」
生徒たちの礼を待たずに、担任はそそくさと教室を出ていった。
教壇をおりて大股で、転入生の鴉羽が近づく。当然のように、オレの席の前に立ち止まる。
「用件は、分かっているな? 新実 健二『心剣士』」
……だと思った。
◇
オレは、畳敷きの道場の真ん中に立つ。
格闘技系の授業やクラブで使う、学校の設備である。広い畳敷きで、板壁に囲まれ、天井も板張り、瓦屋根を掲げる。古めかしい和風の建物、ってヤツである。
オレの前には、鴉羽が立つ。
……何故だ!?、とは言うまい。オレも鴉羽も中学校の制服のまま、向き合う。
「新実 健二『心剣士』。知っていることを、洗い浚い話してもらうぞ」
鴉羽が無表情に告げた。
「何のことか、分からないなぁ」
オレは、目を泳がせながら白を切った。
板壁に開いた木板の鎧戸からは、クラスメートたちが覗いてくる。何ごとかと、思い思いにザワつく。
夏休みの登校日に現れた謎の転入生女子が、クラスで目立つヤツに絡まれやすい地味男子を呼び出した。いつものことではあるが、好奇心を刺激するだろうことは否定できない。
理由は分かっている。ユーナ王女の所在を、オレから聞き出すつもりである。
鴉羽が無表情で、やや横柄な口調で口を開く。
「あの場は、大人たちが騎士だったから、戦場の恩義に報いるべく見逃した。だが、ジブンは軍人だから、手加減しない」
細く長い腕を解すように振る。細く長い指を解すように、掌を開閉する。
困った。オレは、内地では、ごく普通の中二男子だ。
鴉羽が余裕綽々と、冷たく笑む。
「無駄な抵抗は、やめておけ。騎士の家に産まれ、幼少より軍人としてのエリート教育を受けている」
なるほど。道理で、美月に似た優等生感があると思った。養女の美月と違って、生来となればエリート意識も高そうだ。
「はっきり言って、対人ならば同年代の誰よりも強い自信がある。『内地』でも、『外地』でも、だ」
その一言で、道場が静まり返った。あれだけザワザワしてたのに、シ~ンと無音になった。
理由は分かっている。
鴉羽は、何も知らない転入生は、この学校で言ってはいけないことを言った。知らぬ故に言ってしまったのだ。
オレは斜に構えて、抑えた口調で鴉羽に忠告する。
「……今からでも遅くないぜ。ソイツは、訂正した方がいい」
「何だ? 何か癇に障ったか?」
鴉羽が冷笑うように答えた。
「いや、そうじゃなくて」
野次馬のクラスメートたちも、再びザワつく。オイオイオイ死ぬわアイツ、とか、転入生だから仕方ないよ教えてあげようよ、とかも聞こえてくる。
「おーっほっほっほっ! それは! 聞き捨てなりませんわねぇ!」
野次馬のクラスメートたちの中から、赤い制服の女子が高笑いした。
赤髪ロング縦巻きロールで。小柄で体が上から下まで細くて。自信家で高慢な御嬢様って顔をして。
名を『レサリア レッドローズ』。高名な赤薔薇騎士団の長『ロゼリア レッドローズ』の姪っ子。即ち、騎士の名家の現役超有名騎士の親族にして後継という、正真正銘、ハイパートップクラスのエリート騎士だっ!!!
「ちょっと、新入りぃ! レサリア様を差し置いて最強を名乗るなんて、失礼じゃなぁい?!」
「そうよそうよっ! レサリア レッドローズ様の最強を、今から思い知るといいでしょっ!」
レサリアの取り巻き女子二人が、鎧戸の外から合いの手を入れた。一人は高身長で一人は太め、以外に特徴のない、普通の女子生徒だ。
「このワタクシ、『鉄壁のレサリア』が。鴉羽 梨華さんの練度を。お試しさせていただきましてよ!」
レサリアが、自身の清々しいほどに平らな胸に手を当て、誇らしげに名乗りをあげた。
「何だ? レッドローズのチビが、好い度胸だな。家名で手加減なぞしないが、構わないよな?」
鴉羽が軽々しく、冷笑う口調で受けてたった。
「……遅かったか」
オレは、頭を抱えて天を仰いだ。
「ワタクシは、二人同時でも構いませんことよ?」
レサリアも対抗するように、自信満々で微笑した。
……ん? 二人? 誰?
この後、鴉羽がレサリアにメチャクチャ投げられた。何故かオレまで、メチャクチャ投げられた。
……何故だっ!?
心剣士と灰銀の魔女
第06話 EP02-01 夏休みの転入生/END
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