第15話 EP04-01 最後の勝負
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。内地では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子。外地なら、少女が武器に残した強い記憶で戦う魔法使い『心剣士』だ。
夏休みの終盤に、『ユーナベルム奪還作戦』に参加している。今は、ユーナベルム城塞の城下町だった廃墟で、呆然と佇む。中学校の制服、半袖のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカーでいるけど、夏の午後の日差しが暑い。
「これから、どうするっすか?」
取り敢えず、ユーナベルムの騎士たちに聞いてみる。
……愚問か。
状況を整理しよう。
城下町廃墟の大通りで、魔物の軍勢のボス、四つ角『ヴォモス』の孤立に成功した。人間の軍の最高戦力『伝家の宝剣と合体したユーナ王女』が一騎討、にも持ち込めた。
ユーナ王女がヴォモスを討ち取れば勝ちだったけど、大ダメージを受けたヴォモスが逃げてしまった。ユーナ王女も、理性を失って味方を襲った自身にショックを受けて、行方を晦ませてしまった。
分かる。親しい仲間たちを殺しかけたとか、会わせる顔が無さすぎる。殺されかけたオレたちは全く気にしてないけど、その意見は殺しかけた本人には意味がない。
ユーナベルムの騎士たちは、慌ただしくしている。隊の被害確認、負傷者の治療、装備の補給、進軍ルートの検討、ってところか。
迷いがあるみたいに、動きが重くもある。それも分かる気がする。ユーナ王女を信じていいのか、ユーナ王女が自分たちを信じてくれているのか、自分たちがユーナ王女の信に足るのか、迷う要素は幾らでもある。
「ユーナ王女様を御捜し申しあげる。ユーナベルム騎士の責務として、ヴォモスを討ち取る助けとならねばならぬ」
壮年のユーナベルム騎士が答えた。口調に、珍しく迷いが感じられた。
でも、分かりきった答えそのものだった。
愚問ついでに、もう一つの愚問を重ねよう。
「ユーナ王女様は、一人でもヴォモスを討ち取ろうとすると思うっすか?」
「当然である。皆をこれ以上の危険に晒さぬため、単独でのヴォモス討伐を御決断なさったに相違あるまい。ユーナ王女様は御優しく、責任感が強く、心の強い御方でいらっしゃる」
壮年のユーナベルム騎士が、誇らしい微笑で答えた。
なるほど。笑っちゃうほど、愚問だった。
ユーナ王女もユーナベルムの騎士たちも諦めていないのなら、オレも諦めずに手伝おう。
「ユーナ王女様の行き先に、心当たりがあったりするっすか?」
壮年のユーナベルム騎士が、困り顔で顎を擦る。
「それが、無いのである。ユーナ王女様は、戦術にも城塞の地理にも、縁遠くていらっしゃる。情報無き御身が何処に御向かいあそばし何処にあらせられるのか、見当もつかぬ」
……進軍ルートの検討では無くて、その前段階、ユーナ王女の行く先を予想しようとしてたのか。不信感が迷いに、みたいなデリケートなことじゃなくて、王女捜しがノーヒントで困ってたのか。
オレは、少し考えてから、根拠のない自信のキメ顔で提案する。
「それなら一つ、心当たりがあるっす。ユーナ王女様は、ユーナベルム城塞を陥落させた魔将軍を、王城の城壁で討ち取ったっす」
ユーナ王女の唯一の、戦場での成功体験の場を、指さす。
城塞の中央に、荘厳な石造りのユーナベルム城がある。ユーナベルム城は、高々と堅牢な石積み灰褐色の城壁に囲まれる。
城壁は一面だけ、完全に崩壊して開いて、中のユーナベルム城が見える。ユーナ王女が伝家の宝剣の力で、魔将軍もろともに破壊した跡である。
戦闘の素人のユーナ王女様が、それでも本気で戦いに勝ちたいなら、過去に強敵に勝ったことのある、あの場所を選ぶ。
ユーナベルムの騎士たちが、じっと遠くの城壁を見つめた。足を止め、手を止め、時間が止まったみたいに動きを止めた。
「……全員、すぐに準備を整えよ! ヴォモスを追撃、城壁まで追い込むのである! 『心剣士』殿に最上級の感謝を!」
『感謝を!』
騎士たちが再び動き出した。纏わりつく迷いは、落ちていた。
「いやぁ~。感謝されるほどのもんじゃないっすよ~」
オレは、大仰に感謝されると、やっぱり照れてしまうな。
◇
「後方から見せてもらったが、ユーナベルムの騎士は聞きしに勝る強さだな」
合流した鴉羽がボーイッシュな声で感嘆した。
鴉羽は、聖高潔騎士団所属のお堅い軍人中二女子だ。黒髪のボーイッシュなショートヘアで、お堅い軍服姿で、意識高そうな大人びた感じの少女だ。
割と人見知りの美月が、まだ緊張して、ギクシャクと硬く賛同を頷いた。
美月は、オレのクラスメートの中二女子で軍人だ。ピンク髪のショートヘアで、年相応に可愛くも、芯の強そうな凛々しい顔立ちで、声が澄んで高い。体は軍人にしては華奢で、黒の半袖の軍服に、黒のミニスカートを穿いて、素肌の腕脚が細く伸びる。
「オレは、ユーナ王女様を信じてヴォモスの追い込みに参加するけど。二人はどうする? 危ないから先に帰還してもいいぜ」
オレは、革の武器袋から武器を選びながら聞いた。
鴉羽が興奮気味に答える。
「ここで帰る腰抜けは、聖高潔騎士団にはいない。手柄を立てて、勲章を狙う」
「だったら鴉ぅぅっ!」
「嫌です」
超戦闘狂少女が何か言おうとして、鴉羽が即答で断った。
「まだ何も言って無ぇぇぇっっっ!」
「嫌です」
聖高潔騎士団の先輩後輩だったらしい。仲が良い。
美月が、凛々しい美少女然としてオレを見る。
「ねぇ、健二。魔力の大半を使えば、ユーナ王女の現在地は分かるわ。どうする?」
美月は、超強力魔法品を認識できる魔法使い『アーティファクトシーカー』だ。
オレは、少し考えて、答える。
「もし移動中だと、現在地だけ分かっても意味ないからな。魔力を温存しといた方がいいと思う」
「分かったわ。使いどころは、慎重に見極めてみる」
「任せた」
美月は優等生だ。出たとこ勝負のオレと相性の好い、頼れる相棒だ。
「ところで、粒子化したアーティファクトを押し退けていたみたいに見えたけれど。どんな武器を使ったの?」
美月が、好奇心に揺れる瞳で聞いてきた。優秀な魔法使いだけあって、やはり気になってしまったか。
……よくぞ聞いてくれました!
オレは、キメ顔で答える。
「引き籠もりの友だちに譲ってもらった、対粒子魔法武器! 『拒絶の蝶短剣』だぜ!」
美月が、疑念に満ちたジト目になった。
「引き籠もりの女の娘と仲良いのね? 引き籠もりの女の娘なのに?」
……あれ~? オレ、何かやっちゃいました~?
「オンゲの友だちだぜ。対戦型のFPSで固定チームを組んでて」
オレは少しキョドりながら答えた。
「記憶を見られるかも知れないのに? 引き籠もりの女の娘が?」
「そこは、余計な記憶は見ない約束で頼み込んで。コラボ中のアバターを引く資金がどうしても欲しいからって、激しい葛藤の末に」
「……ふぅん。仲良いのね」
美月は、疑念に満ちたジト目のまま、一応の納得を示した。
これは、あれか? オレばっかり友だちが多くて、羨ましかったのか。分かる。
◇
「貴公らにも御協力願いたい。弓隊を全隊、歩兵もあるだけの弓矢を装備して、ヴォモスを城壁まで追い込む」
壮年のユーナベルム騎士が、総指揮官の青雨騎士団長と交渉してる。
全身金板鎧で顔は見えないけど、騎士団長にしては細い頼りない感じの騎士で、魔物に恐れを成したのか、追撃を渋ってる様子だ。
森の中で魔物に襲撃されて、酷い目に遭ったのだろう。初陣なんて、誰でもそんなもんだ。
青雨騎士団長に付き従う初老の騎士が、名家に長年仕える補佐役って感じかな?、千載一遇の好機ですぞ、と説得を試みてはいる。
そう、千載一遇! ユーナ王女様のためにも、この機は逃せない!
そんなことは、皆、分かりきっている!
「スピード勝負だ! 白兎騎士団が北ルートの先陣を請け負う! 軽装兵中心で機動力には自信がある!」
「ならば、南は空鷹騎士団が! 遠弓兵五百を誇る!」
「心強い! ユーナベルムからサポートの兵を同行させる。作戦の概要は進軍しながら聞いてくれ」
全軍が動き出した。優柔不断なボンボンの決断なんて待ってられない。全員の心を一つにして、最後の勝負が始まった。
心剣士と灰銀の魔女
第15話 EP04-01 最後の勝負/END
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