第14話 EP03-05 正面激突
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
ユーナベルム戦場のラスボス『ヴォモス』戦に臨まれるユーナ王女様の、サポートを仰せつかった精鋭。ユーナベルムの大盾兵二十名、オレ、キョウと連れ二名。計二十四名。
「会敵! 会敵! 戦闘開始せよ!」
高い廃墟から、物見の兵が叫んだ。
荒れ果てた石畳の大通りを、ビルのサイズの四つ角の魔物『ヴォモス』が突進してくる。石畳が踏み割られ、砕け、跳ねあがり、散乱する。
「左の路肩に、三つ角が一体! 他、数体!」
大通りの左の路肩に待機するユーナベルム隊の重装大盾兵が、報告を叫んだ。
「右の路肩にも、三つ角が一体! 他、数体!」
右の路肩の重装大盾兵も、報告を叫んだ。
「左の路肩は、オレが相手するっす!」
オレは、迷わず名乗りをあげた。
オレの名は『新実 健二』。内地では、ごく普通の中二男子。外地なら、少女が武器に残した強い記憶で戦う魔法使い『心剣士』だ。
ヴォモスに並走するのは、筋骨隆々の巨大牛って感じの、三つ角の魔物だ。他には、一つ角が、あっ、ヴォモスに弾き飛ばされて、瓦礫の山に突っ込んで、消えた。
……三つ角だけ相手にすれば、よさそうだ。
「いぃぃやぁっっっほぉぉぅぅぅっ!!! 右はぁ! アタイが貰ったぁぁぁっ!」
超戦闘狂少女が、歓喜を雄叫んだ。名前は、『キョウ』と呼べぇぇぇっっっ!、だそうだ。
キョウは、隊の仲間二人を連れてる。弓や矢筒をたくさん背負った猫背の小男と、両刃の大戦斧を片手で持ち普通より二回り大きい全身金板鎧の巨漢である。
「三ぃつ角はぁっ、アタイが一対一でやるぅぅぅっ!!! どいつも手ぇ出すんじゃ無ぇぞぉぉぉっ!!!」
「ギャハハハハッ! お嬢でも、三つ角と一対一は無理だって!」
小男が、けたたましく笑った。
「我が侭を言うな。センターを譲ってやるだけでも感謝しろ」
巨漢が不機嫌な低音で答えた。
「うるっっせぇぇぇっっっ!」
キョウが聞く耳持たないとばかりに、ガハハと笑った。
あっちは、そこはかとなく不安になるチームだけど、オレの方も他人の心配をしてる余裕は無い。
ヴォモスが、凄い勢いで突進してくる。広い大通りはヴォモスの超巨体に占拠されて、空きが数メートルの左右の路肩しかない。歩道だった場所は瓦礫の山で埋まってるから、ヴォモスに轢かれずに済む空間は、三つ角の進路であり石畳の破片が飛び交う数メートルの路肩しかない。
「大盾で三つ角を止める。『心剣士』殿は我らの後ろに」
ユーナベルム隊の大盾兵九名が、路肩に斜め一列に、大盾の防壁を構え並ぶ。
「お願いするっす」
オレは、大盾兵たちの重厚な鎧の背中に隠れた。
「飛礫の防御は任せろ」
大盾兵の一人が、オレのヴォモス側に大盾を構えた。
「そっちもお願いするっす」
ヴォモスが石畳の破片を撒き散らしながら突進してくる。この場で唯一警戒すべき相手、ユーナ王女しか見てない、とばかりの全力突進である。
ヴォモスが、感覚的には壁が、真横を通過する。飛び散る石片が大盾や鎧に当たって、ガンゴンガンゴンと鈍い音を鳴らす。
正面からは、三つ角が突っ込んでくる。
「衝撃に備えろ!」
大盾兵の一人が叫んだ。ドッゴォンッ!と爆発みたいな大音量が劈いた。重厚な鎧たちが弾き飛ばされて、オレも巻き込まれて石畳を転がった。
◇
「無事か? 『心剣士』殿!」
「お陰様で無時っす!」
オレは石畳を転がりながら、颯爽と立ちあがった。
大盾兵たちも弾き飛ばされて、大通りに倒れている。大盾は、凹んだり折れ曲がったり拉げたりしてる。分厚い金属鎧で全身を覆っているとはいえ、三つ角の突進に身を晒す勇気には感服する。
「あとは任せてくださいっす」
次は、オレの出番だ。三つ角を倒すべく、腰の武器の一本を握った。
ヴォモスは、後方百メートルほどで暴れ始めた。近いけど、こっちは向いてないし問題ない。
三つ角は、大盾の斜陣に軌道を流されて、瓦礫の山に突っ込んでる。ほぼ無傷って感じで瓦礫から頭を抜き、オレたちの方を向く。
猛牛に近い姿だ。頭に三股の牛角、赤黒い短毛に全身を覆われ、上半身はマッチョで腕が太い。ファンタジーのミノタウロスっぽい、って認識が近いか。
「ブルルルッ!」
猛牛三つ角が嘶いた。四足獣の姿勢になって、後足の蹄で石畳を蹴り掻いた。
オレは冷静に、手にした戦鎚を握りなおす。
猛牛三つ角は、腕は筋肉質で太いけど、大胸筋から太腿も太いけど、逆関節の膝から足首までは骨の形が分かるほど細い。狙いどころが分かって、適切な武器があれば、心剣士の敵じゃない。
戦鎚は、前腕ほどの長さの柄に頭部ほどのサイズのヘッドが載る。少女が使ってた武器で、このタイプにしては小型である。木製の柄の途中には、握り割ったみたいな亀裂がある。
問題ない。『心剣士』が武器とするのは、武器そのものではなく、『武器に残った強い思い』だ。
「ブルルルルッ!」
猛牛三つ角が、こっちに牛角を向けて駆け出す。加速は、そこそこ。定速で走り続けるタイプの突進型と見る。
「ブモーーーッ!」
鼻息荒い突進を、ぎりぎりのぎりぎりで、身を翻して避ける。ここまで引きつける必要ある!?、ってくらいにぎりぎりのぎりぎりで、避けたオレも避けられた猛牛三つ角も混乱する。
オレは身を翻した勢いと、戦鎚の重量と、少女の強い思い、殴りつける!、ただ強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、ひたすらに強く!、を載せて、
「どぉぉぉりゃぁぁぁーーーっっっ!」
ハンマーヘッドを猛牛三つ角の細い足首へと叩きつけた!!!
思わず雄叫ぶ。心剣士の魔法を行使すると、その武器の少女の記憶に強く引っ張られる。少女の記憶とオレの現実が混じって、ゴチャゴチャになることもある。
ボキンと鈍い音で、猛牛三つ角の細い足首が砕けた!
オレは、そこから逆回転に、さらに身を翻す。
片足首を砕かれバランスを崩した猛牛三つ角が、倒れ込む。その巨体を、退いて避けるなんて温い攻めはしない! むしろ踏み込む!
戦鎚を放り捨て、腰のモーニングスターを握る! 突進の速度と巨体の重量で倒れてくる猛牛三つ角に肉薄し、ここまで迫る必要ある!?、身を翻した勢いとモーニングスターの重量と少女の強い思い、叩き潰す!、ただ強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、強く!、ひたすらに強く!、を載せて、
「らっっっしゃぁぁぁーーーっっっ!」
棘鉄球を猛牛三つ角の厳つい顔面に打ち込んだ!!!
猛牛三つ角が消えて、三又の角が石畳に落ちた。
「勝ちぃぃぃぃぃっ!」
武器に残る思いに引っ張られて、オレはモーニングスターを高く掲げて恥ずかしい勝ち名乗りをあげた。
◇
恥ずかしさに赤面した顔を、ユーナ王女じゃないけど、両手で覆い隠したいけど、そんな余裕は無い。
優先度第一は、もう一体の三つ角と戦うキョウたちのヘルプだ。超戦闘狂でも、三つ角の相手は無理があるだろう。オレがヘルプに入らないと
「三ぃつ角はぁっ、アタイが一対一でやるぅぅぅっ!!!、って言ったじゃぁぁぁんっっっ!!!!!」
キョウの半泣きの魂の叫びが聞こえた。
「ギャハハハハッ! お嬢でも、三つ角と一対一は無理だって! 危なかったって!」
小男が、けたたましく笑った。
「我が侭を言うな。センターを譲ってやっただけでも感謝しろ」
巨漢が不機嫌な低音で答えた。
……あっちはあっちで倒しちゃったんだ? 『心剣士』のオレと同じ秒殺で?
……優先度第二は、ヴォモスと一騎討をするユーナ王女のヘルプ、の前に、ヴォモスの後方から大通りをやってくる魔物数十体か。
「後続の魔物を抑えるっす! 大盾の皆さんで防壁をお願いするっす!」
「任せろ!」
「三つ角がいたら、アタイが殺るぅぅぅっ!!!」
「いないっす!」
「なんだそりゃぁぁぁっっっ!!!」
ユーナベルム戦場のラスボス『ヴォモス』戦に臨まれるユーナ王女様の、サポートを仰せつかった精鋭、ユーナベルムの大盾兵二十名、オレ、キョウと連れ二名。計二十四名が、大通りの中央に集う。
ヴォモスは、後方百メートルほどで猛り狂う。近いけど、こっちは向いてないし問題ない。
魔物数十体は、二つ角と一つ角だけだ。これも足止めだけなら問題ない。倒してしまっても構わんのだろう?
「ヴォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」
怒り狂ったヴォモスの、怒りの咆哮が重く重く轟いた。大通りも、オレたちも、ビリビリと痺れるように震えた。ヴォモスがビルサイズの超巨体を捻り、石畳をドゴンドゴンと踏み荒らして、激しく暴れ狂った。
直後に、純白のアーマードレスのユーナ王女が、オレたちの前方の石畳に激しく叩きつけられた。叩きつけられて跳ねて転がった。転がって、魔物数十体の中に転がり込んだ。
「ユーナ王女様?!」
何人かが、慌てて叫んだ。駆けつけようと金属靴を踏み出し、しかし慌てて足を止めた。
魔物数十体を覆うように、灰銀色の煙が広がる。魔物数十体が消えて、数十本の角が石畳に落ちる。灰銀色の煙が集まって、灰銀色の長い髪に純白のアーマードレスの美少女『ユーナ王女』に戻る。
ユーナ王女が、極上の美味を、御馳走を、特別な獲物を見る、爛々と輝く瞳で、真っ直ぐに前を見つめる。
ヴォモスだけを見てる。オレたちを見てない、見えてない。ヴォモスしか目に入ってない。
オレは、背筋に最悪の悪寒を感じて、ポケットのバタフライナイフを抜いた。このときのために準備した対粒子魔法武器、引き籠もり少女の強い念の籠もった『拒絶の蝶短剣』だ。
理性の飛んだユーナ王女が、灰銀色の煙になる。灰銀色の煙は、拒絶の魔法の反発力に押しあげられて、オレたちの上を通り過ぎて、ヴォモスに食らいつく。
狼の顎のような、異形。狼の牙のような、魔力の奔流。オレが伝家の宝剣に残った記憶に見た、周囲の全てを無差別に貪る狂気。
「ヴォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」
ヴォモスがビルサイズの超巨体を捩り、苦しみ、激しく暴れた。
純白のアーマードレスのユーナ王女が、瓦礫の山に叩きつけられた。跳ねるように石畳に落ちた。ユーナ王女は、頭を打ったのか、頭を純白の金属籠手で押さえて、頭を左右に振った。
「ヴォォォォォッ!」
ヴォモスが重低音で吼える。超巨体のあちこちを食い千切られ、抉られ、さすがに大ダメージを受けて見える。
オレたちは、ヴォモスもユーナ王女も警戒して、身構える。
ヴォモスが! オレたちともユーナ王女とも逆方向に! 駆け出した!、逃げた!?
どっ、どうする!? オレたちは、どうすれば!?
思わず、ユーナ王女を見た。目が合った。とうとうやっちゃった?!、みたいに蒼褪め、動揺に潤む瞳をしていた。
大丈夫だ、まだ、やってない。『拒絶の蝶短剣』で防御してなかったら、オレ含めて味方二十四名を食い散らかしていたけど。防御したから、問題ない。
ユーナ王女が、灰銀色の煙になった。灰銀色の煙は、風に流されるように、瓦礫の山の向こうに、どこかに、飛んでいった。
……ユーナ王女も逃げた!? どっ、どうする!? どうすれば!?
オレは、どうしていいか、分からなかった。呆然とした。
心剣士と灰銀の魔女
第14話 EP03-05 正面激突/END
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