第10話 EP03-01 ユーナベルム奪還作戦
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
間もなく、ユーナベルム奪還作戦が開始される。
外地の森の中に、『ユーナベルム城塞』はある。一年くらい前に魔物の軍勢の襲撃に陥落し、それでもなお、山と見紛う巨大な城塞が天高く突き出す威容を保つ。
今は『ユーナベルム戦場』と呼ばれる、この地に居座る魔物の軍勢のボスは通称『ヴォモス』。ビルサイズの、鼻のない赤黒剛毛マンモス。額に大きな歪な枯れ木みたいな四股の角がある、四つ角の魔物だ。
ユーナベルム城塞の中央には、荘厳な石造りのユーナベルム城がある。ユーナベルム城は、高々と堅牢な石積み灰褐色の城壁に囲まれる。
ユーナベルム城の周囲は、広く城下町が建ち並ぶ。城下町も、高く堅牢な石積み灰色の壁に囲まれる。
城下町を囲む壁の外は、さらに広い森だ。
森から出た先の平原は、前回の作戦の主戦場となった。今回は、そこでは戦わない。
魔物の軍勢のボス『ヴォモス』は、ユーナベルム城塞の城下町に、魔物の軍を率いて陣取る。
城下町と森を隔てる壁はあちこち崩れて穴だらけだけど、大きめの穴には魔物の部隊が陣取っている。
壁の外側の森にも、魔物の部隊が潜んでいると予想される。
人間の軍勢は、その森の中に布陣する。
兵数は約二万と聞いたけど、森の中では木々に視線を遮られて、どこにどれくらいいるのか分からない。
夏の朝の日差しも木々に遮られ、内地とは比べるべくもなく涼しい。やっぱり重装備の人たちは汗だくで、いつもの戦場と変わらないような、大きな戦場で全体的に緊張が強いような、なんとも落ち着かない感じだ。
オレの名は『新実 健二』。内地では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。外地なら、少女が武器に残した強い記憶で戦う魔法使い『心剣士』である。
今日は外地、この『ユーナベルム戦場』で、この『ユーナベルム奪還作戦』に参加する。
夏休みの終盤に、中学校の制服、半袖のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカーでいる。気分の問題だけど、ユーナ王女様に頂いた髪飾りを、御守として身に着けてる。気分の問題だけど、勝ったも同然って気がしてる。
◇
「おいぃぃぃっ! アイツかあぁぁぁっ!?」
森の中に、気性の荒そうな少女の声が聞こえた。
知らないのに知ってるような声だ。こういう場合は大抵、『心剣士』の魔法絡みだ。
「新実! 今、いいか!?」
ボーイッシュな、これは知ってる声だ。お堅い軍服の鴉羽が声をかけてきた。
鴉羽は、最近仲良くなったボーイッシュ中二女子だ。聖高潔騎士団所属の軍人だ。
「鴉羽さん。聖高潔騎士団は参戦しないんじゃなかったっけ?」
「ジブンは個人で、新兵育成プログラムで見学参加している。ユーナベルムの騎士を見てみたくてな」
「ワっ、ワタシもっ、一緒にっ。さっ、参加育成プログラムでっ、新兵見学してるのっ」
ミニスカート軍服の美月が、キラキラと輝く瞳で、鴉羽の手を握った。割と人見知りで、鴉羽にまだまだ緊張して、変なことを口走っていた。
美月は、相棒でクラスメートで仲の良い中二女子だ。ゲシュペンスト騎士団所属の軍人だ。
「あ、あぁ。そうだな」
鴉羽が困惑顔で同意した。
オレは、美月が鴉羽と友だちになれるように、心の中でエールを送ろう。美月なら出来る! 自信を持て!
美月と鴉羽の横には、体格のいい少女が立っている。男みたいな太さはなく、すらりと細い、撓りの強そうな肢体をしてる。
オレたちよりは少し年上、オレンジ色のボサボサの長い髪をして、歯がギザギザしてて、円形の金属パーツで急所を守る軽装金属鎧を装備する。手には、武器を何本も突っ込んだ革袋を握る。
初対面だけど、見たことある。こういう場合は大抵、『心剣士』の魔法が絡む。嫌な予感がする。
「ほぉぉぉん?」
体格のいい少女が、オレに顔を近づける。その顔を、値踏みするように、ニオイを嗅ぐように、オレの顔、首筋、肩、腕、へと滑らせる。
「オマエェェ。壊れた武器を買い取ってくれる物好きだってぇぇぇ?」
顔を離す。ニコニコ笑顔で、手にした武器袋をオレの前に、ドスンと重そうな音で置く。
「当日になってしまって悪いな、新実。武器の提供者候補の先輩だ」
鴉羽から紹介が入った。
何てこった……。オレは天を仰いだ。
オレの勘違いでなければ、『魔城の前庭』で活躍した、超戦闘狂少女武器だ。『武器に残った記憶』で見た、使い手の超戦闘狂少女だ。
魔物を倒すのに活躍したけど、戦い方が危うく際どすぎた。二度目は遠慮したかったヤツだ。
それにしても、危うい戦い方をする超戦闘狂少女が存命とは、とてもビックリしてる。あの紙一重な戦い方で死なないヤツとかいる? ……目の前にいる。
オレは、覚悟を決めて前を向く。
「生きて帰れたら後払い、ってなるっすけど、いいっすか?」
「いいぜいいぜぇ。どうせ、屑鉄同然の破損品だぁ」
超戦闘狂少女が、大口を開けてガハハと笑った。
取引成立の握手を交わした。握られた手が痛かった。
◇
「では、ジブンは中央の青雨騎士団に戻る。順調に進めば、壁の突破後に合流できるはずだ」
「おう、武器ありがとな。鴉羽さんも気をつけて。見学なら安全だと思うけど」
オレは鴉羽と握手して、見送る。
「鴉ぅぅっ! ウチ来ぉぉぉい! 来て手伝えぇぇっ!」
「見学参加者は青雨の預かりです。それに、先輩の隊と行動を共にするとジブンの評価が下がるので嫌です」
「お堅ぇなぁおいっ! 相変わらずよぉぉぉ!」
二人で楽しげに笑いながら去っていく。
「ワタシも、青雨に戻るわ。また後で」
「美月も気をつけて」
二人を小走りで追う美月を、手を振って見送った。
「間もなく作戦開始の時刻だ! 各隊、最終確認を怠らぬよう!」
伝令の兵士が高らかに告げる。
騎士兵士たちの緊張感が、一気に跳ねあがる。
さて、ここからは、オレも気合を入れよう。
武器袋から何本か武器を出して、腰のベルトに固定した。強敵、力量の不鮮明な友軍、敵地での交戦、リスク高めの武器、と、不安要素の多い作戦になりそうだ。
心剣士と灰銀の魔女
第10話 EP03-01 ユーナベルム奪還作戦/END
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