第09話 EP02-04 心強い仲間
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
レサリアへのリベンジマッチにボロ負けして、オレと美月と鴉羽で、ドーナツ屋で反省会をしてる。
反省会は終わって、鴉羽が『外地』に戻ると分かって、美月が落胆してる、って感じである。
この先は、流れ的には鴉羽のお別れ会か。短い期間だったけど、毎日顔を合わせて、一緒に汗を流して、それなりに仲良くなった。オレも、全く寂しくないこともない。
ユーナ王女の件を見逃してくれるみたいだし、鴉羽もオレと美月に情が湧いてはいるのか?
◇
ってことで、……今なら聞ける! オレは他愛ない世間話の口調で切り出す。
「ところで鴉羽さん。例えば、ユーナ王女が軍に追われないようにするには、どうすればいいと思う?」
「っ?!」
鴉羽が何か言いかけて、口を結んで、思いとどまった。
見逃してやると言った途端に調子に乗りやがって、みたいなことだろうと思う。御尤もだが、こっちは切羽詰まり気味で、少しでも情報が欲しいのだ。
鴉羽は呆れたように頭を振り、結んだ口を開く。
「つまらん例え話だが、簡単だ。戦場で手柄を立てればいい。他の追随を許さないほどの功績を積みあげれば、誰も文句を言わなくなる」
「そんなんで、いいのか? 例えば、大きいリスクがあるんだけど? もとい、あっても?、例えばだけど」
「魔物を討つのに、どれほどの被害が伴うか、知らぬわけでもあるまい? どんなリスクか知らないが、戦場で犠牲以上の功績を出せば、問題ないだろう?」
戦場に立つ騎士兵士的な考え方ではある。
戦場で騎士兵士の死傷者を千人減らせるなら、巻き添えで騎士兵士を五百人死傷させてもプラスになる。
生死を全体で見るなら、当然でもある。生死を個人単位で見る傭兵のオレには難しい理論でもある。
「言っておくが、この件の主導は、聖高潔騎士団の騎士派だ。軍派ではない。安全な後方にいる軍派はリスクの小さいものを好むが、前線で命を懸ける騎士派は功績を貴ぶ」
「それなら、どうにかなりそうだぜ。何たって、英雄のユーナ王女様とユーナベルムの騎士たちがいるからな」
オレは得意げに答えた。王女様のために働くのは、お世辞抜きに誇らしい。国に仕える騎士の気分だ。
鴉羽が、澄まし顔で考える。
「ユーナ王女の立場なら、直近は『ユーナベルム奪還作戦』なのだが。参加する騎士団に潜り込むにも、準備期間が無さすぎるか。他の大規模作戦となると」
「それなら問題ないぜ!」
オレは嬉々として遮った。
鴉羽が、困惑顔でオレを見つめる。
「戦場の管理は、部外者が勝手に潜り込めるほど甘くはないぞ? 騎士団名、人数はもちろん、生死確認のために名簿も作成登録されるぞ?」
「いや、まぁ、オレたちも、戦場で功績を積む、くらいしか思いつかなくてさ。知り合いの小さな隊にお願いしてたんだ。『ユーナベルム奪還作戦』に徴集されるように頑張ってみてほしい、って」
オレはバツの悪さに照れながら答えた。
「確かに、ユーナベルムの奪還に成功すれば」
言いかけて、鴉羽は黙する。考える。
「しかし、そもそも、小さな隊が徴集されるような戦場では。……否、『魔城の前庭』で戦った大騎士団は、どこも参加しないと聞いた。『寄せ集めの烏合』とは、そういう意味だったのか?」
独り言の呟きだ。オレにも聞こえるように、自分の中の情報を整理してるようだ。
◇
戻った美月が、白い丸テーブルに、ストロベリーチョコがけのドーナツの載ったプラ皿を置く。一本足の白い丸イスに座って、溜め息をつく。
鴉羽が美月を見て、真顔で声をかける。
「どうした、ゲシュペンスト? ダイエット中だったか? もっと食べて筋肉を付けた方がいいと思うが?」
毎日顔を合わせて分かったことが、もう一つある。
鴉羽は、デリカシーが無い。そういうところも、オレは嫌いじゃない。
鴉羽がオレに視線を戻す。
「確かに、ユーナベルムの奪還に成功すれば、全ては不問で済むかも知れない。ユーナベルムの陥落は変わらぬ事実だ。一年間の職務放棄よりも、一年後の奪還の功績の方が遥かに大きな意味を持つ」
「よし! それなら、どうにかなるぜ!」
オレは嬉々とする。ってことで、……今なら頼める!
「それで、そのために、なんだけど。『少女の強い思いが残る武器』の調達を、お願いできないか?」
鴉羽が唖然とした。
見逃してやると言った途端に調子に乗りやがって、ですよね分かります。でもオレたちは切羽詰まり気味なんだってば。
鴉羽が、言うだけ無駄と諦めたように、呆れ顔で首を振る。
「……そうか、そうか、『心剣士』だったな。だが、ゲシュペンストに頼めば、いいだろう?」
「共謀を疑われると、迷惑がかかるだろ?」
「……確かに、関係性から、厳しくチェックはされているか。ジブンなら、調査する側の立場で、フリーパスで動き易いか」
鴉羽は、黙して考える。
「……むぅ、しかし、そんな特殊な条件を、急に言われてもだな」
言いかけて、思いついたと目を見開く。
「あぁ、心当たりが、一人いる。聖高潔騎士団の先輩だったが、命令無視が多くて、農村の出張警備隊に左遷されたはずだ。外地に戻ったら、連絡を取ってみよう」
「応! 頼む! 色々と、悪いな」
オレは、心から感謝した。『心剣士』ってのは、人の力を借りて強くなるのだ。借りられれば借りられるほど、どこまでも強くなれるのだ。
「ふっ。本当に、色々と面倒なヤツだな」
鴉羽が、悪い気はしていない顔で、ボーイッシュに微笑した。
◇
ホワイトチョコがけのドーナツを食べ終えて、鴉羽が美月を見る。
「さて、これでキミたちとも、お別れとなるのだが」
美月が、うるうると瞳を潤ませる。泣きたい気持ちも分かる。
レサリアにはライバル認定されるし、せっかく仲良くなった鴉羽はすぐに転校していってしまうし、美月には運の悪いことだ。
「新実も、ゲシュペンストも、訓練を弛まず続けておけ。ジブンも、もっと強くなっておく。いつか必ず、レッドローズに、三人で力を合わせて勝つぞ」
鴉羽が、美月に手を差し伸べた。
「っ!? うっ、うん!!!」
美月がパァァッと表情を明るくして、キラキラと輝く瞳で、鴉羽の手を握った。
「え?」
あ、いや、オレは、勝ち負けとか、どうでもいいんだけど。
「っ!」
美月がオレをジト目で睨む。早く握って!、みたいな圧を感じる。
……仕方ないなぁ。オレはどうでもいいけど、美月のためなら吝かではない。
「応! いつか必ず、勝とうぜ!」
オレも、鴉羽の手を握った。三人で手を握り合って、いつかの再会を誓った。
美月は運が悪い、は訂正しておこう。
美月は、今ここに一人の親友を得た。『クラスメートの女友達』なんて軽いもんじゃない。遠く離れても、いつまでも、互いを思い続ける、掛け替えのない戦友を得たのだ。
心剣士と灰銀の魔女
第09話 EP02-04 心強い仲間/END
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