腕時計
身近にある一般的な時計は、駆動方式によって機械式とクオーツ式に分けられる。
日常で目にする大抵の時計はクオーツ式で、電圧によって振動する水晶の性質を利用している。
電池交換が必要だったり、ソーラー発電で動いているものはこれに当たる。
機械式時計の場合、動力源は電気ではなく、巻き上げられたゼンマイが解ける時のエネルギーだ。
名前の通り、歯車をはじめとした多くの部品を組み上げた機械仕掛けで動いているという特徴がある。
中でもムーブメントと呼ばれるその心臓部分は、それこそ鼓動のように絶えず動いていて、透明な裏蓋で可視化した腕時計では、デザインの一部として見せていることも多い。
テンプとアンクル、ガンギ車が連動して動いている様子は、時間を忘れて眺めていられる。
機構が狂いなく動くには、小さな精密部品を正確かつ丁寧に組み立てなければならないと分かるからこそ、ただ見ているだけで楽しめるのだと思う。
機械式時計の区別を知ったのは、誕生日プレゼントに腕時計を探していた時のこと。
その当時は時計に種類があることすら知らなかった。
私が着けているのも、電池交換が要らないし便利そうだという理由で選んだソーラー式の電波時計。
好みのデザインを探したくらいで、何かこだわりがあったわけではない。
それがクオーツ式の時計に分類されることは後に知った。
以前、自分の手で組み立てられる機械式腕時計のキットを購入したことがある。
部品と必要な用具の一式がセットになっていて、初心者でも組み立てやすく工夫されたものだ。
ちょっと触ってみたいという好奇心だけで、ほとんど時計の知識もないまま始めた私でも完成させることができた。
基本的には、一つ一つのパーツの名前を確認しながら、それを指定された順に配置していく作業だ。
細かい作業が好きな人ならより楽しめるだろう。
私自身も、完成したことよりも組み立てている時の方が楽しかった記憶がある。
特に心臓部分のパーツは個性的な形と名前で、手順を確認しながらパーツが収められている箱を眺める時間さえも心が浮き立った。
本来なら作業をするのは集中力が保てる短い時間にして、毎日少しずつ進めていくのが良いらしいのだけれど、あまりにも楽しくて数日で完成してしまった。
今にして思えば、もう少し時間を掛けてゆっくりと楽しめば良かったというのが唯一の心残りだ。
もちろん機械式時計の方が好きとか、どちらの方が良いというのではない。
機械式時計を眺めるのも好きだけれど、実際に使っている物で言えばクオーツ時計の方が多いくらいだ。
壁掛け時計もそうだし、腕時計に関しては電池切れも時間のずれもなく、気が付けば購入してから十年以上が経つ愛用品と言える。
永く使えるという点においては、機械式時計も世代を超えて受け継ぐことが可能だ。
適切にメンテナンスし、摩耗した部品の交換をしていけば使い続けることが出来る。
誕生日プレゼントとして探していた機械式腕時計は両親に渡した物だから、いずれ二人が手放す時には私が譲り受けたいと思っている。
私より先の世代で腕時計の行き先がどうなるかは分からない。
すでに腕時計は嗜好品の一部で、この先さらに時刻を知るための実用品として必要とする人が減っている可能性が高い。
ただ、縁あって私の元にやってきたそれぞれの時計を、今は出来る限り大切に使い続けたいと思う。




