ツバメ
朝、目が覚めて一番初めにすることは、空気の入れ替えのために寝室の窓を開けること。
大雨や強風でない限り、春夏秋冬毎日の日課になっている。
窓を開ける時に必ず目に入るのが、家の裏手に広がる水田。
稲が育って伸びてきた時期の水田には、朝から多くのトンボが飛んでいる。
トンボの種類はあまり詳しく知らないけれど、シオカラトンボやアキアカネのような身近なトンボが季節ごとに現れる。
多くのトンボが同じ場所で一斉に飛んでいる光景は、季節が移り変わっているのを感じさせる。
目に付くのはトンボくらいだけれど、きっと遠目には見えない大きさの様々な虫たちが飛び交っているのだろう。
日中になると、その虫たちを捕食するツバメが姿を見せるようになる。
どこをねぐらにしているのかは分からないが、巣から姿を消したツバメたちは群れで飛んでいたり、数羽でまとまって電線に止まっていたりする。
そうした渡る前の時期に群れになったツバメが田んぼの上を飛び交う様子は、アクロバットショーを見ているようで楽しい。
左右に急旋回したり、上昇下降も一瞬で切り替わる。
翼を広げて滑るように飛んでいたり、逆に翼をスッと閉じて弾丸のように飛んだり。
観察していると、その動きが素早くダイナミックであることが良く分かる。
以前、何度か家の中にツバメが迷い込んで来たことがある。
ちょうど開いていた窓から入って来てしまうようで、気が付いた時にはリビングの天井近くを飛び回っていたりする。
窓を開けておけば勝手に出ていくものなのだが、一度そうでない時があった。
我が家のリビングには、高い位置に明かり取りのための羽目殺しの窓がある。
外の景色が見えるからと言って、他の窓のようにそこから出入りすることは出来ない。
その近くから離れず、一向に外に出られそうにない様子を見かねて、その時は捕獲して外に逃がすことにした。
捕獲したときに間近で見たツバメの羽根の色彩が、とても美しかったことを良く覚えている。
喉元が赤く、おなかが白、頭から尾羽にかけての背中側は青味がかった黒、という全体の色味は、写真や映像で見る機会も多いから知っている。
それでも実際に見ることで初めて知り得ることはあるもので、頭から顔周りにかけての青色が光沢をもって輝いていたことはとても印象的だった。
燕尾と呼ばれるツバメ特有の尾羽も、全体的にスマートな体も、遠くに見ていたよりもずっと美しい造形だ。
この小さな体で遠く離れた場所まで毎年行き来していることを考えると、どこにそんなエネルギーを蓄えているのだろうかと不思議になる。
水田で頻繁に飛び交う姿を見るに、ここで体力を養っていることは間違いないのだろう。
トンボやツバメを当たり前のように傍で見られるのは、毎年同じ時期に耕され、水が引かれ、稲が育ち、虫が育つ水田があるからだ。
主食としての米も、環境としての水田も、そのどちらも大切にすることは、生態系をも守る事に繋がるだろう。
農業が自然の中の営みの一つとして、これからも続いていくことを願う。




